名古屋市農業センターの冬の立ち木の中で、目を引かれるこの1本。大きく広げた緑いっぱいの枝葉の間に、直径5㍉前後の真っ赤な実をびっしりとつけたクロガネモチです。
クロガネモチ。この名前から「金持ちに」を願う縁起木として人気がありますが、僕にとっては田舎で育った子どもころの記憶がよみがえります。
まだ野鳥保護の大切さを知らなかった時代。野山の野鳥を捕獲するのも、遊びのひとつでした。山に入り低木を折り曲げて仕掛けをつくったり、農耕馬の尻尾で編んだ「輪っか」を、田んぼの畦道沿いの溝に仕掛けたり。
「とりもち」も、その1つでした。作り方は知りませんでしたが、原料がクロガネモチの樹皮だったようです。チューインガムのようなネバネバした「とりもち」を塗り付けた小枝の切れ端を、花が咲いたサザンカの枝などに置いて、メジロが飛んでくるのを待ちました。
成果はほとんどなく、手や衣服にべっとり付いた「とりもち」を取り除く悪戦苦闘が、これまた記憶に残る思い出です。