とっておきのカルヴァドス

フランクとキャトリーヌの結婚式から丸々３日間

飲んで　歌って　食べて　踊って

そのうえキャティーのパパのパフォーマンスまで飛び出して

長かった結婚のお祝い騒ぎも

辺りが暗くなり始め少し肌寒くなってきて

一緒に飲んで騒いだ人達も

家路に向かい

残った私たちも家の中に入り

ダイニングの椅子で座り込んで

３日間の宴を回想するかのようにみんなぐったり

フランクとキャティーがボンニュイと挨拶して

キャティーのママも「じゃあ私たちも」と　言って立ち上がった所に

キャティのパパが「わしはもう少しここに居るよ　なあ　マサ」と

そして　マダムはちょっと微笑みながらダイニングを後にしました

残った私にムッシュがちょっと待っていてくれと地下のキャーヴ（酒蔵）へ

戻ってきたムッシュが大事そうに抱えてきたボトルは

長い間ねていた証に白く埃にまみれ

ラベルもボロボロになった

キャルヴァドス

ムッシュがそのラベルに記された年号には確か１９２？年代の古酒！

キャティが結婚するまでは開けまいと

誓っていたキャルヴァドスだったらしく

自然に蒸発したのかボトルの肩ほどに減っていたキャルヴァの栓を抜き

グラスに注いでくれたキャルヴァは濃い琥珀色でトロッとした

液体で普段飲んでいたキャルヴァとはまるで別物と判りました

いつも鼻を抜けるようなツンとしたキャルバではなく

まったりとしたそれはもう何とも穏やかな口当たりにカンゲキしました

ムッシュはそれからしばらくの間

キャティが小さい頃の話からフランクと一緒になるまでの

いろいろな思い出話をしてくれました

そんなムッシュの赤く充血した目には

愛娘を嫁に出す父親の思いが感じられました

そんな喜びと寂しさの気持ちを

あの仮装パフォーマンスで表していたのでしょう


翌朝　プチデジュネをとダイニングへ

私とムッシュが最初にテーブルに着いて

すぐ後にマダムが来て

マダム：あんた達いったい何時まで飲んでたの？

ムッシュ：ん～１時間位かな？

マダムは微笑み首を横に振りながら天井を見上げ

マダム：まったく　そんなに何を話す事があったの？

とあきれた様子

ムッシュ：言葉は足りなかったけれど　心は通じたよ

と　私にウインクしながら言ったムッシュには

昨夜のセンチメンタルな面影はありませんでした

フランス人の父親と日本人のキュイジニエが

とっておきのキャルヴァドスを飲んだ思い出でした

ランボー参上

日も暮れた頃まだつつ”くガーデンパーティー

キャティーのパパが

パパ：俺ぁ～一人　ベトナムで～　戦って～　来たんだ～

　　　ランボー様を　馬鹿にすんなよ～

と

さすがノルマンディー

パパの持っている錆びた銃と大砲の薬きょうは

第二次世界大戦の物

ノルマンディー上陸作戦で有名な土地柄なのか

結構こんなものがあったり

戦争博物館などがカルヴァドスのあちらこちらで

見かけましたのでキャティーのパパが持っていても不思議ではないきがしました

それにしてもパパが

お酒に飲まれる

ランボー者でなくてほっとしました

ポパイとオリーブ？

化粧を終え水夫の格好をしたキャティーのパパは

さながらポパイになったつもり？

ブルータスに捕まっていた

オリーヴを助けて

二人でダンス

ちょっとお腹の出たポパイと

ちょっと太め（失礼）のオリーヴのダンスでした

いろいろと仮装するキャティーのパパは

その仮装に合わせて自分でストーリーを考え

そのキャラクターになってしゃべるのですが

なにせ酔っ払っているので

ただでさえ聞きにくい

ノルマンディー訛りのフランス語がさらに

聞き取りにくかったのです

化粧直し

キャティーのパパの顔に

マダム達が顔に化粧をほどこされ

なすがまま言うがままになり

頬紅を塗られ

鼻の頭に口紅で赤く塗られピエロみたいになっても

本人もけっこう喜んでおりました

そして　娘のキャティーは

あきれてはいたものの

ニコニコして

キャティー：ママ　もうちょっと濃く塗らないとすぐとれるわよー

などと言ってあおっていました。

対戦相手

お～～～～～～～と

対戦相手はマスクマン

なんと頭にはオレンジが入っております

この時点で皆大うけ大笑い

パパと言っても

本人はいたって真面目に

”わしはパパではない”とかいっておりました

は～やれやれ

アントニオ パーパー

ムラサキ色のガウンをはおり

さっそうと登場したのは

アントニオ　ぱぱ？

本人かなり気にいっているようです

どこまで行くのですかー？

アリババ?アラブのお金持ち？

キャティのパパが

家に入ってしばらくすると

なんとアリババ？アラブのお金持ち？に変身

この時点でかなり酔っ払っているのに

元気元気おそろしやノルマン

また皆があおるものですから

本人もかなりテンション高め

アリババならぬ

あり～ＰＡＰＡになっていました

バールのお知らせ３月１８日

シェフ：おいジュニア　お～いジュニア　起きろ皆さんが見てるぞー

ジュニア：んっ～～～～～～～～！

シェフ：おい　何酔っ払ってんだよ

ジュニア：タギョル　トア～

シェフ：タギョル？　　　　　　　　【うるさい黙れ（フランス語）】

ジュニア：タァ～ケ～　　　　　　　　【ナゴヤ弁　田分け】

シェフ：タァ～ケ～？

ジュニア：ウッセー　ダ～～ラ！　　　　【うるさい　バカ（石川弁）】

シェフ：ウッセー　ダ～～ラ？

ジュニア：バ～ル～　　　　　　　　【バール】　　

シェフ：ジュニアー、飲みすぎだよー

ジュニア：ッテンダー　バ～ル～　　

シェフ：何いってんだよ　馬鹿やろう！？　

　　　　はい　はい

　　　　いつもジュニアの事いじめているからなぁー

　　　　すまないねぇ

ジュニア：カッテンノー　バ～ル～

シェフ：わかっているのか　馬鹿やろう　って　

　　　　はい　はい
　　
　　　　そうそう　

　　　　電信柱が高いのも　

　　　　郵便ポストが赤いのも

　　　　み～～～んな

　　　　私が悪いんですよ

　　　　だから

　　　　機嫌直してよ～

ジュニア：ちゃうがなー　バールの事やんけぇー　　（なんで　関西弁？）

シェフ：あっ　忘れてたー　

　　　　皆様すみません　今月のバールは３月１８日土曜日　夜８時４５分から
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　朝１時か２時まで

