
2/26 投稿 二卵性双生児、 12話 幸せなコシュマール
宗太は飛び起きた。
でも起き上がってから落ち着け、落ち着けと自分に言った。
それから廊下に出た。
廊下は暗かった。
誰も歩いていなかった。
台所まで行った。
奇妙な臭い、なんの臭い と宗太は臭いを追った。
生ごみのバケツのふたが開いていた。
はて、なんで開いているんだと宗太は思った。
臭いはそれだった。
宗太はバケツにシンクにあった生ごみを追加して袋をしばった。
それを玄関まで持って行った。
そしてドアのすぐ外に置いた。
どうせ持っていくのは俺だ。
台所に戻り手を洗い部屋に戻った。
時間は2時半を回っていた。
ちょうど兄と口論になり、思わず突き飛ばしたら小柄な兄は
思ったより吹っ飛んで、何かに当たった。
兄が崩れ落ちた。
兄が倒れたのを見て宗太はすぐに動けなかった。
でも兄が起きあがらないので見に行った。
兄の後頭部から血が流れ出た。
でも兄はまだ生きていた。
救急車を呼ばないと と思ったけどほっとけと同時に思った。
ちょうど午前2時半ごろだった。
2人は二卵性双生児だった。
並んでもまったく似ていない。
兄は成長したら小柄だった。
宗太の背は家族の誰より伸びた。
兄の成績はいつでも宗太よりずっと良くて
双子のくせにどうしてとよく言われた。
2人は一緒にヨーロッパ旅行をした。
帰国したら兄は英国に留学したいと両親に言い、
簡単に留学させてもらった。
宗太はギリギリの成績で、付属の高校からそのまま大学に行けないで
他の大学を受けた。
大人になればなるほど、その能力の差が顕著になって
宗太は惨めだった。
宗太は 宗太の太は他人の他とつぶやいた。
しかし、社会に出てみると、宗太には誰もが認める商才があって
金勘定に長けていた。
それは両親を喜ばせたけど、余計に馬鹿にもされた。
同じ子供なのにと宗太は悲しかった。
宗太は30半ばに会社を辞めた。
それから子供のころから夢だった小説を書くことにした。
しかし、兄の勉強に必要な金は宗太が出す羽目にどうしてかなっていった。
あの晩のいさかいの原因は金だった。
宗太は2階をそのままにして階下に行った。
そして翌朝見に行って、兄の死は確かなものになった。
宗太はそのまま、購入したばかりの家の2階を閉鎖した。
宗太は金儲けにも長けていたけど、大工仕事にもたけていた。
2階家だったその家は、どう見ても天井の高い平屋になった。
両親には兄さんはブラジルに行ったと報告しておいた。
両親は引越したばかりのこの家の住所を知らなかった。
宗太はあえて郵便局で住所変更もしなかった。
これで親はこの住所はわからない。
兄からも親からも解放されて、宗太は幸せだった。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::
二卵性双生児、 13話 宗太の太は他人の他
宗太はその家で静かに暮らした。
社会から注目を浴びるようなことは避けた。
たまたま玄関前に出たとき虹子に会ったのだ。
虹子に部屋を貸す提案は衝動的で後悔もあった。
しかし、どうせ虹子はじきに出て行くとかいかぶってもいた。
でも虹子はもう3年もいる。
虹子と肉体関係すらもってしまったのに次はこなかった。
これから次があるかわからない。
この家は購入したのだから、移転しても”安全”だと宗太は思った。
移転? 移転したいのか?
