---秋風や行きし事なき隣谷---
幾分涼しくなった秋風の中、今日の昼餉は野辺でとろう。
近くの森や少し山に入った沢沿いなど、何箇所か隠者の秘密の庭がある。
文庫本と、パイプ椅子ではなく木椅子を持ち出すのが隠者の美学だ。
(お隣の永福寺跡の秋草)
と言っても目的地は近所に2〜300m行くだけだ。
やがて小径は以前にも話した仄暗い森にかかる。
古来から別天地への通過儀式には、魔の森や洞窟あるいは産道等の暗く困難な場所がなくてはならない。
ほんの数分で抜ける森だが、冒険気分を盛り上げるには欠かせない。
あるフォトグラファーが「色々な物を見るより、一つの物をどう見るかだ」と言っていた記憶がある。
上の写真の実景はどこにでもあるような平凡な場所だが、「仄暗い森」と言うイメージさえ見えているならこの写真にPCでもう少し青味を加えて幻想的にする事も、または明るい暖色系に仕上げる事も出来る。
そういった現実から幻視へ至るイメージ作りも、例の止観(観るのを止めて想え)の一技となる。
上級者なら空間色や木々のディティールまで、確固たるイメージで具現出来るだろう。
この森を抜けてちょっと登ると我が楽園に辿り着く。
秋の柔らかな陽射しが降り注ぐ高台は、持って来た木椅子の読書にうってつけだ。
隠者の清貧な食事の内容は省くが、樹下草上での昼餉に食後のお茶を飲みながらの読書は、旅の吟遊詩人にでもなったようで楽しい。
このミューズの園のような別世界に合う本は、中世騎士物語のパーシヴァルを選んだ。
BGMはネッラファンタジアで始まるサラ ブライトマンのプレイリストだ。
誰もいないのでイヤホンではなく、ミューズ達にも聴かせるべくiPadのスピーカーから出力。
サラの歌声と虫の音に、ついうとうとして来る。
こうして昼休みの小一時間、秋風に吹かれつつ安寧に浸ってきた。
夢うつつの中でも詩魂を忘れないのが隠者だが、楽園での惰眠は最優先事項なので歌詠みは夕方の買物がてらになってしまった。
---省みよ過ぎ来し路は鳴く虫の 声に埋まりて不帰(かへらじ)の闇---
©︎甲士三郎
幾分涼しくなった秋風の中、今日の昼餉は野辺でとろう。
近くの森や少し山に入った沢沿いなど、何箇所か隠者の秘密の庭がある。
文庫本と、パイプ椅子ではなく木椅子を持ち出すのが隠者の美学だ。
(お隣の永福寺跡の秋草)
と言っても目的地は近所に2〜300m行くだけだ。
やがて小径は以前にも話した仄暗い森にかかる。
古来から別天地への通過儀式には、魔の森や洞窟あるいは産道等の暗く困難な場所がなくてはならない。
ほんの数分で抜ける森だが、冒険気分を盛り上げるには欠かせない。
あるフォトグラファーが「色々な物を見るより、一つの物をどう見るかだ」と言っていた記憶がある。
上の写真の実景はどこにでもあるような平凡な場所だが、「仄暗い森」と言うイメージさえ見えているならこの写真にPCでもう少し青味を加えて幻想的にする事も、または明るい暖色系に仕上げる事も出来る。
そういった現実から幻視へ至るイメージ作りも、例の止観(観るのを止めて想え)の一技となる。
上級者なら空間色や木々のディティールまで、確固たるイメージで具現出来るだろう。
この森を抜けてちょっと登ると我が楽園に辿り着く。
秋の柔らかな陽射しが降り注ぐ高台は、持って来た木椅子の読書にうってつけだ。
隠者の清貧な食事の内容は省くが、樹下草上での昼餉に食後のお茶を飲みながらの読書は、旅の吟遊詩人にでもなったようで楽しい。
このミューズの園のような別世界に合う本は、中世騎士物語のパーシヴァルを選んだ。
BGMはネッラファンタジアで始まるサラ ブライトマンのプレイリストだ。
誰もいないのでイヤホンではなく、ミューズ達にも聴かせるべくiPadのスピーカーから出力。
サラの歌声と虫の音に、ついうとうとして来る。
こうして昼休みの小一時間、秋風に吹かれつつ安寧に浸ってきた。
夢うつつの中でも詩魂を忘れないのが隠者だが、楽園での惰眠は最優先事項なので歌詠みは夕方の買物がてらになってしまった。
---省みよ過ぎ来し路は鳴く虫の 声に埋まりて不帰(かへらじ)の闇---
©︎甲士三郎