数年前から、寺院をめぐる若い女性の姿を数多く見受けるようになりました。「寺ガール」という言葉も耳にします。
京都・南区の東寺で見かけたに2人連れの姿を絵にしました。
かつて「抹香臭いのは苦手」と敬遠気味だった若者たち、とりわけ若い女性らの寺めぐりが、なぜ増えたのでしょうか。
「そんなの、うまいもの巡りをしたいからだよ」という見方があります。でも、全否定はしませんが、ちょっと短絡的だと思います。
ここ東寺の周辺には、若い女性好みと言えそうな飲食店は多くありません。
それに、真夏のこの日、京都も朝からうだるような暑さ。熱中症を心配して高齢者の姿はほとんどないのに、若者の姿は男性を含めてあちらこちらに目についたのです。
軽いノリで訪れているとは思えません。
少女漫画誌に連載された題名もズバリ「寺ガール」という漫画が火をつけた、という説があります。
僕は少女漫画誌なんて見たこともありませんが、寺に生まれ、高校・大学生になった3姉妹の恋や進学の悩みなどをコミカルに描き、2012年から13年にかけて大人気になったそうです。これは説得力がありそうです。
「パワースポットめぐり」「スタンプラリーなどの楽しさ」「宗教や歴史を学ぶ」「国宝や重文などに対する知識欲」「自分探し」。それぞれ、うなずけます。
神社仏閣への初詣が若者のファッションになり、若い作家たちの手作り雑貨が人気の縁日や境内でのコンサートなどで、「抹香臭い」なんて感覚は無くなった、といえるでしょう。海外旅行で教会や寺院を訪ねる機会が増えたことなどもあるかもしれません。
もうひとつ、2011年の東日本大震災や、先の熊本・大分地震など相次ぐ災害も無関係ではないのでは、と思います。
死生観を考えること、家族のこと、友だちのこと、祈ること・・・。
そんなことを考えながら絵筆を進めました。
東寺の「金堂」に入ろうとする2人連れ。中には薬師三尊像や十二神将像などがあります。
細かい目の金網は、マスキングのお世話にもなりました。
薄い生地でできた女性の衣装が厚くなったり、重くなったりしないように注意しました。サイズは20号です。