マックいのまたのMalt Whisky Distillery

モルト好きで株式公開/上場(IPO)の経営戦略,マーケティング,M&Aを支援する経営コンサルタントのプライベートブログ

ウィスキーのモノ作り 3

2013-10-24 16:09:23 | グルメ

前々回は樽の話、前回はブランド?の話、今回はブレンドの話
です。

ウィスキーは、同じ仕込みの原酒であっても、熟成庫の違いや、
同じ熟成庫の内でも樽がおかれた場所によっても違い、挙句の
果てには、樽ごとにひとつひとつ熟成スピードが違って味が
変わります。樽ごとに味が違うため、傑作も駄作も生まれます。

そのためシングルカスクで楽しむのに向いたものと、ブレンド
用に向いたものがある、ということでした。これは言い換えれ
ば、樽の個性を評価するか、様々な原酒をブレンドして総合的
な美味しさを評価するか、という大きな二つの方向性が認め
られます。

これを個性からバランスの順へポジショニングすると、シングル
カスク(単一樽)、シングルモルト(単一蒸溜所)、ピュアモルト
(複数蒸溜所)、ブレンデッド(グレーンウィスキーも混ぜる)
という順番になります。

これまで左側の2つの幅について触れてきたわけですが、今回は
これらの間に存在する、いわば中間製品のようなバッテッド・
モルトの話です。

酒は所詮嗜好品ですから、誰が何と言おうと俺にはこれが一番
旨い、というのが基本ラインですけれども、他方で社会や市場
で認められた有名銘柄という指標もあります。

右側2つのピュアモルトやブレンデッド・ウィスキーを作る場合、
レシピにしたがって複数種類の原酒を混ぜ合わせて作ります。
そのレシピの素晴らしいものがシーバス・リーガルとか、バラン
タインとかジョニー・ウォーカーとかというわけです。

しかしこのような有名銘柄を作る作業は、当然試験管のような
スケールではなく、桶に樽ごと入れて混ぜ合わせるようなボ
リュームですから、ひとつずつの樽から何%取り出して・・・
では間に合いません。

そこで均一な味の品質保証(裏返せば、原酒樽の個性をバランス
させておく)のためにバッテッド・モルトという中間製品(料理
でいう仕込みのようなもの)を、あらかじめブレンドして大量に
作っておきます。製品を製造するときには、これをレシピに従っ
て混ぜ合わせればよいわけです。

peaty&solty.jpg

さて、ここにニッカ・ウヰスキーのキーモルト・ピーティ&ソル
ティという製品があります。これがいわば今回の中間製品です。

元々キーモルトのシリーズは、家庭で気軽にブレンドを楽しむ
ためのブレンド用原酒という位置づけで、発売当初はシングル
カスク(!)だったのですが、途中からバッテッド・モルトになり
ました。

これが飲めるお店に行くと「麦芽の感想時に用いるピート(草炭)
の香りが強い「ヘビーピート麦芽」を使用し、さまざまなタイプ
の樽で熟成させた原酒をバッティング(混和)しました。」とあり、

続けて「nose(香り):ピート由来のスモーキーさ、燻製や潮の
ような香りが豊かに広がり、とても個性的。底に感じられる甘い
香り、樽熟成香、オレンジのような果実香。
plate(味わい):重厚な味わい、果実と樽の甘さにゆっくりとか
すかな塩味が加わる。
finish(余韻):やや土を伴った長い余韻。」とあります。

飲んでみると、確かにだいたいこのような味なのですが、ここに
書かれているうち、一部が強かったり、あるいはある部分は若干
違うような気がする、ということがあります。

これは結局、このテイスティング・ノートを書いたときのボト
ルがこういうものだったということで、私が飲んだときのもの
とは異なりますから、当然インプレッションも変わるということ
だと思います。

何がいいたいかといえば、先に書いた有名銘柄は、こういった
中間原酒を混ぜ合わせて製造されていますので、去年飲んだ
バランタインと今飲んでいるバランタインは味が違うことが
ありうるということです。

だから、ゴールドとかプラチナとか上級品が色々出ていますが、
そのときのその味はその時だけのもの、ご縁ということでしょう。

もしあるとき、最高に美味しいというものに当たることがあっ
たら、また次回同じ銘柄を頼もうなどとメーカを全幅信頼する
のではなく、同じ条件のボトルをオトナ買いすることが、唯一
絶対の正解ということになります。

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