トリエンナーレ会場のひとつ、名古屋・長者町会場。ビルの中に展示場が。
高度な技術の蜜蝋画です
あいちトリエンナーレの会場は名古屋・岡崎・豊橋の3市11会場ですが、愛知県美術館と名古屋市美術館以外は、通りの商業施設やビルの多目的フロア、古民家などを展示場にした、いわゆる「まちなか会場」です。
そのひとつ、名古屋の長者町会場へ出かけました。
日本の3大繊維街だった長者町も、流通の変化に伴って異業種も混在する街に。そこで時代に即応した街づくりをと、トリエンナーレにも6年前の第1回から参加。ビルの部屋を展示場にするなどしています。
そんな繊維街のルーツに思いをはせる作品に、老舗のアパレル総合商社「八木兵」ビル錦6号館の展示場で出会いました。
地域の文化・歴史にスポットを当てて活動する白川昌生が、展示空間全体を使って表現するインスタレーション。ここでは、長者町物語「らくだをつくった男」(白川著)をテキストにして表現しています。
物語では、男はメリヤス製の男性用下着を開発。織機設計の過程で頭に浮かんだ動物「らくだ」を商品名にして、同時期に流行した童謡「月の砂漠」を流し「股(もも)引きといえば、らくだ」と言われるまでに大ヒットさせます。
男は「プラスとマイナス、男と女、といった具合に何事にも対比があり、金の鯱があるなら銀の鯱もなければ」と考え・・・と物語を展開、展示空間には夫婦の手紙や系図、「らくだの下着」などとともに、らくだマークの段ボール箱を積み重ね、発泡スチロール製の銀の鯱を飾っています。
並べてある冊子の物語に目を通し、最初は「何で銀鯱なんか展示してあるのだ」とあきれていたことを反省。
どこまで史実かフィクションかなどは関係なく「自分を長く足止めするのがいい作品」と勝手に決めている僕の評価基準からすれば、傑作でした。
通りを歩き、ビルの階段を上がると出会う作品の数々。歴史があり、高度な技法が必要とされる地元の作家・今村文の蜜蝋画も目にすることができました。
小腹が空いたら気軽に入れる店が結構あることも、長者町アート巡りの楽しさを高めてくれます。
街頭にはこんな新聞も