ab Cuore 

帰国した時ノンポリだった私が見たのは≒無政府状態の日本。
ショック、怒り、希望をこのブログに書きました。

2/25 二卵性双生児、 10話 時は金なり 11話 後始末

2025-02-25 12:53:33 | あほ

2/25 二卵性双生児、 10話 時は金なり



榎本教授から預かった本はプルーストの小説だった。

フランスではあまりに有名で大学時代、授業でもやった話だ。

こんなのをなんで今頃教授は読もうとしているのだろうと虹子は思った。

それともこれを訳したい?

訳本を探してみると、すでにあった。


虹子はその小説を読み始めた。

一度目、虹子はジグザグに読んだ。

超スピードアップにして読んだ。


虹子はあまり好きではなかった。

ナルシストなのは作者なんじゃない?と思いながら読んだ。

授業では全編をやらず、有名ではない、あまり話題にならなかったところを

主にやった。

それに授業では好きも嫌いもなかった。


小説なんてそんなもんだと虹子は思った。

見た、聞いた、からテーマを選んで展開することもできるし、

自分の追及している問題点を視点を変えて展開するのもひとつの手だ。


虹子は宗太のことを考えた。


宗太ははっきり言わなかったけど、何か小説を書こうとしていると言ったと思う。

宗太は新聞や雑誌にコレムを書いているけど一度も虹子は読んだこともない。

父が読んでいるらしいから聞いてみようかと思った。

宗太、また宗太に思いが戻った。

宗太はいっそ、歴史小説でも書いたらいいのにと思った。


歴史に沿えば登場人物とか筋書きは自分で考えることもないし。

宗太に言ってみようかなと思ったけど、

なんか宗太を傷つけるかもしれないとも思った。


虹子は本を置くと、台所に行った。

お湯をわかしていると、宗太が出て来た。

虹子は椅子に座ると大きなため息をついた。

どうした? と宗太が言った。

教授にプルーストの本を読めって言われて読み始めたけど

読んでも読んでも減らなくてと言ってみた。

失われた時を求めてとか言う小説?

そう、私に合わない。

そもそも過ぎ去った時なんか求める発想が気にいらないし。


宗太は吹きだして、虹子らしいねと笑った。

虹子ってロマンチストじゃないからね。

警察官とか検事とかそういう職についたほうがいいんじゃない?


虹子はそれを文字通りに受け止め、人生の方向替えをしたほうがいいかも

とコーヒーの粉にお湯を入れながら考えた。


それから冷蔵庫からジャムを持ってくると

大サジに山盛りのイチゴジヤムをコーヒーのマグカップに入れた。

それからジャムの瓶をすかせて、もうないとポツンと言った。

そして大サジをジャムの便に突っ込むと食べ始めた。

ジャムを食べるのかいと宗太が聞いた。

そう、大好き。

これはブルガリアのジャムでイチゴがたくさん丸ごと入っている。

果実の砂糖煮って果実そのものとは違う良質の菓子になるわ。

フランスにはあるけど、日本はなくもないけどあまりやらない。

宗太は甘いものはあまり好きじゃなかったから

和であれ、洋でありあまり菓子に注意したことがなかった。


私、一週間ほど家に帰るとその晩、虹子は宗太に告げた。

本当はどうしてって宗太は聞きたかった。

でも、あら、そうと言っただけだった。


虹子がいなくなると、宗太は玄関先に行き、予定を立てた。

それから自分の部屋の奥に置いてあった大きな脚立を持ってきた。

天井の一部を扉のように開けると、2階の床に押し込んであった

長い階段をひっぱりだした。

発泡スチロールの大箱を片手に長い階段を登って行くと2階の灯りをつけた。


2階の天井は1階ほど高くなかった。

梁は剥き出しだった。

宗太は窓を開け、ブラインドは閉めたまま換気した。


そして奥の小部屋に行った。

そこには1体の死体があった。

死体はミイラ化していた。

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二卵性双生児  11話 後始末



死体を発泡スチロールの箱に詰めた。

小柄な体はほとんど1箱に収まった。

その箱をもう1個の大きいほうの箱に入れ、隙間を液体のセメントで固定した。


箱はかなりの重量になった。

箱のふたに某社の送り状を貼った。

あて先は書いてなかった。


それを小部屋の押入れの下段においた。

押入れの戸を閉めると、目立たないように戸の縁に接着剤をつけた。

それは強く引っ張れば開くようになっていた。


宗太は死体のあった辺を念入りに掃除し、生ごみ用の袋にあたりのゴミを詰めた。


宗太は2階の他の部屋をチェックし、全文の窓を閉めると長いはしごのような階段を

2階の床に押し込んだ。


そして脚立で1階に降りてきた。

脚立を自分の部屋の奥の掃除用具の入った戸棚にしまった。


それから再び玄関に行くと、下から天井を見上げた。

特に変わった様子はないと思ったけど、

壁にそって下にほうを見たとき、床板に大きな傷をみつけた。

どうも脚立でこすってしまったらしい。

それはどう見ても何かを引きずってできた傷に見えた。


どうするか考えた末に宗太は外出した。

そこから300メートルほど離れたところの駐車場に行くと

車に乗って出かけた。

そこはレンタルしている駐車場だった。


午後宗太は車を自宅の前に止めると、大きな荷物を家の中に入れてから

車を駐車場に置いてきた。


宗太は床を掃除してからカーペットを広げた。

それはドアの開け閉めを邪魔しない程度のフカフカのカーペットだった。

色はこの家に違和感のないマロン・濃い茶だった。

そのカーペットと敷き詰め、縁に固定するための接着剤をつけた。

色がすごくマッチして昔からカーペットがあったような仕上がりだった。


そして階段したのスペースに宗太の部屋にあった古物の頑丈なチェストをおいた。

本箱として使用していたものだ。

その上にやはり骨董品屋で購入した重いクリスタルの花瓶を置いた。


壁に掛ける絵などを探したけど、ここにかけたい絵はなかった。

自分の寝室の押入れを探すと、ヨーロッパで兄が買った小さいサイズの

タピスリーがあった。

自分好みの図ではないけど、あの壁にピッタリのサイズだった。

夕方、宗太は再び車で外出すると、

そのタピスリーをかける金具を見つけてきた。


玄関の印象は大幅に変わった。


虹子がなんて思うかなと、宗太の気持ちはワクワクした。


宗太は自分の部屋の掃除をした。

虹子は一度もこの部屋に入ったことがない。

もし、万一、虹子が入っても差し付けえないように

掃除をしたのだ。

終わっても、虹子の目で部屋を眺めてみた。

そして雑誌や書き散らした紙を散らかしたり、いかにも物書きの部屋らしく

アレンジしたのだった。


虹子は日曜の夜10時過ぎに帰ってきた。


虹子は玄関の変化に宗太が期待した通りの反応を見せた。


虹子は目を輝かせて素敵を連発した。

そしてクリスタルの花瓶に合う花を明日飼ってくるわと言った。


So FAr、 So Good

と宗太は思った。


夜中に宗太は目が覚めた。

廊下を歩く音、虹子?

宗太は思い出した。

生ごみを外に出していなかった。





























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