如何に多く財を費やしても、唐辛子を甘くすることはできないけれども、無限の砂糖をもってその辛みを消すことは出来る。また平生、苦り切ってやかましく言っている人でも、金のためにはすぐ甘くなるのは世間普通のことで、政治界などによく見る例である。
・・・・・・・金はそれ自身に善悪を判別するの力はない。善人がこれを持てば、善くなる。悪人がこれを持てば、悪くなる。つまり、所有者の人格如何によって、善ともなり悪ともなる。 渋沢栄一
私が巨万の富を蓄へたとか、立派な家を建てたとか、土地家屋を売買して金を儲けて居るとか、種々な噂があるやうだが、皆嘘だ。
巨万の富を蓄へたなら、第一こんな穢い家に入って居はしない。土地家屋などはどんな手続きで買ふものか、それさへ知らない。此家だって自分の家では無い。借家である。月々家賃を払って居るのである。世間の噂と云ふものは無責任なものだと思ふ。 夏目漱石
上記の二人をはじめ、小説家や評論家、詩人など、実にたくさんの人が登場する。それを幅広く拾い集め、何の解説もせずに紹介しているので、著者はないい。左右社。面白い。
それにしても。
偉大な作家先生。お金を前にするとみんな一気に光を失い、ただのひとだな。
ちょっとガッカリのような、親近感がわいたような・・・・。