ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

気負わず、気取らず、ありのまま。
ゆるりと思ったことを書いていってます。
お気に召したらうれしい限り。

東野圭吾 『新参者』 読了

2024年06月17日 15時07分36秒 | 読書
こんにちは、ジニーです。

久しぶりの読書感想ブログです。
今日は東野圭吾さんの「新参者」です。


これまでもここで紹介したことがありますが、僕は東野圭吾作品の中でも加賀恭一郎シリーズが好きです。
今回の「新参者」も、その加賀恭一郎シリーズとなります。

加賀恭一郎というのは警視庁捜査一課の刑事です。
刑事として事件の捜査に当たり、解決していくという内容なのですが、特徴的なのはホワイダニットに焦点を当てている作品がほとんどで、「なぜ殺人を犯してしまったのか」を追求していきます。
そのため「人情」という言葉も似あう作品で、ここに僕がはまっている理由があります。
今回読んだ「新参者」もずっと読みたいと思っていて、やっと読むことができた作品でした。

本作は連作短編の形となっています。
下町で発生した殺人事件を解決するために横町の様々な店に聞き込みに加賀恭一郎が現れるのですが、それぞれの店で起こる殺人事件とは関係のない事件を各章で解決していきます。
その中で集めた情報が結果的に殺人事件を解決するヒントになっていく形となっており、その過程が非常に面白い作品です。

前述のとおり本作もホワイダニットの要素はあるものの、本作は短編としての形を最大限に生かした形式をとっており、どちらかというと各章で起こる一つ一つの事件を通して人と人とのつながりを知っていくことが醍醐味のようにも感じます。

気になったことはトコトン突き詰めていく加賀恭一郎。
なんども訪問するその姿は、刑事コロンボや警部補古畑任三郎を彷彿とさせる部分もありますね。

とにかく読み始めたらページをめくる手が止まらない。
ありきたりですが、まさしくその言葉が当てはまる小説です。

なお本作は阿部寛さん主演でドラマ化もされており、以降の「麒麟の翼」にもつながっていきます。
いつかドラマのほうも見てみたいですね。


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荻原浩 「それでも空は青い」 読了

2024年03月24日 20時21分48秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

春分の日も過ぎましたが、寒い日が続きなかなか春を感じにくいですね。

さて、読書感想のお時間。
今回は荻原浩さんの「それでも空は青い」です。

本作は7つの短編がつづられている短編集です。
「一緒にいたい人がいる」をテーマにいろんなシチュエーションの、いろんな主人公が登場します。
恋愛もあれば友情もあり、家族間の関係のものもあります。
それだけに広く共感を得やすい作品かもしれませんね。

収録されているのは以下の7作。

■スピードキング
プロ野球選手になった友人の訃報が届いたこときっかけに共に過ごした学生時代から今までを振り返る主人公の話。
最後にちょっとしたどんでん返しがあって驚きました。

■妖精たちの時間
クラス中の視線を奪った転校生。彼女は「妖精が見える」らしい。
舞台は同窓会なのですが、彼女はこれまで一度も同窓会に顔を出したことはなかった、しかし20周年を記念する今回は会に参加していた・・・。

■あなたによく似た機械
「ああ」とか「うん」とかしか言わない夫を持つ妻。
そんな夫にロボットなのではないかと疑念を抱くようになり、夫が仕事に出た時間を利用してその証拠を探し始めるが。

■僕と彼女と牛男のレシピ
7歳年上のバツイチの恋人をもつ僕。
この恋には牛男という壁があり、その壁をクリアしようとする奮闘劇。

■君を守るために、
飼い犬にメロメロなOLが主人公の物語。
あまりにも愛しすぎて仕事中にも顔が見えるように部屋に置いたカメラに知らない人間の足が映り込んでいた。
異常事態に社内の同僚に助けを求めた後に意外な出来事が起こる。

