「現代語版 論語と算盤《そろばん》」
(audiobook 渋沢栄一 守屋 淳訳 筑摩新書 7時間8分)
26日NHK大河ドラマ「青天を衝け」が最終回を迎えました。
【武蔵国血洗島村(現在の埼玉県深谷市)で養蚕と藍玉作りを営む農家の長男として生まれた栄一。人一倍おしゃべりの剛情っぱりで、いつも大人を困らせていた】(NHK HPより)
恥ずかしながら、渋沢栄一という人物については、明治維新時の実業家、次の一万円札の肖像画、という漠然としたイメージ以外あまり知りませんでした。
ドラマを見て audiobook「論語と算盤」を購入しました。
この「論語と算盤」は栄一が著述したものではなく、栄一の講演の口述90項目をまとめたものです。
【目 次】
はじめに
第一章 処世と信条
第二章 立志と学問
第三章 常識と習慣
第四章 仁義と富貴
第五章 理想と迷信
第六章 人格と修養
第七章 算盤と権利
第八章 実業と士道
第九章 教育と情宣
第十章 成敗と運命
十の格言
渋沢栄一小伝
目次を見ると難しい話と思われそうですが、そうではなく分かりやすい話です。
「論語と算盤」、およそ似つかわしくないこの二つの語を結び付けた栄一の生涯。ドラマの中では論語という言葉はあまり出てこなかったと思いますが、この書を聞いて栄一が深く論語、儒教に帰依していたかがよく分かります。「およそ社会で活動しようとするものは論語を熟読すべき」とまで言っています。
また栄一はキリスト教、仏教、儒教の比較を行っています。キリスト教、仏教は宗教としてそれぞれよいところがあるが、儒教には迷信や奇跡がないことを栄一は揚げています。手段としての論語はその達悦した内容から中国、ベトナム、韓国、日本に広く浸透した。栄一はこの論語を実業界に取り込もうとしました。官から民、実業界へ身を転じるとき、栄一は論語を学び直します。そしてすべての事業は論語を教科書としたと言い、論語は商売のバイブルとも述べています。
なお、この「論語と算盤」という言葉は後世の著述家のことばではなく、栄一自身が講演会の中で話した言葉です。
ところで、テレビ「青天を衝け」では毎回北大路欣也さん演じる徳川家康が出演しています。栄一が仕えたのは徳川幕府最後の将軍徳川慶喜です。なぜ徳川家康が毎回でてくるのかふしぎに思っていましたが「論語と算盤」を聞いて分かりました。
栄一は家康を最高の武将、政策家であると讃えています。人の使い方、配置など戦国武将の中でずば抜けていた、また家康が論語を熟知していた、有名な家康遺訓についても論語の影響が窺えると解説しています。
栄一はその事業を行う上で、論語とともに家康についても教科書としたようです。
「論語と算盤」は複数の書籍として出版されています。