AI (ええ愛・Atelier Ichien)

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モモと時間泥棒 人の心に灯をともす 767より

2011年10月01日 | うたしやきなお話
一円さんの愛読しているメールマガジンより…お福分けさせて…いただきます…m(__)m…
写真は…伊勢志摩のマリカさんの提供です…m(__)m…ありがとう…ございます…m(__)m…


【モモと時間泥棒】№767


坂西輝雄氏の心に響く言葉より…


西ドイツの童話作家、ミヒャエル・エンデの『モモ』という童話があります。


ローマ郊外にある円形劇場の廃墟に、浮浪児の女の子のモモが住みつく。

彼女には、人の話をよく聞いてあげるという特殊な才能が備わっている。

子どもたちは学校帰りにモモのところに寄って、学校でのいやなこと、そのほかさまざまな悩みなどを話しているうちに不思議と気持が開放され、ゆったりした気分で家に帰る。

伝え聞いたおとなたちも集まるようになる。

仕事が終わってぐちをこぼしていくうちに、知らず知らず心の平安を得て家に帰るのです。


ところが、モモのいる町に時間貯蓄銀行ができる。

その銀行員はいわば時間泥棒。

各家庭を訪問して、余っている時間を貯蓄してくださいと言う。


ある日、床屋のフージーさんの所にやってきてこう聞くのです。

「散髪にどのくらい時間をかけていますか」

「一時間かけている」

「それはもったいない。

むだな世間話などしないで、15分で散髪すれば45分節約できる。

家でお母さんの面倒を見るのも時間のむだだからやめて、その時間を時間貯蓄銀行に貯蓄してください」

と言われたフージーさんは、散髪にかけていた時間を短縮し、お母さんも養老院に入れ、余った時間を銀行に入れた。

こうしてフージーさんはありとあらゆるむだな時間を貯蓄した結果、売上も伸びて金持ちになるが、せかせかして怒りっぽくなってしまう。


町の他のおとなたちや子どもたちにも、時間泥棒が働きかける。

やがて町中のだれもモモのところにこなくなってしまい、町には落ち着きがなくなってしまう。


そこで時間泥棒とモモとの間で、「時間争奪戦」が始まる。

壮絶な戦闘の結果、最後にモモが勝って、町にゆとりと心の平安がもどる、というまことに象徴的な童話です。

『今、こころの時代に』(株)タニサケ小冊子より



母親が、子どもに対して一番多く言う言葉は、「早くしなさい」だそうだ。

「早く食べなさい」、「早く支度しなさい」、「早く寝なさい」…


ことほどさように、現代は「早く」が重要な価値観となっている。

確かに、早くすることによって得してきたことは多くある。

しかし、その反面、我々は大事なことを捨ててきてしまったのかもしれない。


「人一字識(し)らずして而(しか)も詩意多く」という、“酔古堂剣掃”の中の一節がある。

安岡正篤師はこれを、人間は一字を知らなくても、つまり文字の教養がなくても、その人自体詩人的である。

「詩意多く」とは文字なんか知らんでも、いわんや学校なんか出ないでも、文芸の本なんか読まんでも、天稟(てんぴん)というか、人柄そのものが詩的である、いわゆるポエティカルである、あるいは芸術的である、と解説する。


この詩的であり、芸術的である人は、「早くしなさい」というせかせかした人とは対極にある。

詩的な人は、弾むような感性と、感動することを忘れない魅力あふれる人。


世俗にまみれて生活していれば、効率化、時間の節約、の大きな流れから脱することは難しい。

しかし、どんなに忙しく毎日を過ごそうと、一日のうちの一時でもいいから、心やすまる、平安の時間があるといい。

騒然とする世間の中にあっても、ポエティカルな気持を忘れない感動の人でありたい。





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