「不運な第九次十字軍遠征のただ一人の生き残りを自称する年を経た錬金術師の著書。禁忌のネフレン=カの名前を後世に伝えた魔術書」
・「De Vermiis Mysteries(妖蛆の秘密)」を著したのは、16世紀の半ば頃にベルギーの首都ブリュッセル近くの埋葬所廃墟に隠遁していたルドウィク・プリンという名の老錬金術師である。
・第九次十字軍の唯一の生存者を自称するプリンの生年は詳らかにされていないが、とてつもない高齢であったとされている。
・ベルギー国内で魔女狩り熱が高まった1541年、プリンもブリュッセルの異端審問所に引き出され、宗教裁判の名を借りた苛烈な拷問の末、処刑される。そして自らの死に至る前に獄中にて書き上げたのが「De Vermiis Mysteries(妖蛆の秘密)」である。
・プリンの死後1年を経てドイツのケルンにて小部数が発行された「De Vermiis Mysteries(妖蛆の秘密)」は、鉄の表紙が付けられた黒い書物であったとも、ゴシック体の二つ折判装丁であったとも言われている。
・「De Vermiis Mysteries(妖蛆の秘密)」の初版本は、教会によって直ちに発禁処分を受けており、その後、暫らくして検閲済みの削除版が刊行されているが、資料価値は極めて低い。
・1820年に、チャールズ・レゲットの翻訳した英語版が刊行されているが、これは初版本を元にしているらしい。現存している15部の初版本のうちの1部は、ミスカトニック大学附属図書館に所蔵されている。
・この書物に記されているのは、シリア、エジプト、アレクサンドリアといった中東・アフリカの土地でプリンが知り得た禁断の知識ならびに秘密の術法の数々である。
・古代エジプトの伝説を記した「サラセン人の儀式」という章では、大蛇セトやオシリスなどのよく知られている神々と並んで「死者の書」からも、その存在を抹消されたネフレン=カといった知られざる存在について詳細に記述されている。
・特筆すべきは、「眼に見えざる朋輩」、「星の送りし下僕」の名で知られ、晩年のプリンの身辺に常に群れをなしていたという使い魔の召喚方法であろう。