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左手・左利きに優しくない!?学童用はさみ「スコッチ キッズシザーズ」住友スリーエム

2011-12-23 | 左利き
(画像:製品画像より)

12月21日、住友スリーエムより、安全設計を施した学童用はさみ「スコッチ キッズシザーズ」を来年1月1日発売、というニュースが発表されました。

ニュースリリースによりますと、

《幼稚園児や児童を持つ親を対象》にしたアンケートの結果、《子供のはさみを購入する際に重視する要素》として、《「安全な設計」と答えた方が60%と最も多く》《安全性が最も求められている》ことがわかった、と言います。

そこで、【落下しても刃が開きにくい安全設計】のハサミだそうです。


「スコッチR キッズシザーズ」の特徴

(1)《刃の形状を刃先に向かってやや内側に湾曲させているため、刃と刃がかみ合い、落下しても刃が開きにくい安全な設計》
(2)《重量は一般的なはさみの約半分で、軽くて疲れにくく工作にもぴったり》
(3)《グリップは長時間使用しても痛くなりにくい、ソフトなラバー素材》

ここまでは、特にどうということはありません。
ごく普通に、学童用のハサミとしての性能を追求したものでしょう。

私が取り上げたいのは、次の部分です。
通常、右手用のはさみを左手で使う場合、刃の内側を意識して力を入れる必要がありますが、「スコッチR キッズシザーズ」は、常に刃の内側に力がかかっているため、左手でも切りやすくなっています。
というものです。


従来の学童用のハサミの多くは、右手の自然な動きに対応した「右手用」と、「右手用」を鏡に写したような逆の形状を持つ、左手の自然な動きに対応した「左手用」両方を用意し、しかも同一価格で販売していました。

レイメイ、プラス、クツワ、コクヨ等々、どことも同じです。


それに対し、本製品では、「左手用」を用意するのをやめ、「右手用」一本で、従来品に比べて《左手でも切りやすくなっ》た製品にした、ということです。

しかしこれは、製品の台紙にも印刷されているように、《左ききでも切れる》というだけの製品です。

左手・左利きの子供が「切りやすい」わけではないのです。


●このハサミの問題点(左利きへの落とし穴

この辺をはっきりしておかないと大変なことになります。

「これはいい製品が出た、左利きの子供をいちいち特別扱いしなくてもいい」と歓迎する人が現れるだろう、という危険性です。

しかし、以前からハサミに関して言い続けていますように、「切れる」と「切りやすい」は違います!
(「左手でも(従来品より)切りやすい」ではなく、「左手切りやすい」の意味です!)

「切れる」は、単なる可能性です。
「切りやすい」は、優位性です。

道具というものは、とにかく使えればよいのではありません。
道具が持つ機能を十全に発揮できること、その結果として使用者が心地よく使えることが肝心です。


「左手用」と「右手用」ハサミ違い

「左手用」と「右手用」のハサミではどこがどう違うのか、と言いますと―

誰でも気が付くのは、持ち手の部分です。

持ち手が左右対称なら両用ハサミだ、と考える人もいますが、それは違います。

それだけではないのです。
もっと重要な「切る」という機能に関連した違いがあります。


「左手用」と「右手用」では、歯のかみ合わせが違うのです。

そのため、ハサミをごく自然に左手で持つと右側から切る位置を見る形になります。
右手に持つと逆に、左側から見る形になります。

左手用のハサミは、この時、上の刃は左側にあります。
当然、切る位置を目で確認できます。

右手用のハサミは、上の刃が右側にあります。
右手で持っているときは、切る位置を目で確認できます。


では、この右手用を左手で持つとどうなるでしょうか?

上の刃は右側にあるため、右側からでは切る位置を確認できません。

見ようとすると、ハサミを右方向に倒すか、首を左側に寄せて覗き込むようにするしかありません。
非常に不自然な姿勢を要求されます。


実際には、最近のハサミは、刃のかみ合わせがしっかりしているので、逆の手でも結構切れてしまいます

昔のようにガタつきの大きなハサミでは、全く切れませんでした。
そのため悩みのタネになったものでした。

その点では、ハサミが切れないで悩むという、実感を持たない左利きの人もいるかもしれません。

その場合でも、この切る位置を視認できるかどうかという問題は残ります。


「左ききでも切れる」右手用ハサミの利点

「左ききでも切れる」右手用ハサミという発想―これには、左手用を別途用意しなくても良い、という利便性があります。

メーカーは、左右二種類の性質の異なる製品を作る必要がなく、製造の負担が減ります
男女別?に色違いを用意するだけで良いのです。

メーカーも販売者も、在庫を減らせます
販売者は、売り場の専有面積を減らせます

購入者は、左手用をまちがって買う危険性がなくなります
左手用の価値の理解が不十分な購入者には、考える余地がないので品選びが楽になります

右手用を左手で使っていた人も、悩む必要がありません

確かに、多くの利点があるように思えます。


子供に合った道具を選んでこそ、子供の幸福につながる

しかし、これで本当に、左手で使う「左利き」の子供に都合の良い製品と言えるでしょうか。

私はやはり違うと思うのです。

先ほども書きましたように、「使える」製品なら良い、というわけにはいきません。
本当に「使いやすい」製品であるかどうかが大事なのではないでしょうか?

どうせ大きくなるからと、ブカブカの靴を履かせていては、運動会で一等賞は取れません。
子供は悔しい思いをするでしょう。
あるいは、自分は足が遅いと自信を失くすかもしれません。

その子に合った道具というものがあります。
右利きの子供には右利きの子供のためのものを、左利きの子供には左利きの子供のためのものを、というように。

子供に合った道具を与えて、その子の持つ能力を最大限に引き出してやることが、真の優しさ、親の愛情というものでしょう。

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※本稿は、ココログ版『レフティやすおのお茶でっせ』より
「左手・左利きに優しくない!?学童用はさみ「スコッチ キッズシザーズ」住友スリーエム」を転載したものです。
(この記事へのコメント・トラックバックは、転載元『お茶でっせ』のほうにお願い致します。ただし承認制になっていますので、ただちに反映されません。ご了承ください。)
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