気持ちは分からなくもない。映画「ジョーカー」を観た人の論評だが、見解は様々である。廃油の様なベットリした後味を残す内容であるし、また敢えて解釈を観る側に委ねる様な構成にもなっていると思う。実際、海外では上映中に暴れる人も居る様である。任侠映画を観たらその気になるタイプの人は、自制しながらの鑑賞をお勧めしたい。気になったのは「こんなジョーカーを見たくなかった」と云う意見である。悪役は悪役らしく、正義の味方に明るく陽気に退治されて欲しいと云うのは、アメコミファンであれば当然の反応に思える。日本風に言えば「悪代官の返り血に染まった黄門様を見たくない」だろうし、「ばいきんまんが悪に染まる過程を知りたくない」とも言い得るだろう。娯楽としての映画はそうあるべきである。ただ観た後に心の襞に棘が刺さった様な作品も有って構わないと思うし、何よりばいきんまんが暗黒面に堕ちる悪趣味な映画を、私は観たいのである。