旅の途中で

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宮部みゆきの世界

2005年08月15日 18時13分02秒 | 
宮部みゆきさん著、「孤宿の人(上・下)」を読み終わった。
そこで、宮部さんについてつらつらと語ってみよう・・・

●私が今一番好きな日本の作家さんと言えば、なんといっても宮部みゆきさん。
一般的に一番有名なのは、カードローンが引き起こす殺人を書いた「火車」かな。
そういう私も、一番最初に読んだのはこの本だった。
読んでみようと思った理由は忘れた。ただ、題名だけは知っていたのと、おもしろいサスペンスだということを聞いて、サスペンス・推理物が大好きな私としては、興味本位で読んでみる気になったんだと思う。

そしてそれがこの人との運命の(?)出会いになった・・・
その後はもうとり憑かれたように、文庫化されている現代サスペンス物を買いあさって読み漁った(なんでハードカバーを買わないかというと、お値段と重さの問題です(笑))。
「蒲生低事件」「竜は眠る」「理由」「レベル7」「魔術はささやく」「東京下町殺人慕情」「パーフェクト・ブルー」「スナーク狩り」「鳩笛草」「クロス・ファイア」「今夜は眠れない」etc・・・に加えて、短編集もたくさん出ている。

●宮部さんは時代物も書く。大半がミステリー仕立てになっている。ただ、私は今まで時代物なんて読んだことがなかったので、なかなか手が出ず、その世界に踏み入れたのはつい最近だ。
でも、いいかげん現代物を読み尽くした末にとうとう手を出して、結局時代物も読み漁ることになる。
で、そのうち文庫化されるのを待ってられなくて、結局ハードカバーにも手を出してしまった(笑)

今回読んだ「孤宿の人」は時代物だ。舞台は江戸ではなく、江戸から流罪人を預かることになってしまった、ある田舎の小さな藩。
その流罪人をめぐって、主人公の宇佐と「ほう」という少女の身に起こる出来事を描いている。

やさしくてせつなくて、悲しいけれど暖かい物語だった。
宮部さんの作品には必ずといっていいほど、現代社会のひずみやゆがみが組み込まれているが、それは時代物でも例外ではない。
そのひずみに翻弄される登場人物たちが愛おしい。
とても宮部さんらしい物語だ。
そう、宮部さんの作品を読んでいくと、宮部さん「らしさ」にいろいろと気がつくことになる。。

●現代物にしても、時代物にしても、ファンタジーにしても、この人の本には常に一本の線が通っている。「弱い人に対するやさしさ」だ。
新しい本を読み始めてしばらくすると、必ずこの線に触れる。そうすると後は安心して読んでいける。すべての本がハッピーエンドなわけじゃない。扱う題材が題材なだけに、不幸な結果に終わる場合も多い。
けれどもこの一本の線を感じるだけで、救われたような気持ちになる。
殺人犯になってしまった(弱い人)にも誠実に向き合う姿勢に作者の誠実さを感じて、安心するのかもしれない。「火車」や「クロスファイア」「理由」がこれに当てはまるかな。

●それと「少年」。
これは作品によるけれども、宮部さんは少年を主人公にして書いてる本が多い。
コミカルな「今夜は眠れない」や「ステップ・ファザー・ステップ」。超能力が出てきてかなりハードでシビアな「竜は眠る」。その他にも「魔術はささやく」や「東京下町殺人慕情」などなど。
彼女の描く少年は生き生きとして魅力的だ。そして小さな存在の少年が、「いつの間にか」大人達の犯罪を暴いていくというのがおもしろい。
宮部さんらしく、相手は大企業だったりしてスケールが大きいのがさらに痛快なんだよね。

●そしてこれが一番読者をひきつけるんだろうけど、すごい「ストーリーテラー」なところ。
特にさすがー!と思うのが、くもの巣のような構成になっている物語だ。
普通、一人の主人公の視点から見ていくのが多いけれど、宮部さんはいろんな人物の視点から見ていく。なんのつながりもない赤の他人の身に起こった、一見何の関係もない事件が、章を重ねていくうちに、まるでくもの巣の中心に向かっていくように一つの核心へと集まっていく。
最後の最後に、まったく違う事件がたった一つの事件へとつながった時の快感は、かなりくせになることは保証するよ(笑)

語りだすときりがないないので、今日はこの辺で・・・また何か思ったらつらつらと書いていこうっと~

ちょっと