“パク・ヒョシン、実に驚くべきだ”・・・ミュージカル『ファントム』
原作のオーラを消すことは簡単ではない。それが‘世界何大000’というタイトルを掲げていたらなおさらだ。
ミュージカル『ファントム』は韓国初演発表から世間の注目を受けた。
その理由には華麗なキャスティング、雄壮な舞台、流麗な音楽などがあったが、核心には古典に近いミュージカル『オペラ座の怪人』があった。
ミュージカル『オペラ座の怪人』はガストン・ルルーの原作小説を舞台化した作品だ。
その名も有名な‘アンドリュー・ロイド・ウェバー’が作曲した古典の名作だ。
ミュージカル『ファントム』は開幕前からミュージカル『オペラ座の怪人』と必然的な比較に遭わなければならなかった。
これはミュージカル『オペラ座の怪人』より1年前に製作を発表したが、
事実上 数年遅れて開幕せねばならなかったミュージカル『ファントム』の どうすることもできない宿命だった。
ミュージカル『ファントム』は確実に原作のオーラを抜け出すのに成功した。
ミュージカル『オペラ座の怪人』が原作を誠実に映し出したとすれば、『ファントム』は原作を型に沿って自分だけの物語を作るのに集中したためだ。
そしてその核心には‘プリクォル’があった。
プリクォルは原作の中の話以前に起きたことを表すことをいう。
ミュージカル『ウィキッド』は『オズの魔法使い』の隠された物語を風刺的に聞かせてくれ 作品に哲学的な力を加えた。
ハリウッドでは熱風と呼ばれるほど数多くの映画が‘プリクォル’を先を争って出した。
プリクォルは人気原作の隠された物語を見ることができるということだけでも観客の積極的な動機を得るのに高い成功率を誇る。
ミュージカル『ファントム』もやはり同じだ。ミュージカル『オペラ座の怪人』が‘クリリスティーン’と‘ラウル’、
‘ファントム’の立場を平等に扱っているなら、ミュージカル『ファントム』は絶対的にファントムによる物語だ。
ファントムの悲劇と傷は序文の中に具体的に羅列される。
原作の中の人物をすでに知っている観客は その上に比較してミュージカルの中の人物をいっそう具体的に受け入れる。
つまり、原作『オペラ座の怪人』に‘ファントム’の隠された物語がオーバーラップされてキャラクターと感情の度合いが豊かな森を作りあげることになるのだ。
ミュージカル『ファントム』は物語の構造がさほどしっかりしていない。
劇の中盤になると 序文は我々が予想している範囲を超えておらず、隠されている秘密も衝撃的ではない。
しかし、なじみのある物語構成が与える胸騒ぎと底力は観客をドラマに駆り立てるのに むしろより大きな力を発揮する。
作品のさまざまな場面の中、断然注目すべきことは‘ファントム’の過去が重ね重ね現れるベラドバとカリエルの‘バレエシーン’だ。
振付師ジェイミー・マクダニエルは伝統バレエの技法を使用しつつも ドラマのリズムを獲得するのに成功した。
何より国内有数の専門舞踏家らが繰り広げるトップの演技力が目を贅沢にする。反面、作品全般にとけ込んでいるアンサンブルのバレエ場面は
和が合っておらず残念さが残る。
舞台は映像と共に呼吸するように動く。特に、ファントムがクリスティーンを船に乗せたまま地下の湖を横切る場面は
繊細な映像と舞台セットが一緒になって あたかも3D映像を見るような錯覚を呼び起こす。
流動性が最大化された舞台は時空間を超えて現実を観客の前に持ってくる。
舞台転換は一瞬だ。セットは観客の目の前で場面を変えるが、観客がたやすく気づくのが難しいほど柔軟だ。
音楽はクラシックなオペレッタの音律でなびく。特に、今回の公演は作曲家モーリー・イェストンが4つの新曲を追加し
よりいっそう豊かな質量の舞台として表したのが特徴だ。
音楽は主に物語のイメージを刻みつけるような曲が多い。
クリスティーンの実力が輝きを放つようになる“ビストロ”は陽気でロマンチックなパリ社交界のイメージを、
“お前は私の息子”はついに秘密の鎖を解いた父子の涙を描くようにさせる。
ずっと口ずさむようになる中毒性よりは‘その音楽が流れる場面を もう一度見たくて’という方式だ。
パク・ヒョシンの‘ファントム’は実に驚くべきだ。ミュージカル『エリザベート』でミュージカル界にデビューして3年、
彼は屈曲したファントムの感情の度合いを声で描き出し 物語の深みを作りあげた。
特に、激しい動きの中でも絶対揺るがない声量と呼吸は また別の呼吸器官があるのではないかと疑念がわくほどだ。
ソプラノ キム・スニョンの演技変身も驚くべきだ。
豊かで力のある声を持つ彼女は 時には純粋な淑女に、カリスマを持つプリマドンナとして、あたたかな音色の母として物語を包んだ。
またカリエル役のパク・チョルホは重みのある低音と切ない感性で胸を打つ父性愛を演じた。
ミュージカル『ファントム』は7月26日まで 忠武アートホール大劇場の舞台に上がる。