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「オリオン座・オーリーオーン」

2010-08-08 17:19:27 | ギリシャ神話

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 「望んだものがすべて手に入るわけではない」


 オーリーオーンはギリシャ神話きっての美男子で、名狩人だった。しかも父親は、ポセイドーンとあっては、世の女の子が放っておくはずがない。
 名門のボンボンのオーリーオーンは、自分の魅力を十二分に理解していて、女の子をナンパすることにも名狩人だったのだ。


 彼が狙えば、望みのほとんどが叶えられるので、当然彼は、すこぶるプライドが高かった。彼の相手は、人間、ニュムペーたち、女神たちなど様々。


 「チッチッ、君たち。狩人が獲物を逃がしたら、廃業すべきさ。僕の場合、完璧だけど」


 なんてぬかし…… 、いえ、仰っていたらしい。


 そんなオーリーオーンの心を敗北感で満たして、初めての挫折を味あわせた娘たちがいた(ザマーミロ…… 、オホン、失礼しました)。
 アトラースの七人の娘たち、プレイアデス(ちなみに、これは彼女たちの総称です)だ。


 オーリーオーンは、追っかけた。武道館の楽屋口や雨の日のテレビ局でスケジュールをつかんで、先回りしている追っかけのように(その手の人たち、ゴメンナサイ)。
 野を越え、山を越え、川を渡り、海を渡って、林や森を抜け、走りに走って、隠れて、待ち伏せをして、彼女たちを追いかけた。
 されどプレイアデスは逃げる。どんどん逃げる。ひたすら逃げる。どこまでも、果てしなく―― 。


 彼女たちは、純潔を守ろうとして固く誓っていたのでオーリーオーンでなくても、同じであったかもしれない。
 そして彼女たちは、ゼウスによってさらわれてしまい、夜空の星にされてスバル星団になってしまったのだ。


 オーリーオーンは、負けた。初めての敗北。信じられなかった。しかし、しかしだ。彼は、ただでは起きなかった。
 この後、暁の女神・エーオースと結ばれる(だから、美男子って奴は…… )。エーオースはオーリーオーンに早く会いたくて夜明けの時間が短くなった。


 月の女神・アルテミスは、どうして彼女が、そんなに急ぐのか不審に思い、覗きに出かける。アルテミスは、なんとオーリーオーンを見るや否や、一目ぼれしてしまったのだった。
 オーリーオーンのほうも、アルテミスが狩りの女神でもあったので、ともに野を駆けたいと考えて、あっさりとエーオースを捨ててしまう(だから、美男子って奴は…… )。


 ところが、これに怒ったのが、妹のアルテミスをとられたアポローンだった。彼は、曾祖母のガイヤをけしかけて、巨大なサソリにオーリーオーンを襲わせる。
 サソリは、オーリーオーンを海辺まで追い詰めたが、海の飛び込まれて取り逃がしてしまう。しかし、アポローンは、あきらめずに妹を利用することを考えたのだ(悪どいぞ、アポローン)。


 アポローンは、妹ではあったけれど、アルテミスのことが好きだった。だからオーリーオーンを許すことができず、さらに自分を裏切った(たぶん自分勝手な思い込みだと思う)妹にも悲しい目に遭わせずにはいられなかったのだ(なんか、昼メロみたい)。


 アポローンは、海岸へ妹を連れていき、遠くの海面に浮かぶ人の頭を指して言った。


 「あれは、お前のニュムペーを襲った野蛮な賊だ」


 アルテミスは、銀の弓に銀の矢をつがえて、男の頭を見事射抜いた。その男こそ、オーリーオーンだったのだ。
 まもなく真実を知ったアルテミスは、オーリーオーンを海から引き上げて、夜空の中で狩りが永遠に続けられる場所に置いた。
 そこは、スバル星団となった娘たちを追い、サソリ座が夜空に現れる頃には水平線に沈むという場所だった。
 そして、オリオン座は今でも、夜空に輝いている。