■ダブルトラブルブッキング
双子の書記のような作風の物語。
ずっと一緒に過ごしてきた双子が、どのようにして困難を脱してきたのか。

■人生はパイナップル
「パイナップルは嫌いだ」という祖父を持つ主人公の物語。
祖父と過ごした10数年間をキャッチボールを通してつづられたとある家族の絆。

どれもこれも面白い作品でしたが、中でも欲に好きなのは「僕と彼女と牛男」と「君を守るために、」です。
前者はどこかお仕事小説のような側面もあり、仕事と恋と牛男に奔走する主人公の純真さと一生懸命さがずっとあって、思わず応援したくなる内容でした。
後者はちょっとホラー要素があるのですが、なんともポップな作品で、思わず笑ってしまう場面も。
ホラーってこんなに面白くかけるんだ、なんて感動もありました。


すべての物語には前述のとおり「一緒にいたい人がいる」というテーマがあり、そこにはいろんな形のやり取りがあるのですが、そこにはやはりいろんな形のコミュニケーション方法がありました。
それは時にキャッチボールであり、時にはお酒であり、時には現世への未練であり。
でもそこでしか生まれないコミュニケーションには誰にも言えない秘密が何気なく込められていたりしていて侮れません。

でも視点を変えてみると僕らの生活もいろんなコミュニケーションとそれを行うツールとがあって成り立っていて。
こういったコミュニケーションを通して相手を知っていっています。
誰かとつながっているということは、普段あまり気にすることは少ないかもしれませんが、とても大切なことなのだと思い出させてもらえるような作品でした。

「それでも空は青い」。
とてもいいタイトルですよね。
人の数だけ、人生があり悩みや喜びもありますが、どんな時もどんな人も見上げれば同じ空がある。
タイトルからもやはりそんな「つながり」を感じられるのは気のせいでしょうか。


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森絵都 「風に舞い上がるビニールシート」 読了

2024年02月25日 15時48分13秒 | 読書
こんにちは、ジニーです。

またまた久しぶりの投稿となってしまいました。
今日はたまりにたまっている読書感想を書いていきますね。

今回は森絵都さんの「風に舞い上がるビニールシート」です。

森絵都さんは、正直最近まで知らなかった作家さんでした。
いつも拝読しいている読書ブロガーさんの過去記事を見ていく中で、短編小説のおすすめの中に本作が紹介されていてたのがきっかけで名前を知り、その後よく注意してみるといろんなところで名前を見る作家さんだと気づきました。

結構ミステリー小説ばかり読む僕なので、時々心が温まるような小説や、ライトに読める小説が無性に恋しくなる瞬間があります。
その時のために準備していたうちの一つが本作です。

本作は6編の物語が収録されています。
【器を探して】
天才パティシエの奔放なオーダーに振り回され、東京から岐阜まで美濃焼を探しに行くことになった女性の物語。
仕事に追われ恋人との関係も怪しくなる中で彼女が選ぶものは。

【犬の散歩】
場末のスナックで働くエリと飼い犬の話。
「私にとって犬は牛丼のようなもの」と口にするなぜエリ。彼女はなぜお金が必要なのか。

【守護神】
とある大学に都市伝説のごとく存在するニシナミユキ。彼女にレポートの代筆を頼む男子学生の話。
ニシナミユキの正体は、そして男子学生はなぜ代筆を頼むのか。

【鐘の音】
仏像や観音像などの修復を手掛ける職人の物語。師匠の下から離れた男の抱えていたものとは。
仏に魅せられた男たちの不器用な物語。

【ジェネレーションX】
弱小出版社に勤める健一と、玩具メーカーの直己が一緒にクライアントへ謝罪に向かう話。
車中で感じるそれぞれのジェネレーションギャップとその行く先にあるものは。

【風に舞い上がるビニールシート】
難民の保護を仕事とする国連機関ではたらく夫婦の物語。
愛する夫をなくした里佳が抱える喪失感はどうしても埋められないままでいたが。


どの物語も芯を持つ主人公が特徴的で、それがゆえに悩みもがく姿があります。
しかし、決して暗くなるものではなく、最後に曇り空から光明が差すような爽快感が残る作品です。
いろんなプレッシャーやストレスに追われ、少し自分の居場所を見失ってしまいがちな人が読むと、温かな気持ちを思い出してもらえるような小説でもあると思います。

