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「トロイアの王子・パリス」

2010-06-25 15:58:19 | ギリシャ神話

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 「ゼウスがしっかりしていたら、こんなことは起きなかった」


 ここからはご安心を、ゼウス絡みの話でもまともなエピソードが続くから……(誰ですか? がっかりだなんて言っているのは)。


 ギリシャ神話上、もっともお騒がせな果実のひとつが“黄金のリンゴ”だ。“不和”を呼ぶ恐ろしいリンゴである。
 かのトロイア戦争の発端をつくったのも、こいつだった。
 中でもアテーナーとヘーラーとアプロディーテーという女神たちの三つ巴の争いは、そのスケールの大きさとバカバカしさでは群を抜いている。


 それはペーレウスとテティスの結婚披露宴からはじまった。この披露宴はとても盛大なもので、ほとんどの神々が招待された。
 ところが争いの女神エリスだけは招待されない(だって仕方がないじゃん。二人の幸せの門出に争いの神はないでしょう)。もともとひがみっぽい、この神さま、自分は除け者にされたと憤慨し、神々がうち揃った披露宴会場へ黄金のリンゴを送り届けたのである。
 そしてリンゴにはこう書いてあった。


 「一番美しい女神さまへ」


 そのリンゴに三つの手が伸びてきて、ぶつかった。アテーナー、ヘーラー、アプロディーテーの女神たちだ。どちら様も、自分の美貌には絶対の自信をお持ちです。
 三人は、黄金のリンゴをむしり取ろうと騒ぎ始めた。結論がでる訳がない。


 「では、お二人とも、ゼウスさまに審判していただきましょうよ」


とヘーラーが言う。


 「やっぱりきたか」


とゼウスも観念した。あとの二人も、それがいいと賛成のようだ。
 ところがゼウスの方が一枚上手。危険を回避するのは上手いのだった。


 「トロイアの王子・パリスに決めてもらおう」


 かくしてパリスが突然、審判役に抜擢されてしまう。三人はそれぞれ、早速パリスに賄賂を贈る約束をした。
 ヘーラーは権力と富を、アテーナーは戦場での誉と名声を、アプロディーテーは人間の中でもっとも美しい女性、スパルタの王妃ヘレネーを彼の妻にと約束した。
 パリスはアプロディーテーの申し出を気に入り、黄金のリンゴは彼女のものとなった。


 のちにパリスはヘレネーを誘拐したことから、トロイア戦争が始まる。しかし、ヘーラーとアテーナーの恨みは消えず、二人の応援を受けられなかったトロイアは敗北していくのだ(ああ、女の恨み、妬みって怖いんだな)。


 それにしても、あのヒヒ爺、これだけの大きな戦争が起こっても、あの三女神に恨まれるよりましだと思っているんだろうな。やれやれ…… 




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