宗太は発砲スチロールの箱を2階の押入れに置いてきたことを悔いた。
自分の側に置いて折りを見て捨てにいくべきだった。
もう一度、一連の作業をするのはすごく気が重かった。
俺ってなんでこう馬鹿なんだろう?と宗太は自分をののしった。
夏ごろ、虹子は大学院を止めた。
宗太はそんなことは知らなかった。
それは虹子が毎日外出していたからだ。
あまり虹子の生活に干渉しなかった。
本当はそれほど興味もなかった。
夏休みが終わるころ、虹子は宗太に突然言った。
私、今月でここをでます。
宗太にはショックだった。
なぜか虹子はこのまま、ここで生活し続け、それから同棲も可能だろ
なんて宗太は想像を膨らませていたからだ。
宗太の顔を見て、あ、急なら家賃は来月末まで払うわと言った。
そして宗太の次の言葉も待たず、台所を去ってしまった。
宗太はそのまま台所にじっとして
いいじゃないか、これで付きまとう不安はなくなる
と自身に言った。
まだ2週間ある。
朝宗太は虹子の朝食を用意していた。
目玉焼き2個、ウインナーソーセージ5本、レタスのサラダに
プチトマトを加え、ドレッシングとマヨネーズを横に置いておいた。
そしていつも台所のテーブルに置いてある旧式なトースターに
食パン8枚切を2枚入れておいた。
宗太はとても俺には食いきれないと思ったけど
虹子はいつもペロっと平らげた。
トーストにチーズみたいに厚く切ったバターを乗せ、ジャムをこんもりと
盛っていた。
ジャムは虹子は自分で買っていた。
2枚目のパンをトースターから出す前に虹子は冷蔵庫から
キリのクリームチーズを持ってきた。
それをバターの上に伸ばし、さらにジャムを乗せた。
宗太がゲッソリした顔で見ているのに気がついた虹子はフフっと笑った。
宗太は気をつけな、今はまだいいけど、30も超えたら
ブクブク太るぜ。
大丈夫よ、うちはデブの家系じゃないからと返事をした。
ところで先日、玄関のタピスリーは兄さんのとか言ったけど
宗太の兄さんってどこにいるの?
と爆弾が飛びだした。
宗太はそう言ったことを思いだした。
宗太が黙っているので、まずいこと聞いたと虹子が言った。
いや、まずくはないけど、ブラジルに行ったっきり音沙汰ないんだ。
探しようもなくて。
俺も気にはしているんだ。
ブラジル・・・虹子が考えている。
いや、実際に飛行機のチケットを見たわけじゃない、兄がそう言って出かけて
飛行場に送って行ったわけでもないから、ただ、昔からブラジルに行きたいと
言っていたし・・・・・ここに移る前の話だ。
兄は語学ができたから大丈夫だよ。
ヘー、宗太の兄さんってどんな人。
宗一郎って言って、俺たちは双子だ。
双子でも二卵性っていうのは似ていないし、出来も違うことが多いらしい。
彼は小柄だ。俺の肩くらいしか身長がない。
でも子供の頃から学校の成績はいいし、運動も俺よりよかったかも。
ロンドンに留学したくらいだ。
惨めな中学ごろをぼんやり思い出してだんだん話がゆっくりになっている。
親は兄のほうを可愛がったし、大事にした。
俺は宗太の太は他人の他だとずっと思ってきた。
宗太! 虹子が目に涙を浮かべて止めた。
そんなことないよ、宗太はそんなに繊細じゃない。
すごく器用だし、料理もうまいし、
虹子は宗太のいいところを並べたかったけど、
宗太のこと知らないのに気がついた。
3日ほど経って、虹子は帰宅するなり
宗太、ここを出る話はキャンセル、キャンセルね
と大声で玄関で叫んだ。
二卵性双生児、 13話 宗太の太は他人の他
宗太はその家で静かに暮らした。
社会から注目を浴びるようなことは避けた。
たまたま玄関前に出たとき虹子に会ったのだ。
虹子に部屋を貸す提案は衝動的で後悔もあった。
しかし、どうせ虹子はじきに出て行くとかいかぶってもいた。
でも虹子はもう3年もいる。
虹子と肉体関係すらもってしまったのに次はこなかった。
これから次があるかわからない。
この家は購入したのだから、移転しても”安全”だと宗太は思った。
移転? 移転したいのか?
