時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

衝撃スクープ?金正男暗殺の真相

2017-10-08 21:34:21 | 北朝鮮
韓国の情報機関、国家情報院(通称「国情院」)が
どのような組織であるかを知るには次の記事を読むと良い。


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ブラックリストの芸能人、国情院の予告どおり追い出し



国家情報院(国情院)の「ブラックリスト芸能人」追い出し作業は想像以上だった。
29日、「ハンギョレ21」が確認した芸能人ブラックリストに
関連した国情院の文書14件の内容によると、国家情報機関が全方位的に、
また持続的に該当する芸能人たちの追い出しに尽力した
具体的な情況を把握することができる。





まず、国情院がブラックリストの芸能人らの追い出し時期と
方法まで子細に言及した部分が目を引く。



2011年7月に作成した「MBC左傾向出演者の早期追い出し施行」報告書によると、
「4月にキム・ミファ、7月にキム・ヨジンを降板」、
「後続措置としてユン・ドヒョン、キム・ギュリを8月ごろ交替予定、
10月秋の改編の際にシン・ヘチョル、キム・オジュンも降板させ交代させる方針」など、
多くの芸能人らの追い出し時期と方法を言及している。


実際、ユン・ドヒョンは同年9月に文化放送のラジオ番組「2時のデート」から、
キム・オジュンは10月に「風変わりな相談所」からそれぞれ降板した。



オン・オフラインの「世論工作」が試みられた情況も見られる。

「VIP(大統領を指す)に言葉テロを加えて国家元首の名誉を失墜」させたと
名指された放送人のキム・グラや歌手のキム・ジャンフンの場合、
「アンチ勢力を活用した萎縮」を試みた。



実際、国情院が報告書を作成した時点を基点に、
キム・グラの場合、過去の暴言の動画などがコミュニティサイトに配布され、
キム・ジャンフンは偽りの寄付論議に巻き込まれた。


当時は国情院心理戦団と軍サイバー司令部の活動が活発だった時期でもある。


http://japan.hani.co.kr/arti/politics/28614.html
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国情院の歴史を辿ると、その前身は植民地時代の特高にたどり着く。
終戦後、特高の組織を継承した形でKCIAが発足、軍事政権下、
反対派の活動家および容疑者を拘禁、拷問を繰り返した。


日本メディアは全く注目していないが、朴槿恵の事実上の親衛隊として
思想弾圧に加わった国情院の余罪追及は未だに継続している。






金正男暗殺、北朝鮮工作員の手口と謎の愛人
たった500ドルの報酬で彼の命は奪われた


10月8日夜の特番にむけたダイジェスト記事が東洋経済に記載されている。
「真相」と銘打っているが、実際には既存のニュースを映像化しただけのもので、
 事実、同サイトの検索欄に「金正男」と打ち込んでやれば同様の記事がヒットする。


注目すべきは
なぜか北朝鮮の工作員の仕業と断定していること。



クアラルンプールの旅客数は2015年度で4893万8424人。
1日当たり100万以上の人間が利用している。

その中で当日、空港市内にいた北朝鮮の人間のみを「容疑者」に絞り上げ、
見込み捜査を始めたわけだが、当然、これといった証拠も発見することが出来ず、
結果、ほぼ迷宮入りとなって事件は終息した。


金正男氏殺害事件の新委曲 リ容疑者、捜査は謀略と非難

容疑者として拘束された北朝鮮の出稼ぎ労働者は証拠不十分で釈放後、
マレーシアから国外追放された。人権侵害だが、非難するメディアはなかった。


さて、この事件に対しては以下のような論評がある。


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大騒ぎは米南日のマスコミだけ、
海外から見たクアランプール事件

/李東埼



完敗したCIAと国情院の謀略劇

マレーシアのクアラルンプール国際空港で2月13日に死亡した朝鮮公民の遺体は、
両国の共同声明にもとづき3月30日、朝鮮側に引き渡された。



共同声明は「両国は、ビザなし渡航の再導入について肯定的に討議することにし、
双務関係をより高い段階へ発展させるために努力することで合意した」と明記した。



マレーシア警察は朝鮮民主主義人民共和国の公民に嫌疑をかけると
同時にビザなし渡航を一方的に廃止した。その、ビザなし渡航を復活させるというのである。



これはとりもなおさず、嫌疑を撤回するという意味である。
さらに両国関係をいっそう緊密化するとも言っている。


これには、朝鮮の威信と名誉を故なく汚したことへの、反省と謝罪が込められていると見てよい。



恥知らずの日本マスコミ



CIAと南朝鮮の国家情報院が、
マレーシアの一部不純分子を巻き込んで敢行した一大謀略劇は完敗し、醜態をさらした。
この間、日本では狂乱的な「北朝鮮たたき」が吹き荒れた。恥を知るべきだ。



海外ではどうだったのか。


清華大学客員教授・鄭己烈氏は、
3月下旬時点で世界中のウェブサイトに上った
同事件関連の報道、論評は10余編にすぎず、それも「米韓日の報道に批判的なのが大部分」という。




中国、ロシアの両政府は、
米日南の報道とマレーシアの発表を疑っている。




人民日報の海外向けソーシャル・メディア「侠客島」は
「今回の事件で利益を得るのは韓国の保守層だ」と書いた。



元ジャパンタイムズ編集長で、調査報道専門記者として
世界的に有名なヨイチ・シマズ氏(日系米人)は3月の早い段階で
「CIA・国情院の犯罪者たちが演出したマレーシア空港事件」と題する詳しい論評を発表した。




見せびらかす劇場型暗殺


事件は空港の雑踏の中、監視カメラの下で行われた。
こっそり殺すのが暗殺。だがこれは、見せびらかす劇場型暗殺である。
マスコミを動員し朝鮮を窮地に追い込むためなら極めて効果的といえよう。



事件当時、CIAなど米政府内のタカ派が
3月初予定の朝米非公式会談をつぶそうと必死になり、
南朝鮮の与党と保守派は朴槿恵弾劾を阻止すべくあせっていた。


「北朝鮮の脅威」で朝米会談も朴槿恵弾劾も吹き飛ばそうとすれば、
 これほど絶妙のタイミングはない。



重大な捜査サボタージュ



マレーシア警察の発表をみると、重大な捜査サボタージュが発見できる。



(1)金氏が空港に入る前の行動をなぜ捜査しないのか。
(2)監視カメラには金氏をはさんで2人の男が一緒に歩いている。なぜ彼らを捜査しないのか。
(3)VXを素手で扱った容疑者はなぜ死なないのか。
(4)女性容疑者の南朝鮮行きについて、なぜ捜査当局は沈黙しているのか。


ヨイチ・シマズ氏は、金氏が空港に入る前にカフェで毒を盛られたと推理している。


なぜマレーシアなのか



09年に就任したナジブ・ザラク現首相は汚職まみれ。
15年には国営マレーシア開発有限公社からの巨額横領が発覚。
彼の腹心ザヒド・ハマディ氏と賭博王ポール・プアの腐れ縁もそれ以前に発覚した。


資金洗浄を依頼したゴールドマンサックスを通じてCIA、FBIは証拠を握った。
こうして現首相は米国の「奴僕」となった。マレーシアはでっち上げに最適の舞台だった。
事件後、親米サウジアラビアは、対マレーシア70億ドル巨額投資を発表した。

 (ジャーナリスト)

http://chosonsinbo.com/jp/2017/04/0407jy/
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Demonization Campaign:
ROGUE CIA-NIS Agents STAGED Murder Of Kim Jong Nam



島津洋一氏の評論は上のページから閲覧可能。かなりの長文だが読みごたえがある。



実行犯に当たる女性2名は
日本人を名乗るアジア人に依頼されたと告白しているが、
フジテレビ取材班はこれを強引に「日本人を装った北朝鮮工作員が声をかけた」と解釈。


誰が初めに工作員の仕業と決めつけたのか。
何を隠そう、その人物こそ国情院院長、リ・ビョンホ氏である。


「犯行直前の工作員たちの動きが今回の取材で判明した。
 空港内で入念な下調べをした後、女実行犯たちと合流、
 金正男氏への襲撃の指示を出す様子なども明らかとなった。
 女たちの手には、工作員によって謎の液体がつけられる。」


幾度にかけて専門家によって指摘されているが、猛毒VXを手に塗り無事で済むことはありえない。
次の記事を参照。


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マレーシアのカーリド・アブ・バカル警察長官は
「犯行前に一人の男性容疑者が女性容疑者たちの両手に毒劇物をたっぷり塗り」、
「アイシャが先に前から接近し、彼の顔に毒劇物の付いた自分の手をこすり付け、
 続けて背後から彼に抱きついたフオンが再び両手の毒劇物を彼の顔に塗りつけた」と述べた。


同紙は、
専門家たちは空港の監視カメラの分析結果などを挙げ、警察発表を疑問視していると指摘。

監視カメラの画面を見ると、
男性が攻撃を受けた後も顔や目を手や服で拭うしぐさを一切しなかったとし、
空港の監視カメラ映像を入手した日本のフジテレビ側の依頼
50数分間の動画の原版を分析したある消息筋は、

「人間は目や顔に水滴が少しでも付くと本能的に拭うはずなのに、
 何度も見返したが、男性は襲われた後、服や手で顔を拭うしぐさをまったくしなかった」
としたうえで、「男性の顔に液体が塗られていなかったということだ」と述べたと報じた。


また、医療専門家も、手に塗っても平気だが、
顔に塗ると致命的という毒劇物が果たして存在するのか疑問を呈したと同紙は報じている。

http://chosonsinbo.com/jp/2017/02/02suk-12/
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勘の鋭い読者は既にお気づきだろうが、フジテレビは事件当初から
執拗に北朝鮮犯行説(発信元は国情院)を連呼していたメディアだった。


今回のスクープ(笑)はその集大成に当たるが、
未だに「毒物を手に塗り付けた」と平然と語るあたり、
取材は結論ありきのもので、ろくに検証がされていないのではないだろうか?



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〈クアラルンプール事件〉北の工作員が韓国に旅行?(自主時報、2月25日)

ドアン・ティ・フォン容疑者は昨年、2人の女性と共に韓国を訪問、
フェイスブックに男性の友人に会いに韓国を訪問するという情報を載せた。



韓国は対共(反共)意識が極めて高く、
国家情報院や警察などの機関が整備されているなど北に対する警戒心がとても高い国である。
それなのに北に取り込まれている女性が韓国旅行にくるということは理解しがたい。


それならば、フォンと韓国の関係についても調査が必要であるにも拘わらず、
マレーシア警察当局は調査する気はないようだ。



一方の国情院も調査すべきだが、そんな気配はない。
ベトナム人女性3人を招いた韓国人男性がフォン逮捕の前日にフランスに向かったが、
マレーシア当局は彼に対する調査を行っていない。




韓国の公安機関がそうさせないようにしたという情報も伝わってきている。

http://chosonsinbo.com/jp/2017/02/04suk-4/
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私自身は情報を整理する限り、韓国黒幕説が濃厚ではないかと素人ながら考える。

実行犯の一人が事件直前に韓国に向かっていたこと、
彼女らと関わりの有る韓国人男性が逮捕前日にマレーシアを出国していること、
この件に関してマレーシア当局が意図的に捜査をしていないこと、

事件が起きた同時期に朴槿恵陣営に対する大々的な弾劾運動が起きていたこと。


そして北朝鮮犯行説の情報源は国情院。


マスメディアのように状況証拠のみで憶測をしても許されるならば、
十中八九、韓国が裏にいると断言しても良いだろう。

実際には憶測のみで断定をするのは論理の飛躍も甚だしいが。


フジテレビは懸命に金正男を反体制派の急先鋒であるかのように描きたがっているが、
本人はマカオで豪遊していた政治的にも存在感の薄い人物だった。


今も金正男氏が生きていたら北朝鮮をめぐる国際情勢は違っていたのだろうか? 
10月10日の朝鮮労働党創建記念日に向けて新たなミサイル発射の動きが指摘されている。

金正恩委員長とドナルド・トランプ米大統領の舌戦も
過熱の一途をたどり、北朝鮮はますます孤立している。


もし、金正男氏が生きていたなら、
北朝鮮と国際社会を結ぶ有力なチャンネルになれただろう。
孤立化への道をつき進む北朝鮮、一筋の希望はもう光を失ってしまっている。

http://toyokeizai.net/articles/-/191748?page=3


マカオの遊び人がどうやったら有力なチャンネルになれるというのか?
事件後、一部メディアで正男の個人崇拝がはびこったが、これは期待過剰というものだろう。


なお、北朝鮮は8月下旬に、すでに日本に対してアメリカとの仲介役として
コンタクトを取っている。結果は言うまでもない。


故人に対して、お涙頂戴のストーリーをでっち上げるよりも
日本政府が米朝衝突の緩衝材となることをフジは主張すべきではないだろうか。


粉飾戦争 ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器

(https://honto.jp/netstore/pd-book_02423226.html)