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やります

フランクのママは水もしたたるいい女

ガーデニングパーティーも真っ盛り

酔った勢いと言うのは恐ろしいもので

だれが用意したのか

庭の隅に水のはったポリ箱一つ

酔っ払い１：ははははははは

酔っ払い２：セッパ　ヴレー

酔っ払い３：アーボン

酔っ払い４：オララー

といっているうちに

ママフランクが酔っ払い達にかつがれ

水の張ったポリ箱に

水も滴るいい女になってしまいました

そして

つぎつぎに

洗礼を受ける者達がおり

祭りは絶好調

まるでフットボール（フランスではサッカーよりもこちらの言い方になります）

のゴールのようですね

審判もいるし（たまたま）

まさか

披露宴二日目も　朝から晩まで大騒ぎで

またもや午前様そして

翌日の朝

フラフラの頭に濃い目のキャフェが滲みてしみて

さすがに私の胃袋にも隙間がなく

プチデジュネのタルティーヌはパス

一息ついて皆で会場の掃除

今回はテーブルも片付けて飾りも取り外し

ほっとしました

そしてキャティの実家に戻り

ソファで何時の列車でパリまで帰ろうかと考えていると

表の方から

フランク：マサ～～エデ　ヌゥー　シットプレ
　　　　　（まさ　手を貸してくれえ～）と

私：ウイ～～　　うっぷ　うい～～～　　ジャリーヴ（今いくよ）

おい

な


な

な

なんと庭に

て

て

て

テーブルを出しているではないですか

まさか　まさか　えっ～～～～～～うそっ～～～～～

三日目も飲むのかよ～～

と　すでに　私の手にはアペリティフが

私：・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

声が出ない


え～～～い　

こうなりゃとことん飲んでやる

食ってやる～

こちとら江戸っ子でぇい

ワインでもキャルバドスでも持って来いてんだ

だてに三十路を越えて

仏蘭西の田舎まで来たんじゃあないぞ～～と

天気よーし

ワインよーし

会話よーし

気持ちよーし

頭？？？？？？－－－し

どっちでショー

食事もパフォーマンスも一段落

新郎新婦が舞台に上がり

背中を向け合い

フランクのプラカードは『Ｅｌｌｅ 』彼女　『Ｍｏｉ』私

キャトリーヌのプラカードは『Ｉｌｌｅ』彼　と『Ｍｏｉ』私


と書いてあるプラカ－ドを持って

会場のみんなの質問にカードで答えるのです

例えば

質問：どっちの方が良くしゃべりますか？とすると

キャティ：【彼】　　　フランク：【彼女】　　　　

質問：どっちの方が優しい？

キャティ：【ワタシ】　　　フランク：【ワタシ】

質問：どっちの方がすぐ怒る？

キャティ：【彼】　　　フランク：【彼女】

などと質問に答えるのですが二人の意外な答えに

会場には笑いと驚きが溢れます！



私：お～いフランクとキャティー　

　　いまは　どっちのほうがエライんだー？

キャトリーヌのパパはパフォマーpart-1

披露宴２日目　

変なオジサマ達のバトンガールの演技も終わって

ホッとしたのもつかの間

会場に赤ちゃん声の曲が流れ

出てきたムッシュは

ななななんと

キャティのパパ

ヒヤーッ

みんな大笑い

でも本人は真剣な面持ち

それがなお笑いに拍車をかけておりました

こんなパフォーマンス日本の父親出来ますかー

キャティのパパのキャラクターは

穏やかで優しい口調でいいおじいちゃんのイメージだったので

