3週間前まで夏日が続いたかと思えば今週の雨の日は12月の気温で、秋らしい日々はもう来ないのだろうか。
節季は霜降となり北国では枯景色も当然だが、鎌倉では異常に早い秋の終りだ。
1日だけ秋麗と言える日があって、散歩のお供に愛用のオールドレンズを持ち出した。
ーーー丈高く枯れ残光に抱かれをりーーー
(使用レンズ ライツヘクトール7.3cm f2.2 ドイツ 1931年製)
近所の空地の枯草でさえも、晩秋の陽が差せば荘厳な自然美を見せる。
やや緑を残しながら、雨続きの冷込みで草草は早くも枯色となった。
秋の斜光は地の物全てをドラマチックに輝かせて、普段は平凡な景でも良い写真が撮れるものだ。
隠者の100年近く前のライカレンズは、不思議とそんな色彩を捉えるのが得意だ。
一方で都会的現代的な光景には、鮮鋭度が低いため不適かも知れない。
鎌倉の山野が紅葉し草が枯色となるのは通常は11月下旬なのに、今年は紅葉する前に落葉している。
(使用レンズ 同上)
我家の裏塀の蔦紅葉も2〜3日見ない内に半分以上が雨に散り、今日は残る葉よりもその光と影の綾が深秋の想いを強める。
通年ならもっと赤くなってから散るので油断していた。
ここでもオールドレンズの柔らかな描写は秋麗の光に適っていよう。
物質の精密描写は苦手な代わりに夢幻の光陰を写せるレンズは、止観(観るな!感じろ!)の名玉とでも言うべきか。
厨では冬用に作っておいたドライフラワーの出番が来た。
(使用レンズ ニッケルヘクトール5cm f2.2 ドイツ 1930年前後)
初冬の陽差しの中でスープを煮込むような時間には、ドライフラワーとカザルスのチェロ曲が似合う。
11月はそんな日が増えそうなので、厨仕事のBGM用に新たな楽曲も仕入れておきたい。
天候時候に文句を言っても仕方ないので、秋を諦め冬の気分に切り替えて暮しを楽しむとしよう。
立冬にはまだ少し間があるが、明日からは冬物衣料に暖房器具も取り出して冬支度だ。
ーーー鳩が目を瞑れば街に冬が来るーーー
©️甲士三郎