宗太は発砲スチロールの箱を2階の押入れに置いてきたことを悔いた。
自分の側に置いて折りを見て捨てにいくべきだった。
もう一度、一連の作業をするのはすごく気が重かった。
俺ってなんでこう馬鹿なんだろう?と宗太は自分をののしった。
夏ごろ、虹子は大学院を止めた。
宗太はそんなことは知らなかった。
それは虹子が毎日外出していたからだ。
あまり虹子の生活に干渉しなかった。
本当はそれほど興味もなかった。
夏休みが終わるころ、虹子は宗太に突然言った。
私、今月でここをでます。
宗太にはショックだった。
なぜか虹子はこのまま、ここで生活し続け、それから同棲も可能だろ
なんて宗太は想像を膨らませていたからだ。
宗太の顔を見て、あ、急なら家賃は来月末まで払うわと言った。
そして宗太の次の言葉も待たず、台所を去ってしまった。
宗太はそのまま台所にじっとして
いいじゃないか、これで付きまとう不安はなくなる
と自身に言った。
まだ2週間ある。
朝宗太は虹子の朝食を用意していた。
目玉焼き2個、ウインナーソーセージ5本、レタスのサラダに
プチトマトを加え、ドレッシングとマヨネーズを横に置いておいた。
そしていつも台所のテーブルに置いてある旧式なトースターに
食パン8枚切を2枚入れておいた。
宗太はとても俺には食いきれないと思ったけど
虹子はいつもペロっと平らげた。
トーストにチーズみたいに厚く切ったバターを乗せ、ジャムをこんもりと
盛っていた。
ジャムは虹子は自分で買っていた。
2枚目のパンをトースターから出す前に虹子は冷蔵庫から
キリのクリームチーズを持ってきた。
それをバターの上に伸ばし、さらにジャムを乗せた。
宗太がゲッソリした顔で見ているのに気がついた虹子はフフっと笑った。
宗太は気をつけな、今はまだいいけど、30も超えたら
ブクブク太るぜ。
大丈夫よ、うちはデブの家系じゃないからと返事をした。
ところで先日、玄関のタピスリーは兄さんのとか言ったけど
宗太の兄さんってどこにいるの?
と爆弾が飛びだした。
宗太はそう言ったことを思いだした。
宗太が黙っているので、まずいこと聞いたと虹子が言った。
いや、まずくはないけど、ブラジルに行ったっきり音沙汰ないんだ。
探しようもなくて。
俺も気にはしているんだ。
ブラジル・・・虹子が考えている。
いや、実際に飛行機のチケットを見たわけじゃない、兄がそう言って出かけて
飛行場に送って行ったわけでもないから、ただ、昔からブラジルに行きたいと
言っていたし・・・・・ここに移る前の話だ。
兄は語学ができたから大丈夫だよ。
ヘー、宗太の兄さんってどんな人。
宗一郎って言って、俺たちは双子だ。
双子でも二卵性っていうのは似ていないし、出来も違うことが多いらしい。
彼は小柄だ。俺の肩くらいしか身長がない。
でも子供の頃から学校の成績はいいし、運動も俺よりよかったかも。
ロンドンに留学したくらいだ。
惨めな中学ごろをぼんやり思い出してだんだん話がゆっくりになっている。
親は兄のほうを可愛がったし、大事にした。
俺は宗太の太は他人の他だとずっと思ってきた。
宗太! 虹子が目に涙を浮かべて止めた。
そんなことないよ、宗太はそんなに繊細じゃない。
すごく器用だし、料理もうまいし、
虹子は宗太のいいところを並べたかったけど、
宗太のこと知らないのに気がついた。
3日ほど経って、虹子は帰宅するなり
宗太、ここを出る話はキャンセル、キャンセルね
と大声で玄関で叫んだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます