メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

ギガ…クラッチO/H。

2017-05-03 14:02:35 | いすゞ

ゴールデンウィーク直前の先日、仕事も落ち着き工場の清掃をしてたら…

荷を積んだままクラッチが滑って走行不能になった、おまけにエンジンもかからん、ゴールデンウィーク中にも使いたいから何とかして‼︎…と電話があり…

何とかして…と言われても部品が間に合わなかったら何ともなりませんよ⁉︎…と釘を刺しつつとりあえずレッカー手配。
現車はトラクターなので、レッカー屋さんには台車は切り離してトラクターだけのレッカーをお願い。
荷を積んだトレーラーは別のトラクターで引っ張る段取りをお客様にとってもらい…


入庫準備と平行してクラッチ部品一式も注文。


それよりクラッチが滑ってもエンジンはかかるはずだよな…セルモーターでもイカれたかな⁉︎…なんて考えつつ、念のためセルモーターの在庫と納期も確認。

で、車両が入庫。
EXD52ギガ…





もう入庫した時点でクラッチの焼けた匂いがプンプンしてます…
クラッチはO/Hするとして問題はエンジンがかからない方…
調べてみるとセルは元気よく回りますが、確かにエンジンはかかりません…

ただ、クランキング音に違和感があり…
セルモーター不良とはまた違った音。

何の音だろう⁇…と、よくよく調べてみるとクランキング時にフライホイールのリングギヤが滑って空転しておりました…
コレではエンジンかからないのも納得。

恐らくクラッチが滑った摩擦熱でフライホイールが過熱され、その後暫くしてからセルモーターを回してしまったんでしょう…

エンジン始動用のリングギヤはフライホイールに焼き嵌めされてますが、フライホイールが摩擦熱で過熱されると当然リングギヤにも熱が伝わります…
その状態からフライホイールが先に温度が下がるとリングギヤとフライホイールの嵌合が甘くなり、そこでタイミング悪くセルモーターを回すとモーターの回転トルクに負けてリングギヤが滑る…といったレアなケース。

相当な熱がかかった事は間違い無さそうですが、何故、そんなに滑ったのか…⁇

実はこの車両1週間前にキャブサス修理で入庫しており、その時にお客様にクラッチが滑り気味だから調整もしといて!…と言われて調整したばかり。
その時は調整しろにはまだまだ余裕があり、クラッチの滑りも見受けられず納車したんですが…

まさか1週間で走行不能になるとは想像もしませんでした。


とりあえずリングギヤが滑ってしまっているのでフライホイールとリングギヤは要交換の為、追加で手配。

早速作業を…



接続されたホースや配線を切り離し…


ミッションを降ろします…


フェーシングの残骸が…




しかしこの臭い嫌い…笑
マスクしてても臭ってきます…


クラッチ側も当然…



更にクラッチカバーを取り外し…


ツインプレートクラッチなんですが、リヤ側のクラッチディスクがこんな事に…




フロント側のクラッチディスクは見事にズル剥け…



コレで謎が解けました。笑


リヤ側のクラッチディスクのダンパー部が先に破損…
シングルプレート状態でトレーラーを牽引した為、重量に対するクラッチのキャパが足りなくなり負荷に耐えられず滑った…というトコでしょう。

恐らく1週間前に入庫した時には既にリヤ側のディスクは破損していた可能性が高いです…
耳で聞いて分かるような異音は無かったんですが…

入庫時はトラクターヘッド単体なのでシングルプレート状態でもキャパは充分だった訳です。
それに加え、破損したクラッチディスクを見ても分かる通り残量はまだまだあります…
その為にクラッチの調整しろがまだあったのは当然です…

それ故に問題無し…と判断してしまいましたが…

結果的にその判断がお客様に迷惑をかけた事は間違いありません。

これは今後の課題ですね。
今回の様なケースの場合、ミッションを降ろさないと最終的な判断は出来ませんが…

今後は問診時の質問をもう少し工夫してみようと思います。


作業に戻り…
フライホイールのリングギヤも浮いてしまってます。




まずはクラッチのカスの掃除から…笑
掃除機で吸い取り…


レリーズベアリングを交換…


ハブは再使用、ベアリングだけ交換。




グリスホース類も交換してミッション側は完了。


フライホイールハウジングもキレイに掃除。


クランクシールも換えたいところですが部品が間に合わないし漏れてないのでそのままです。

で、いすゞさんはフライホイールASSYが無く、リングギヤとは別供給です。




つまり…現場での焼き嵌めが必要です…笑


まずはフライホイールに塗られた錆止めの除去…
シンナーとワイヤーブラシでゴシゴシと…




キレイになりました。



で、リングギヤ全体を酸素で加熱します…
だいたい180〜200度位まで炙れば手でスコン…と入ります。
革手してた為に完成後の写真しかありませんが…笑


当たり前ですがチャンファー面をセルモーター側に…

以前、これを逆にハメた人間がいました…

パイロットベアリングも圧入…


フライホイールを取り付け…


クラッチを組み付けていきます…
使用するクラッチはEXEDY製




ツインプレートなのでクラッチディスクも2枚になり、センターアライナーもツインプレート用になります。


まずはフロント側クラッチディスク…


次にインターミディエイトプレートの取り付け。


更にリヤ側のクラッチディスク…


で、クラッチカバーを取り付け。


スプラインの確認とレリーズレバーのセット位置確認などをして…



後はミッションを載せて…


プロペラシャフトも取り付け…


デッキパネルも取り付けて完成です…




無事に連休前に納車出来ました。



今日から連休です…

にしても2017年ももう5月かぁ…


早いですね〜(;´д`)







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