いずれの話も主人公の人間らしさがあり好きなのですが、特に好きなのは「ジェネレーションX」。
似たような仕事をしているところが共感にもつながっているのだと思いますが、世代の違う二人の男が車中で繰り広げるストーリーとその先にあるほっこりとした終わり方がとてもいい読後感でした。
「鐘の音」も少しミステリー要素があって面白かったです。

本作のレビューをみると、表題作でもある「風に舞い上がるビニールシート」への評価が高く。
大切なものを大切にしようとするからこその葛藤と救いが感じられました。


ぜひこれからも森絵都さんの作品を読んでいきたいと思っています。
なにかおススメとかありましたら、コメントなどで教えてもらえると嬉しいです!

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赤川次郎 「マリオネットの罠」 読了

2024年01月22日 21時49分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

今日は少し暖かく感じますが、週の中頃からまた冷え込むみたいです。
体調管理に気をつけないといけませんね。


さて、読書感想のお時間です。
今回は赤川次郎さんの「マリオネットの罠」。

ようやく読みました。
なんというんでしょうね、気分と言えばその一言ですし、巡り合わせと言えばそうとも言える。
本作は3年くらい前から読みたい本リストに必ず名前が出ていたのですが、読みたい時に本屋で見当たらず、少し他に気持ちが入ってる時に間つけたものの購入は控えたり、なんか勝手な行き違いが生まれてました。

そんなわけでようやく読んだ作品です。


赤川次郎さんと言えば「三毛猫ホームズ」が有名ですよね。
ずいぶん昔にそのシリーズの誰かを読んだような記憶があります。

本作はそんな赤川次郎さんの初の長編作品だったはず。
そんな初期の作品ながら傑作の呼び声も高く、読む前から期待が膨らんでました。


物語はフランス留学から帰ってきた上田修一がとある資産家の娘の家庭教師をするために山間の洋館に足を運ぶところから始まります。
その洋館には地下牢があり、1人の少女が幽閉されていて、修一はその少女を救おうと行動を起こします。
それが恐ろしい連続殺人を引き起こすきっかけになるわけですが、物語全編にサスペンスの雰囲気が満ちていて、殺人を犯す犯人を捕まえるべく警察や修一のフィアンセが奮闘する様がハラハラドキドキといった感じで迫ってきます。

なかなか尻尾を掴ませない殺人犯。
それを追う警察。
危険を犯すフィアンセ。

手に汗握る展開がページを捲らせます。


ミステリーを多く読んできた方ならなんとなく真相が読めてしますところにありますが、本作のメインはミッシングリンクと動機にあると思っており、真相が明らかになってからの独白が、なるほどとなって解決に収束していく面白さになっています。


個人的にご都合主義的なものを感じる場面もあったりしましたが、そういうのを含めてミステリーです。

追われる、追い詰める、のドキドキを味わうにはちょうどいい作品だと思います。

真相まで読み終わるとタイトルの意味もわかるようになっています。
ぜひ、未読の方は手に取ってみてください。







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歌野晶午 『密室殺人ゲーム 2.0』 読了

2024年01月20日 16時53分51秒 | 読書
こんにちは、ジニーです。

昨年末にたまっていた読書感想を書いていこうと思っていたのですが、インフルエンザになって寝込み、気が付けば年も明けて1月が過ぎ去っていこうとしています。
時がたつのは早いですね。

そろそろ書いていかないといけないなと思い、2024年最初の読書感想です。

今回は、歌野晶午さんの『密室殺人ゲーム 2.0』です。
2022年の年末に、本シリーズの1作目の読書感想を書いていますね。

ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

気負わず、気取らず、ありのまま。ゆるりと思ったことを書いていってます。お気に召したらうれしい限り。

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なかなかハードな作品を年末にチョイスしてますね。
そして2024年1発目としても、これを紹介するのか、という感じの作品です。

このシリーズはネットを中心とする構成になっています。
5人のそれぞれ面識を持たない人間が、ネット上でリアル推理クイズを出し、当てていくという内容。
主な登場人物は「頭狂人」「044APD」「aXe(アクス)」「ザンギャ君」「伴道全教授」とハンドルネームでやり取りをし、クイズは5人のうち一人が出題者となり、残り4人が回答者となり持ち回りでクイズを出していくというものになります。

