~バッハ:フルート・ソナタ全集~
バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ
ロ短調BWV1030
変ホ長調BWM1031
イ長調BWV1032
ト短調BWV1020
フルートと通奏低音のためのソナタ
ホ短調BWV1034
ハ長調BWV1033
ホ長調BWV1035
無伴奏フルート・ソナタ
イ短調BWV1013
フルート:ジャン=ピエール・ランパル
チェンバロ:ロベール・ヴェイロン=ラクロワ
LP:RVC REL‐1014~15
このLPレコードは、フランスのフルートの名手ジャン=ピエール・ランパル(1922年―2000年)と同じくフランスのチェンバロの名手ロベール・ヴェイロン=ラクロワ(1922年―1991年)の2人によるバッハのフルートソナタ全集である。もうこれだけ聴くと、レコードを掛ける前から匂い立つような音がスピーカーから流れ出すようでもある。ただ、バッハ:フルート・ソナタ全集は、バロック時代の作品であるので、時代背景も多少頭に入れて聴いた方がより効果的であろう。このLPレコードのライナーノートの著者の浅里公三氏によると「バッハのフルートソナタは、①2つのフルートと通奏低音のためのソナタ(トリオソナタ)②一つのフルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ③一つのフルートと通奏低音のためのソナタ(ソロソナタ)④一つのフルートだけのソナタ(無伴奏ソナタ)」の4つのタイプに分けることができるという。さらにここに収められた8曲のうち4曲についてバッハが作曲したという証拠が見当たらないともいう。現在の研究結果は果たしてどうなのであろうか。しかし、浅里氏が書いているように「たとえバッハの作でないとしても、これらの曲は少しもその魅力を失うものではない」のである。ジャン=ピエール・ランパルは、フランス、マルセイユに生まれ、1943年にパリ音楽院に入学し、わずか5ヶ月でプルミエ・プリを得て卒業。1946年からはヴィシー歌劇場管弦楽団のメンバーとなり、1947年「ジュネーブ国際コンクール」で優勝しソロで活動を開始。1956年からパリ・オペラ座管弦楽団の首席奏者となる。1962年に退団後はフランス最高のフルート奏者として世界各地で演奏活動を行う。20世紀の最も偉大なフルート奏者と評価される。ランパルのフルートの調べは、シルクの布を連想するような、類稀なしなやかさと光沢に光り輝いている。緩やかなメロディーが時を越えてリスナーに直接話しかけてくるような錯覚にすら陥る。ヴェイロン=ラクロワのチェンバロは、そんなランパルのフルートに寄り添うように典雅な響きを聴かせてくれており、二人の息はピタリと合い、そのことがこのLPレコードの価値を何倍にも高めている。ランパルは、当時、チェロのカザルス、ギターのセゴビアと比肩されるべき存在として高く評価されていたが、日本でもランパルの評価は圧倒的で、ランパルもそんな日本の聴衆を高く評価し、度々来日し、その美しいフルートの音色を披露した。(LPC)