先週からの寒波で咲きかけた梅も遅々として開かず、鶯の初音もまだ聴けない。
昔は鳥達の囀りを聴きながら鶯餅を楽しむのが早春の楽しみだったが血糖値の呪いで菓子類は諦めざるを得ず、家人のために買った来た季節の和菓子などは眼で鑑賞するだけとなっていた。
だがこの疫病禍の家籠りでも出来る些細な楽しみを再考した結果、私でも煎餅なら食べられる事に今更ながら気が付いた。
ただし間食禁止なので食後に限られる。
(古織部急須と湯呑 美濃小皿 江戸後期〜明治)
こんな小さめの煎餅なら1日の食事の総カロリーの中で調整も楽に出来る。
地元鎌倉の人気店からコンビニの物まで色々試してみよう。
まだ鳥達の囀りも聴こえぬ静かな窓辺で、煎餅をぽりぽりやりながら鶯を待つのも良いだろう。
ーーー初音待つ煎餅齧る音立てつーーー
一方で家人向けはこれ。
(古織部菓子鉢 江戸時代 益子焼カップ&ソーサー 昭和前期)
昔ながらのありふれた饅頭も、面白い箕形の菓子器にもうすぐ開く桃の小枝を添えれば十分楽しい。
和菓子好きならこれから先3月にかけて、雛あられ、鶯餅、桜餅、蓬餅にお彼岸のおはぎと春の菓子祭りが続くので羨ましい限りだ。
昔の私は格別甘い物好きでもなかったが、いざ食べられなくなってみると特に季節の伝統和菓子はもっと真剣に味わっておくべきだったと後悔している。
ついでに気が付いたのは蛋白質ならさらに安心して食べられる事、つまり酒の肴の様な(私は酒類も厳禁)スナック類だ。
幾つか試してみると茶菓としてビーフジャーキーと抹茶は案外合う。
他にもコーヒーにチーズとかゼロコーラに燻製とか色々な組合せで楽しめそうで、我が食生活もこれまでより少し豊かになる気がする。
今週の文机の飾りは虚子の短冊。
「東より春は来ると植ゑし梅」高浜虚子
春の女神の佐保姫は都の東の地にいて東風を吹かせる。
また陰陽道では東方が青春、四神は青龍で、仏教では未来仏弥勒の浄土。
その知識があれば句意もわかり易く、当時の虚子庵での四季の暮しが眼に浮かぶような句だ。
そんな庵なら疫病禍の引き篭もり暮しもさぞ清澄な心境で過ごせるだろう。
©️甲士三郎