でもこのクイズ一筋縄なものではなく、出題者は実際に殺人を犯し、その事件のニュース情報や殺害現場の写真をヒントに推理を行わせるというものです。
本当に殺人を行うという、倫理観の欠片もないクイズ。
推理小説だから設けることのできる設定ですが、もうこの時点で受け入れられない人もいると思います。

しかし、ミステリー作品としては5人分の問題が出されるわけで、さらにその内容としても非常に質の高いトリックがわんさかと出てくるわけです。
倫理観に訴えるものはありますが、ミステリー好きとしては1冊で五度おいしい内容ですから読んでしまいますよね。


前作ではラストにとんでもない展開が待ち受けていました。
今回も驚く内容が用意されています。
しかしこれは、前作を読んでいるからこそ味わえるものですので、もし読んでみたいと思う方は、ぜひ前作から手に取っていただきたいと思います。
作中から意外な展開を味わいつつ、このシリーズならではの面白さを感じていただけると思います。


ただ、改めて言いますが、テーマとしてはあまり良いものではありません。
それでも読んでみるかどうか、そこは自己責任でお願いします。
※どうにも暗い気持ちンあるイヤミスということではなく、普通のミステリー以上に人の命が軽んじられています。

そして本作は、「マニアクス」というもう一つの続編を持ちます。
僕は一応こちらも読んでみようと思っています。
その機会はまだ先になりそうですが・・・。


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似鳥鶏 「午後からはワニ日和」 読了

2023年12月17日 17時12分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


ずいぶん前に読んだ本の感想を書き忘れてました。
これを読んでた時はまだまだ暑い日が続いてたなぁ。

似鳥鶏さんの「午後からはワニ日和」です。
すっかり本ブログではお馴染みの作家さん似鳥鶏さん。
今回はその著書の中でもまた面白いシリーズで、動物園がテーマとなっています。

主人公は楓ヶ丘動物園の飼育員、桃本くん。
彼が務める動物園である人「ソロモン」と名乗る怪盗がイリエワニを盗み去る。
次はミニブタ、クジャクなど次から次に動物を盗み去るソロモン。
へいわだった動物園に一体何が起きているのか?
そして、なぜ動物を盗むのか?

なかなか珍しい動物園をテーマにした作品ということで、動物園の裏側を知ることができたり雑学欲を満たすこともできるのが特徴でもありますが、やっぱ似鳥さんの作品といえば個性的な登場人物ですよね。

主人公の桃本くんは割とマトモな方(といってもキリンによく舐められるという特技がある)。
ほかにヒロインにあたる動物園のアイドル七森さん、美人女医であり猛禽類を担当する(犯人も猛禽類のごとき性格)、鴇(とき)先生、メガネのミステリマニアな変態服部くんなど、どこを切っても個性しか出てこないようなキャラに振り回される桃本くんが面白い作品ともなっています。

非常にライトで、読書が苦手という方にも手に取ってもらいやすい作品でもありますし、犯人探しのドキドキ感や、ラブコメ的な要素もあり、しかしながらなぜ動物園で立て続けに時間が起こったのかという動機を解明するミステリー要素もしっかりある。
意外と欲張りな作品です。

こちらもシリーズ化しており、作品のタイトルから中身が気になってしまうようなものもいっぱい。
また時間を見つけて続編も手に取っていこうと思います。






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伊岡瞬 「代償」 読了

2023年12月15日 19時56分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

クリスマスも近づく年の瀬に、ヘビーな本を読んでしまいました。

伊岡瞬さんの「代償」です。

今回もまた初めての作家さん。
今更、と感じられる方もいるかと思いますが大目に見てください。

伊岡さんを知ったのは、夏休みとかに本屋で見かける小冊子(各出版社が出してるやつ、ナツイチとか)で紹介されていたのを読んだからです。
ただし、そこで紹介されてたのは本作ではなく「残像」という作品でした。