とってもびっくりしました

思い違い

二日目に会場の片付けが一段落したなー　と　ホットした頃

私の所にムッシュが

Ｍｒ：テャン　マサ　ナニノム？

私：ナン　ポルト（なんでも）

Ｍｒ：ヴォアラ　（ホレ　または　ホラ　または　ハイ）

私：メ　メ　メシー

と　なんとリカール（アニスのお酒で水で割ると白く濁るくせのある食前酒）

えっ　なんで？

さっきプチデジュネ食べたばっかりじゃ

まわりの人達も　　飲んでるー

そして掃除をした会場のテーブルに新しい紙を敷き

ナイフ　フォークをセットしているではないですか

そして女性陣が前菜をテーブルに並べ始め

そして　デジュネが始まりワインがふるまわれ

また披露宴のつつ”きが始まりました

パフォーマンスで親戚のおっさん（方）やアンちゃん（お兄様）達が

バトンガールのかっこで会場は笑いの渦

前夜のアルコールが三分の一も抜けていないのに加え

寝不足の上にアルコールを流し込み

笑わせてくれるものだから

一気にクニャクニャ　フニャラ　フニャラ　ホヘ　ホヘ　フゥー

といった感じでノルマンディー万歳

披露宴が一日で終わったと思い違い

男性がバトンガールに見えるのは見間違い？

それとも　飲みすぎ？

春薫るサクラシフォン

明かりを点けましょ調理場に

型から抜きましょ

サクラシフォン

お待たせしました

レアァールの

今日から売ります

サクラシフォン


と

言う訳で本日より　サクラの花が散るまでの

季節商品第2弾

サクラシフォンのご紹介

普通のシフォンと違って

ふわ～りとしているのに

まるでム～スのように

しっとりなめらか　

で

サクラの香りが

ふわ～と

なんといったらいいか　この食感

言葉に出来ない

なんか”春”が

すぐそこまで来てますよ

と

感じられる

心和む味わいです

写真のサクラシフォンで　￥２６０円(税込）です

寸胴鍋の思い出

私がノルマンディーに居た頃

まだフランス語もままならない時

休憩時間にレストランの敷地内を歩いていると

調理場ではシェフパトロンのムッシュ　スカヴィネール氏が

自分とマダムの昼食を作っていました

そこを通りかかった私を見つけムッシュが

シェフ：マサ　ムカイノ　シコミバカラ　フォンドヴォー　ヲ　モッテキテクレナイカ　ナントカカントカ　シット　プレ

私：ウイ（フォンドヴォーと言ったことと持って来てくれは解ったぞー）

さっそく向かいの仕込み場へ

そこにあったフォンドヴォーの入った鍋は

二人ががりで持たなければ持てないほど大きな寸胴鍋！

持って行かなければという責任感が！

腰を痛めるかも　と　気にしながらも

息を大きく吸って

はっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヨチ
　

ヨチ
　

ヨチ



なんとかムッシュのいる調理場へ

ムッシュが私がフォンドヴォーの入った寸胴を持ってくるのを見て

あわてて

”マサ　イシ　ラ　レス　レス　イシ　ラ”
（まさ置け　置け）

と

言って持っていたスープスプーンで３杯すくって

作りかけのソースに混ぜて

ムッシュ：メルシーマサ　フォンドヴォーの鍋は置いておいていいぞ

と一言

私：ハー　ハー　ウ　ハー　イ　ハー　ハー

そして仕上がったソースを料理にかけて

行ってしまいました

なんともフランス語が聞き取れなかったがために

寸胴鍋からスプーン３杯の

フォンドヴォーの湯気の様に

私の心の中で

思い出となって

蘇ります。