ミュージカル『笑う男』評壇の厳しい声にも笑いを浮かべる理由
制作期間5年・投資額175億ウォンの‘大型創作ミュージカル’
・・・ストーリー、ナンバーの‘物足りなさ’にも 華麗な舞台・成長の可能性に‘合格点’
期待が大きければ失望も大きい方だがミュージカル『笑う男』は違った。5年の制作期間、175億ウォンというブロックバスター級の制作費、トップクラスのスタッフが参加した
大型創作ミュージカルがベールを脱ぐや 散漫なストーリーと挿入曲(ナンバー)に対する批判の声が先に上がってきた。だがこれまで創作ミュージカルで見ることのできなかった
最先端の舞台技術、冒険的な試みが観客に抱かせた‘もう一つの期待’は序盤に出てきた失望の声を覆い隠すに十分だった。
『マタハリ』(2016)に続くEMKミュージカルカンパニーの2番目の創作ミュージカル『笑う男』は フランスの大文豪ビクトル・ユゴーの同名小説を原作とした。
作品の背景は身分差別がひどかった17世紀イギリス。子供たちを拉致して奇形な怪物のようにし 貴族の娯楽として売っていた犯罪組織‘コンプラチコス’によって 奇異に裂けた口で
一生‘笑う男’として生きていくグウィンプレン(パク・ヒョシン、スホ、パク・ガンヒョン)と 彼の盲目の恋人デア(ミン・ギョンア、イ・スビン)、二人を我が子のように育てた流浪劇団の頭ウルシュス
(チョン・ソンファ、ヤン・ジュンモ)の物語を通じて 社会正義と人間性が崩壊した世相を批判して 人間の尊厳と平等の価値に光を当てようとした。
舞台だけは期待以上というところには異見がないようだ。‘傷’と‘トンネル’に着眼した一貫性のある舞台デザインは 劇の没入度と完成度を高めるのに重要な役割を果たした。
グウィンプレンの裂けた口をかたどった境界幕、波打つ海、殺人的な吹雪が吹きつける平原、オーロラを連想させる最後の場面に至るまで 華麗な舞台効果と自然な場面転換などは
最先端CG(コンピューターグラフィック)を使ったブロックバスター級映画を彷彿とさせた。特殊メガネをかけて4D映画を見ているような錯覚に陥るほどだった。
俳優たちの演技も休む間もなく感嘆と拍手喝采を起こした。‘間違いない俳優’パク・ヒョシンとチョン・ソンファをはじめ ミュージカル界ですでに定評のあるヤン・ジュンモ、パク・ガンヒョン、
シン・ヨンスクとチョン・ソナ(公爵夫人役)らの安定感ある演技、EXOのスホも舞台の上での誠実さと真正性でアイドル出身という偏見を良いイメージに覆した。
作品に向けた厳しい声は 180分というランニングタイムの中に とても多くの物語を扱おうとした制作スタッフの欲、作品を代表するだけの目立つナンバーがないという点などに与えられる。
幻想のコンビで知られた『ジキルとハイド』の作曲家フランク・ワイルドホーンと 『レベッカ』『エリザベート』の演出家ロバート・ヨハンソンの出会いでミュージカルファンの期待が高かった。
だが原作を脚色する過程で選択と集中が効果的でなかったという批判は避けられなかった。グウィンプレンとデアのデュエット“木の上の天使”や ウルシュスとグウィンプレンが一緒に歌った
“幸せな権利”などが むしろグウィンプレンのソロ曲より耳に繰り返し残るのも惜しい点のひとつだ。
さまざまな批判の声にも『笑う男』にかける期待は一層大きくなった。舞台に上がって3週間にもならないホットな‘初演作’という点のためだ。いちど制作されたら様々な上演館で同時に公開され
何週だけで興行の善し悪しが決まる映画と違い 公演は10年ないしは30年まで どれだけ持続可能なのか可否が重要だ。回を重ねながら不足した点は補完し 長所は最大化して
引き続きアップグレードが可能なジャンルがまさに公演だ。こうした側面から『笑う男』は 初演で無限の可能性を見せたことだけでも笑いを浮かべることができる。
ミュージカル評論家の順天郷大学 新聞放送学科 ウォン・ジョンウォン教授は「今まで大型創作ミュージカルが多くの実験と挑戦をしたが 初演からこれほど目立つ作品を探すのは難しかった」とし
「すでに幕が開いた公演なので触れた感はあるが、素晴らしい見どころと成長の可能性が高いという側面から 成功的な第一歩を踏みだしたということは素晴らしい成就」と評価した。
続けて「わが国の創作ミュージカルも『キャッツ』『オペラ座の怪人』『ジキルとハイド』のように海外で認められようとするなら どれだけ長い間安定して上演されるかが重要だ」とし
「短期間の成果よりは忍耐心を持って 長期的に安定した売上を発生させられる作品が出て来られる環境を作る努力が必要だ」と語った。
7月10日に幕を開けた『笑う男』は8月26日まで芸術の殿堂オペラ劇場で上演する。続けて9月4日から10月28日までソウル ブルースクエア・インターパークホールに場所を移して公演を続ける予定だ。