イヤミスやクライムミステリーのような雰囲気の作品が多いのかな?と感じ興味を持ちました。

早速本屋で探しましたが、「残像」は見つからず代わりに購入したのが「代償」でした。


本作は2部構成になっています。

主人公の圭輔を中心に天才的教唆能力を持つ達也との因縁が幼少期の1部と、青年期の2部とに分かれている形です。

読み始めて割と早い段階で軽い気持ちで手を出してはいけなかったと軽く後悔するほど1部が重い重い。
中学生なのにすでにモンスターとしての片鱗を見せる達也と、何も力を持たず振り回されて不幸のどん底に落ちる圭輔。
もう、読んでていたたまれなくて、辛くて。
内心唸りながら読み進めました。


2部では青年となり弁護士の卵として活躍する圭輔にある事件で逮捕された達也から弁護を依頼されるところから始まります。

この事件も途中で謎が複雑になり、その真相と圭輔と達也の対峙がヒリヒリするような緊張感で進んでいきます。

1部ほどではないものの2部もしっかり重いのですが、結末に向けて色々なものが目まぐるしく変わっていくため、次が気になって読む手を止められなくなります。


イヤミスではありますがちゃんと悪には制裁が下るので、読み終えてみるとモヤモヤするものはありません。

とにかく最初が苦しいですが、そこを抜ければ面白さが優ってくると思います。


ちなみに本作はドラマかもしてるみたいです。
主演は小栗旬。
いつか機会があれば見てみたいです。






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綾辻行人 (時計館の殺人(上)(下)」 読了

2023年11月13日 21時49分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

ついに、ついにこの作品に触れる時が来ました。
綾辻行人さんの「時計館の殺人」です。
名作と呼ばれの高い本作、噂に違わぬ凄い作品でした。










本作は綾辻行人さんの代名詞でもある「館シリーズ」の第5段。
シリーズ初の上下巻に渡る大作です。

舞台はタイトルの通り時計に埋め尽くされた館。
108個の時計が埋め尽くす館で凄惨な連続殺人事件が起こります。

犯人は誰なのか?
という推理を巡らせる面白さもありますが、本作のメインは壮大なトリック。
読む前から「前代未聞の壮大なトリック」という煽りを見ていましたが、それでもなお驚かずにはいられないとんでもないトリックで、思わず読みながら唸ってしまいました。

これですよ、これが館モノのミステリーの醍醐味です。


トリックありきの物語になってたりすると、取ってつけた感が否めなくなったりもするのですが、さすが綾辻さんです、その背景も実にうまく物語として成立させています。

また、本書には至る所にミスリードがあり、それもまた面白さの一つ。
作者からのヒントも、受け取り方を間違えたら真相はおろか、何がヒントなのかもわからなくなってしまう。

最後にして最大の謎が明かされた時、あそこの一文が、あの時の描写がフラッシュバックします。
複雑に絡まった糸が、一気に解けて一つに繋がるかのように。

てか、このトリックを初見で当てれた人は心から尊敬します。
それぐらいスゴイ!

もうここまでくると騙されることも喜びですね。
むしろトリックが明かされた時に「なんじゃそりゃ!」って言いたい自分が確実にいる。


読書の喜びをくれる貴重な一冊です。
期待していた分を軽く超えてくる期待以上の作品でした。

この快感、いろんな人に味わってほしい。


その他「館シリーズ」の読書感想。


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あれ、「人形館の殺人」の読書感想を書いてない…💦

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一條次郎 「ざんねんなスパイ」 読了

2023年11月08日 17時59分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


今日は一條次郎さんの「ざんねんなスパイ」の読書感想です。

タイトルから分かる通り、スパイが主役となる小説です。
そして、タイトルから分かる通り、手に汗握ることのない、ゆるーい雰囲気の小説です。

なんといっても主人公。
73歳の老人、コードネームはルーキー。
なぜならこれまでスパイ活動など一度もしたことのない組織の清掃員だったから。
掃除屋とかそう言う意味ではなく、本当にモップを持って掃除する清掃員です。

