旅の途中で

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ルオー展

2005年09月10日 19時06分24秒 | アート
これはどの画家にも言えることだけど、ルオーは生で見るに限る・・・
ルオーの独特な黒い縁取りは、テレビで見るとちょっと印象がきつくて、そればかり目立ってしまうので、あまり良いイメージがなかった。

ところが今回、ルオーの作品をまとめて生で見ると、彼の黒はとてもひかえめでやさしいのだということが、よくわかった。

私は自分の作品には黒は使わない。
これはまあ主義というか、下手に使うと黒ってすごく浮いてしまうのだ。
それに、この自然の中に黒って実はないんだよね。一口に黒髪と言っても、実際に絵に描くと赤や青や緑が見え隠れする。
だから私は黒色のチューブを絞ったことがない。

だけど、ルオーのように黒を扱えたらとても素敵だと思う。
一般的なルオーのイメージは、ステンドグラスのように鮮やかな色を黒で縁取りした絵だろう。
けれども間近で見ると、鮮やかな単色ではなく色を塗り重ねて、にぶい色を作っているのがわかる。それが、黒で縁取られると不思議と鮮やかで美しい色彩を放つ。

黒も単なる縁取りではない。人物の陰影になったり、心の動きを表現したりと実に多弁だ。

もうひとつ、ルオーと言えばキリストの絵に代表されるように、宗教画家というイメージが強いかもしれない。
確かにキリストの受難を題材にした連作を描いているし、それが一番有名な作品だろう。

だけど、ルオーは女性や働く人やサーカスの団員といった、地道に生活している人達も暖かい目で描いている。
「小さな女曲馬師」や「正面を向いた道化師」は、その題名の通りサーカスの団員を描いているが、彼らに対する視線がとても優しい。その優しさが画面からあふれ出ているから、いつのまにか見ているこちらも、ルオーの視点で見ている。

そしてここでも、黒が暖かくモデル達を包んでいる・・・

もちろんルオーだけではなく、印象的に黒を使う画家はたくさんいる。マチスやクレーもその仲間だ。彼らの絵も私は大好きだし、本当に色が上手いと思う。
逆にビュッフェの使う黒は、画面を遮断しているようであまり好きじゃない。
私もいつか、黒を扱えるようになるんだろうか・・・