「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」(古今集:詠み人知らず)
老齢になった同窓会でも「昔の人」(親しくしていた女性)の話題がある。大変うれしいことだ。
現代においては、若い女性が、香を焚きこめた衣服または香袋を袖に忍ばせるなんて事をするなんて聞いたことがない。奥ゆかしさがなくなったのではなく、古今集の頃は、毎日風呂という風習がなく、体臭を香によって自分の匂いにしていたのでしょう。そこで、男は、この香りは、誰のものという感覚が研ぎ澄まされたのでしょう。
【初夏になるのを待っていたかのように、垣根などから花橘が咲き出し、その香りがただよってくるとき、「あの人」の袖の香を思い出して、胸がきゅ~んとなるほど懐かしくなるよ】
kunio_nikkiも、「あの人」を思い出しても、その匂いというものには全く思い出はない。情緒というものが欠落していたのか、感情というものが二人を支配していて、「詠み人知らず」の心境には遠く及ばない。