[帰ってきたファントム②]パク・ヒョシン、ファントムそのもの
パク・ヒョシンはファントムそのものだった。醜い顔を隠すための仮面を付けたまま自分の立場を悲観し、また美しさに対する渇望でクリスティーンに執着して嗚咽もした。
誰にも顔を見せずに生涯を独りで闇の中で生きているその男、ファントムをパク・ヒョシンは存分に表現した。
昨年に続いて再び仮面を付け、いっそう豊かになった声量と感性で帰ってきた。
先月26日 ソウル ブルースクエア・サムソン電子ホールで開幕したミュージカル『ファントム』は 顔を仮面で隠してオペラ劇場の地下に隠れ住む
悲しい運命を持つファントムと オペラ劇場の歌姫に浮上したクリスティーンの物語を解き明かす。
パク・ヒョシンが演じる役は主人公エリック。彼はオペラ座の怪人もしくはファントムと呼ばれ、皆の恐怖の対象だ。
ひどい顔を持った自分の人生を悲観するキャラクターで、終始 劇の緊張感を引っぱっていく。
光の入らない場所で歌を歌い、また美しさを追って生きるファントムの痛みを パク・ヒョシンは過不足なく良く表現した。
おかげで観客はファントムにすぐに共感し、作品にはまるのもあっという間だ。
強烈で強いが、かといって過度に緊張だけを強要することはない。パク・ヒョシンはクリスティーンに出会って再び活気を取り戻し
愛に落ちたファントムの純粋さとあどけなさも十分に溶けこませて笑いも誘う。観客もやはり緊張がほぐれる瞬間だ。
仮面を付けたファントムはクリスティーンがいる場所ならどこでも 彼女の側で隠れ見るが、観客の視線が多少届きにくい上の方に座ってもパク・ヒョシンの演技は続いた。
クリスティーンの歌を聴いてとりこになった伯爵に嫉妬を感じて手で胸を叩いたり、怒りを爆発させるように掌をあちこちに動かす姿は
ディテールを失わないパク・ヒョシンの繊細さが感じられる。同時に彼の茶目っ気もそのまま現れた。
舞台に上がったパク・ヒョシンには‘ミュージカル俳優’という修飾語が最もふさわしかった。途切れることなく長い呼吸を吐き出して会場全体に響く低音に
中がぽっかり空くほど力強い発声まで。何ひとつケチをつけるところがない、パク・ヒョシンは完璧なミュージカル俳優であり またファントムそのものだった。