ようやくスパイとして与えられた任務はとある街の市長暗殺。
そして、その市長と友達になってしまうガッカリな展開に。

ちなみに読めば分かるのでここで書いてしまいますが、冒頭の1行で暗殺対象の市長と友達になってしまったことがいきなり明かされます。


とにかくおいぼれスパイルーキーのざんねんさがずっと続く小説です。
もうね、「用心することをおろそかにしてしまう。用心するように用心しよう」みたいな感じがずっと続くんです。
読みながらツッコミが止まりません。

中盤以降は少し緊張感のある展開がはいり、みるみるうちにファンタジーな世界観に変貌します。
読みながら何が起こったのかよくわからなくなって、以降は僕の頭ではなかなか追いつかない状態に。

夢か現か判然としない感じです。
小説読みながら物語迷子になる貴重な経験をしました。

あとがきでは伊坂幸太郎さんとの対談があるのですが、すごい絶賛してました。
何か通ずるものが確かにある。
喋るカカシとかが出てくる「オーデュボンの祈り」的な?


最終的な感想としては、正直僕には上手く面白さが伝わらなかった小説です。
個人的には冒頭の流れのまま終始ドタバタしてて欲しかったな。
でも、ハマる人には抱腹絶倒な小説でもあると思います。


読み終わってから表紙を見て、「お前だったのか」と思わず呟きました。
真相はぜひ読んでみてください。






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原田マハ 「本日は、お日柄もよく」 読了

2023年10月18日 22時09分00秒 | 読書
こんばんはジニーです。

溜まりに溜まっている読書感想文。
少しずつ書いていかないと、内容が思い出せなくなる。

そんな強迫観念に晒されながら、滞りがちな10月の投稿です。


今回は原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」について書いていきます。

結婚式などの冠婚におけるスピーチで、この本のタイトルはよく使われたりします。
そう、つまり本作はスピーチがテーマの小説です。

もう少し正確に言うと、「スピーチライター」という仕事がテーマとなっています。
まだあまり馴染みの少ない仕事ですが、結構重要な仕事でして、言葉によって人の心を動かすという、この仕事ならではのやりがいがあります。

例えばそれは政治家であったり、企業の社長であったり。
人前に立ち、誤解なく、飽きさせることなく、伝えたいことを伝えることを求められる方々はこう言った職業のプロにスピーチをお願いするようです。

しかし、1から全てスピーチを書くのではなく、伝えたいことを聞き、大筋を描いてもらったものに添削を行う感じです。

なので、その人の生きた言葉のまま、伝えるべきが伝わるというものなのです。
(うまく説明できてるかな?)


主人公の二ノ宮こと葉が、最悪な気分で幼馴染の結婚式に参加するところから物語は始まります。


そこで聞いた幼馴染の仕事の取引先の社長のスピーチが、とんでもなく眠気を誘うくらいつまらない。
実際に寝てしまってとんでもないことをやらかすのですが、その後トリを務めるかのように現れた、久遠久美というスピーチライターのスピーチに涙が溢れるほど感動します。


この出会いが、こと葉のスピーチライターとしての扉を開くことになりました。

素人同然の、駆け出しスピーチライターのこと葉が色んな壁にぶつかりながら成長していく、そんなサクセスストーリーでもあります。




とにかくこの作品は読んでいてとても励まされます。

人を鼓舞するような言葉や、悲しみに寄り添うような言葉。
色んな言葉が、文字を通して言霊のようにスーっと胸に染み込んでくる感覚さえあります。

今年読んだミステリー以外の小説ではダントツで面白かったです。



本作の中でスピーチライターの才能として、人の話を聴く重要性が語られています。
ここは、仕事柄からも激しく同意したところで、いかに相手を知ることが大切なのかと言うことを改めて考えさせられますし、コミュニケーションの根底は自分を知ってもらう以上に相手を知ることなのだと考えさせられました。


こういうのがお仕事系小説の良いところですよね。
人は人生の多くを「働く時間」として過ごすのですから、仕事に活かせるようなエッセンスがあると、グッと身近なものにも感じられる気がします。


もうすでに読まれている方も多いかと思いますが、まだこれからという方はぜひ手に取ってみてください。
とても読みやすいし、オススメです!






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