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ホンマでっか!?TV 左利きの寿命:おおたわ史絵氏「有意差がない」発言のトリック

2012-03-22 | 左利き
もうかなり前のことになりますが、3月7日のフジテレビ系のバラエティ番組『ホンマでっか!?TV』は「寿命のヒミツ」をテーマに、左利き短命説を取り上げていました。

【ホンマでっか!?TV もしもの時に役立つ&寿命のヒミツSP!左利きの人は事故死に注意!? ほか】


これに対しては言いたいことがいくつかあります。

(1)この番組での発言に関して―日本では直したりするので有意差がない
(2)同じく―左利きは脳が違うという発言について
(3)テレビのバラエティ番組での左利きの話題の扱いについて
(4)「左利き」「右利き」と二分するような「利き手/側」の受け止め方

ここでは、日にちも経ってしまったことですし、(1)について簡単に触れておきます。


概要は、

医療評論家のおおたわ史絵氏が、アメリカの医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』からの情報として、幾つかの数値とともに、左利きの人は右利き用に作られた道具や機械等で事故に遭いやすい、またストレスが多いので、右利きの人より9年寿命が短い云々といった内容でした。

右利き偏重社会における右利き優位の環境により、左利きの人の寿命が短いというわけです。
しかし、これはあくまでもアメリカでの調査結果であり、日本では古来右利きにする教育があったため、アメリカ程の有意差はない、とも発言されました。

では右に換える方がいいのかという問いに対して、換える方がいいとは言えない、言語機能と近い部位にあり、その影響を受け言語に弊害が出る可能性もある、ということを話しておられました。
また、脳科学評論家の澤口俊之氏は、言語機能が右側にある人と左側にある人がいる云々と、「左利きの人は脳が違う」という発言をされました。

(正確な発言内容を引用しているわけではありませんが、おおむねそういう意味合いでした。)


詳細情報は以下のサイトをご覧いただくのがよいかと思います。

【文字情報】
ホンマでっか!?TV~左利きは右利きより9年早死に!?「寿命のヒミツ」(主な内容)
【番組動画が見られる】
ホンマでっか!?TV もしもの時に役立つ&寿命のヒミツSP!左利きの人は ...

 ・・・

私が問題としたい点は、
「日本ではわりと右利きを(あっ)、左利きを右利きになおしちゃう、子供のころに、そういう教育を、わりとあるので、日本の場合はここまで有意差がないんですよぉ」
という医療評論家・おおたわ史絵氏の発言です。

この「有意差がない」という発言は、一種のトリックです。
仮のその通りだとしましても、なぜか、という問題があります。

「有意差がない」理由として、
(A)実際に左利きの人の早死にする死者の実数が少ない場合
(B)本来は左利きの人としてカウントされるはずの人が右利きとしてカウントされている場合
の二通りが考えられます。

(A)の場合、
左利きの人が「右利きになおす」(おおたわ氏の発言)おかげで、左手を使わず右手を使うようになり、事故に遭遇することや日常的なストレスが減り、左利きであっても早死にすることがなくなる、と考えられます。

(B)の場合は、
「左利きをなおした」結果、「右利きになった」と考える人なら、当然「左利き」と分類されないことになります。
これらの人が早死にしても、本来なら「左利き」の死者を増やすはずが、逆に「右利き」の死者を増やすことになり、結果として「有意差がない」状態になる、と考えられます。

今回のおおたわ氏の発言では、その辺のところが明確ではありません。


(B)の場合について補足しますと―

確かに昔は(一部では今でも)「矯正」とか「なおす(直す/治す)」と呼んで、右手を使うように指導することが当然のように行われていました。

しかし、その結果どう変化するかと言いますと、実は教えられて練習したこと―箸遣いや字を書くこと、あとはせいぜいハサミや包丁、あるいは裁縫の運針とか、ボーリングのボール投げやゴルフの右打ち(道具の少なさもありますが)といったことぐらいで、自然と出る手は左手、無意識に使うのは左側というケースが多く、根本的な性質が変わるわけではないのです。

ところが、そういう「変換」(「矯正」「なおす(直す/治す)」という表現を、最近の私はこう呼んでいます)に成功した人たちの中には、自分のことを「右利きになった」と考える人もいるのです。
そういう人たちは自分のことを、「元左利き」(今では右利きになった、という表明でしょうか?)とか、「両利き」と自称する場合もあるのです。

こういう人たちは、「左利き」とは意識しないでしょうから、日本での調査結果にも影響を及ぼすのではないでしょうか。

 ・・・

ネットの反響を見ていますと、今回の番組を見て、「日本ではなおすから大丈夫なんだって」といった見方をしている人もいるようです。
あるいは、「日本では子どもの頃に右利きに直す風潮があるため、利き手による死亡年齢の差はそれほどないそうなんですが、左利きの人にとっては、ちょっと考えさせられる情報」といった受け止め方もされているようです。
「左利きの人は、右利きより9年早死にする」ってホント!?

しかし実際は言葉のトリックであって、この発言だけでは何も保証するものではないのです。


この番組を見て、「やっぱり左利きの子供は利き手を換えなければ!」といった短絡的な考えをお持ちになった人がいらっしゃれば、思いなおしていただきたいものです。

*参考*
・左利き短命説を最初に取り上げた本:
『左利きは危険がいっぱい』スタンレー・コレン/著 石山鈴子/訳 文藝春秋 1994.1
―「第12章 左手利きは早死なのか?」
・その後の研究にふれた本:
『変な学術研究1』エドゥアール・ロネ/著 高野優/監訳 柴田淑子/訳 早川書房 ハヤカワ文庫NF 2007.5
―フランスの科学ジャーナリストによる科学雑学54話収録。50項目目に「左利きは短命」。
・左利き/利き手について科学的に知る本:
『左対右 きき手大研究』八田武志/著 化学同人(DOJIN選書 18) 2008.7
―日本の利き手研究の権威による一般向けの本。「第2章 安全でない左きき」で短命説を取り上げている。
『非対称の起源』C. マクマナス/著 大貫昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006.10.21
―イギリスの利き手研究の権威による、20年の成果をまとめたもの。
・左利き生活の不便を知る本:
『左利きの人々』渡瀬けん (中経の文庫)2009.1
―左利きの人に使いづらい、右手・右利き用になっている道具等を紹介するエッセイ。
・左利きの子供の子育てのガイド本:
『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』ローレン ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍 2009.4
―著者は、自身左利きで左利きの子を持つ母親で、イギリスの有名な左手・左利き用品の専門店のオーナー。筆者が巻末資料の作成に協力した本でもある。

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※本稿は、ココログ版『レフティやすおのお茶でっせ』より
「ホンマでっか!?TV 左利きの寿命:おおたわ史絵氏「有意差がない」発言のトリック」を転載したものです。
(この記事へのコメント・トラックバックは、転載元『お茶でっせ』のほうにお願い致します。ただし承認制になっていますので、ただちに反映されません。ご了承ください。)
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