水彩画教室の宿泊スケッチで出掛けた岐阜県高山市では、3人の高齢画家の創作活動や作品を拝見できました。
それぞれ「芸術にトシなんか関係ない。描き続けていることが、その証」と意欲みなぎる姿勢に、同じ高齢者群団の我々も圧倒されました。
まず「ノロ燐(のろりん)=纐纈倫子」さん。
教室の山田彊一講師に「東海地方一番の女性画家」と案内されて、高山市松之木町にあるノロ燐さんのギャラリー&アトリ絵・ガガを訪ねました。
ノロ燐さんは20代初めから現代美術画家として活躍、読売アンデパンダン展やシェル美術賞展、朝日美術展、エンバ美術展などで発表してきました。
ともに画家として「人間存在の深層や情念に迫り表現する」作品づくりをしてきた夫を16年前に亡くしたものの、75歳になった今も創作にかける意欲は増すばかりのようです。
夫婦の作品や画材が並ぶアトリエで、創作活動などについて話してくれたノロ燐さんは我々全員に「1つのお願い」を託しました。
ここに掲載した「鬼子母神像」という作品の消息についてです。
これは、かつて京都嵐山美術館・真乗庵に展示されていたこともあったそうですが、現在は消息不明。しかし、作品を知る各地の美術館から問い合わせもあり、もし何かの機会に目に触れることがあれば連絡(090-4182-9769)が欲しいとのことでした。ギャラリー&アトリ絵・ガガは☎0577-34-8390です。
次いでノロ燐さんに道案内してもらって訪ねたのは、高山市漆垣内町の伊藤昌宏さん。79歳。アトリエに入ると、額に入った数枚の絵やその何百倍もの水彩画が机に積まれていました。
自宅の近景から飛騨の四季、日本各地の山、花、動物、鳥、こども、おとな・・・。何でもあり、何でも絵になる感じです。時おり個展で発表されているようです。
「年に何枚ぐらい描いているかって? 分かりませんよ。車で駆け回っています。このあいだも、何日間か東北を走ってきました」
写真を撮り、コピーを元に細かい岩肌まで描いているとか。「だから、この絵のサイズはB2。これはA3ですね」
とにかく描きまくっているのが楽しいそうです。
3人目は長畑稔さん。80歳。
高山市本町にあるギャラリー満喜田で26日から31日までの日程で、長畑さんの水彩画の個展が開かれており、教室のみんなで見せてもらいました。
定年後、水彩画教室で学習。メキメキ力をつけて高山市展、岐阜県展、上野の森美術展日本の自然を描く展、日本水彩展などでも発表してきたそうです。
会場には、山々を臨む田園風景や雪の日の町通りなど、飛騨を舞台にした38点の作品が並んでいます。
「今は楽しんで描いています。心がけているのは現場で描くことです」
それぞれ年季の入った作家の作品や言葉からは、見習わねばならないことが多いですね。