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「運命の女神」

2010-08-02 21:10:07 | ギリシャ神話

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 「うちらは陽気な三姉妹。ちょっと危ない物語」


 年末やら受験のときだけ皆々が口々に祈りの声をあげる。


 「運命の女神さまっ、微笑んでください」


 ところが、この運命の女神さまは、神話業界のアイドルみたいなもので、少しばかり、いやっ、かなりプライドが高く、ちょっとやそっとじゃ見向きもしてくれないのだ。


 “運命の女神”という三人のユニットを組んでいるのは、クロートー、ラケシス、アトロポスの三姉妹。彼女たちのライバルは、その名も“復讐の女神”たち。


 母は、必然の女神・テミスで、幼い頃より ――そんなの必然よ―― という言葉で厳格に育てられる。
 この三姉妹には不言実行、母の命令は絶対だった。そのように運命づけられていた。


 三人は、それぞれ仕事を分担していて、クロートーは機で、人間一人ひとりの命の糸を織る。ラケシスは紡がれた糸を測る。


 「ちょっと長いわね。アトロポスお願い」と彼女が言うと、アトロポスがはさみを手に持って「このぐらいで良いかしら」と、チョッキンと糸を切る。


 すると人間界のどこかで、名もなき人が心筋梗塞か何かでバッタリ、死んでいく(デスノートみたいに)。
 こんなことを繰り返す恐るべき三姉妹、それが運命の女神たちなのだ。


 「今日は、なんかムシャクシャするわね」と、そのストレスのはけ口が、この“糸チョッキン”だというからいい迷惑だ。


 特にアトロポスは気性が荒くて、年中ムシャクシャしていたらしい。


 「ああーっ、なんか腹立つ! あんな赤い糸、チョッキンしてやるわ!」


すると、幸福な二人は、突然別れるのだ。神話業界では、一番に恐れられている娘である。


 しかし、後の二人も、実はアトロポスに引けをとらないほどコワイ。


 「あ~っ、ここ糸ほつれちゃった…… まぁ、いいっか」(良くない!)


 と、おっちょこちょいのクロートーは、いい加減に糸を織る。すると、まだどこかで誰かの運命が狂わされていく。


 「わたし、不良品は嫌いなのよね~。ちょっと短いけど、アトロポス、ここで切ってちょうだい」(お~い)


 真ん中のラケシスは、変に職人気質なところがあって、常に完璧を目指そうとする。そのために、どのくらいの人が命を縮められたであろうか。


 こんな三姉妹に世間は甘く、神々は彼女たちにおべっかを使っては、運命を都合の良いように変えようとする。
 なぜなら、彼女たちの副業は予言だったからである(自分たちで未来を紡いでいるのだから、的中率100%に決まっている)。
 贈り物は貰いたいほうだい。必然の女神の元で厳しく育てられたが(多分育て方に誤りがあったのではないかと思うが)、結構楽しく生きている三姉妹だった(その分、周りは迷惑を蒙るのだけれどね)。