マックいのまたのMalt Whisky Distillery

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ウィスキーのモノ作り

2013-10-22 18:21:48 | グルメ

以前「笛吹郷1983」という珍しいウィスキーを取り上げた
ことがありますが、その時はまだ開けていませんでした。

しかし、もちろんその後開封して楽しみましたので、いつもの
テイスティング・ノートとは別の切り口で書いてみます。

usuikyo1983.jpg

透明瓶に詰められたウィスキーをみて、シェリー樽熟成だなと
は思いました。シェリー熟成タイプは私の好みのタイプから
外れますので、目利きができるほど分かりません。しかし
ながら、きっと恐らくは「いい酒」だろうと思います。それは
”よくシェリーが出ている”ウィスキーに共通する発酵臭が
あったからです。

発酵臭と書くと、なにか腐ったような腐敗という状態をイメー
ジしがちですけれども、ここでいう発酵とはもちろん良い意味
でありまして、納豆に似た濡れたワラの香りです。

イメージ的には田舎によくある土蔵の土壁の匂いに近いですが、
そこまで稲藁は強くなく、夏から秋にかけて頭を垂れる稲穂とか、
炊き立ての新米のような草臭く若干甘く漬物が漬かったような
軽い醤油蔵臭です。メルシャンの軽井沢モルトがお好きな方なら
説明不要でしょう。

そのあとにシェリーの甘み、紅茶の香り、土くささがあって、
熟成年数を感じさせました。

さて、閑話休題。

今度はウィスキーを作る話ですが、ものの本やウィスキーメーカ
の方に聞くと、ウィスキーの作り方は何処でもほぼ同じ話が聞け
ます。麦を発芽させて麦芽を作り、砕いて発酵させて蒸留する。
その後樽に詰めてウェアハウスで熟成させるというもので、もう
少し興味をもつと、麦の種類とか、ピート濃度とか、酵母の種類
とか、蒸溜釜の形とか、樽の種類とかです。

しかし、その後になると「あとは自然にまかせて熟成させるだけ」
と天命を待つような話になってしまい、年月を経た後の原酒を
評して”美味しい”というだけのことになってしまうのです。

この”美味しい”にも明確な差やバリエーションがあるのが、
ウィスキーの世界で、このひとつひとつの樽や熟成の違いを
楽しむのがシングルカスク愛好というマニアの世界が確立されて
おりますが、よく考えれば「同じ日に仕込んだ原酒が、それぞれ
違う樽に詰められて、経年熟成の後に違う味に仕上がった」と
いうことがあります。これってなんで?

一般的に、これは樽ごとの個性の違いと説明されますけれども、
現代のウィスキー製造の現場では、熟成庫の違いや、同じ熟成
庫の内でも樽がおかれた場所によっても違うことが判明しており、
もっと極端な例では、樽ごとにひとつひとつ熟成スピードが
異なることも判明しています。

これがいわゆるシングルモルト・ウィスキーの業界でいう「ウィ
スキー蒸溜所ごとの個性」で説明するには大雑把すぎて不適当と
いうことがありそうです。

つまり、結論的には、あるウィスキー蒸溜所だからより美味しい
とか、別のウィスキー蒸溜所だからより美味しくない、という
こともありますが、厳格な個性のレベルでは、その樽の原酒が
より美味しいかどうかという評価になるということです。

そういう視点を持って考えると、私は普段シェリー熟成のウィ
スキーは好まないのに、今回の笛吹郷1983はもう既に半分
飲んでしまいました。つまりは、ウィスキーメーカとか、ブラ
ンドとか、熟成年数とかは2次的な要素に過ぎない、という話
です(笑)。

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