すでに三度も激情の嵐に曝されて、とうとうリアは頭がおかしくなり始める。自身の感情をコントロールしようと努力するのだが、思うようにいかずに、換わりに狂気が次第に襲い掛かってくるのを感じる。
こういう棄て台詞を残し、リアは激しい嵐の中に飛び出して行ってしまう。逆に娘たちは邸の中へ戻って行き、リアを探しに行くこともしなかった。
'You think I'll weep; No, I'll not weep: I have full cause of weeping; but this heart Shall break into a hungred thousand flaws, Or else I'll weep. O, fool, go mad.' (おまえら、余が泣くと思っているな。 いや、泣くものか。 泣きたい理由は幾らでもある。だが、この心を 粉々に打ち砕いてしまうまでは、決して泣きはせぬぞ。 おお、道化よ、余は気が狂いそうだ)
こういう棄て台詞を残し、リアは激しい嵐の中に飛び出して行ってしまう。逆に娘たちは邸の中へ戻って行き、リアを探しに行くこともしなかった。
激情の嵐に曝されたリアは、実際の嵐にも曝されるというわけだ。この辺りがシェークスピアの皮肉っぽいところを感じる。つまり心身ともに嵐にもみくちゃにされるということだ。
そしてことごとに娘たちの冷酷な心が暴露する。グロスターとリーガンとの間に交わされた会話――
そして城門は閉じられて、リアは追い出されてしまった。ここで二幕は閉じる。
Gloucester: Alack, the night comes on, and the bleak winds Do sorely ruffle; for many miles about There's scarce a bush. Regan: O, sir, to wilful men, The injuries that they themselves procure Must be their schoolmaster. グロスター:ああ、夜になる、身を切る冷たい風が吹き荒れている。 この辺りは、どこまで行っても 草むら一つもありはしない。 リーガン: ええ、でも頑固な人というものは、 自ら招いた禍を、己の師とせねばなりますまい。
そして城門は閉じられて、リアは追い出されてしまった。ここで二幕は閉じる。