アメリカ・メディアがイラク戦争の大義をねつ造した事件を
厳しく批判した書。絶版だが、BookOff等の古本屋ではよく見かける。


イラク戦争に限らず、あらゆる事件において
同様の構造(政府有利の情報をメディアが作り上げ宣伝する)が散見される。


フジの特集もなぜか衆院選直前の時期に放送。
安倍政権は北朝鮮の脅威を盾に改憲を主張。狙いは明々白々である。







作為された脅威・北朝鮮

2017-10-04 22:55:33 | 北朝鮮
朝鮮新報に寄稿した纐纈厚氏(日本近代史)の発言を備忘で載せる。


朝鮮新報は登録さえすれば誰でも閲覧することが出来るのだが、
そこまでして読むのを望む人間もそうはいないわけで、
恐らく、同氏の文章を大半の日本人は知らないのではないだろうか?


ここ最近の情勢を知るには格好の資料なので、
出来れば読了して欲しい。


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米国の覇権主義と追随者たち/纐纈厚



韓国の新たな動き


“Is this an alliance?

Get lost with your THAAD!”(これが同盟なのか。サードを持って消えろ!)。



これは、韓国の人々が米政府や米軍基地に向け、口々に叫んでいるスローガンだ。




不平等な韓米関係と従属的な韓米同盟の見直しを望む切実な声である。
現在、韓国では、文在寅大統領の登場と前後して活発な運動が展開されている。


その運動とは、長期にわたる南北朝鮮の対立関係の固定化の原因が、
実は米国と北朝鮮との敵対関係にあること、そして、韓国政府は
今日まで韓米同盟に規制されていたがため、この固定化を受け入れざるを得なかった
ことへの見直しを求めるものだ。



この対米従属姿勢を改めさせることなくして、
韓国にも北朝鮮にも、平和実現の機会は訪れないと喝破しているのである。



同時にそれは、朝鮮のミサイル発射実験や核開発を挑発と断じる一方で、
米国や韓国の軍事演習や航空母艦を中心とする機動部隊の展開を、
北朝鮮への挑発とは捉えようとしない、まさしく偏在した視点への異議申し立てでもある







「戦闘なき休戦」の時代を越えて



硬直化した米国の対朝鮮強硬政策に、日本と韓国の二つの同盟国が随伴することで、
朝鮮半島情勢は、これまで以上に緊迫の度を増している。




米国は、ここにきて日米・韓米同盟のさらなる強化を急ぎ、
日本はこれに呼応して集団的自衛権行使容認や安保関連法を制定させた経緯もあった。




そもそも米国の
対北朝鮮恫喝政策の基本的命題は、
北朝鮮の体制転換である。





例えば、ジョージ・W・ブッシュ政権の対北朝鮮政策を検討した
ジョン・フェッファーは、米軍が韓国軍を巻き込んで実施する米韓合同軍事演習が、
軍事演習の範疇で捉えきれないものであって、事実上〝演習〟という名の戦争である、とした。



1953年7月27日に調印された朝鮮軍事休戦協定は、
その意味で事実上全く機能していないことになる。



韓国と北朝鮮の衝突も繰り返され、取り分け、
北朝鮮の壊滅を意図する軍事演習が繰り返し強行された。





これは北朝鮮側からすれば、
米国からの脅威が増大する一方と受け取られていたはずだ。




ここでの問題は、休戦協定調印と共に発足していた軍事停戦委員会や中立国監視委員会が、
その設置目的を全く果たしていない結果として、
言うならば「戦闘なき休戦状態」が続いてきたことである。





別の表現をすれば、〝休戦〟という名の事実上の戦闘が、
一方的に米国側から仕掛けられている現実があると言うことだ。




米国は、この〝休戦〟状態のなかで事実上の戦争を常態化させ、
北朝鮮の国力を削ぐ手法を採っているのである。





その意味でこの「戦闘なき休戦状態」とは、
換言すれば〝戦闘なき戦闘状態〟とも表現可能であり、米国にとって極めて都合が良い状態なのである。


それで肝心なことは、この「戦闘なき休戦状態」から解放されたいと望むのが、
北朝鮮だけでなく、米国の同盟国である韓国も同様であることだ。



休戦協定を潰した米国



ここで休戦協定の意味に少し触れておきたい。
特に問題としたいのは、休戦協定第13節のd条項に絡むことだ。


それは米国が、朝鮮に新しい武器の持ち込みを禁止した内容である。
しかし米国は同条項を悉く反故にしてきたのである。




すなわち、56年9月、
当時の米国のアーサー・W・ラドフォード統合参謀本部議長が、
朝鮮半島への核兵器持ち込みを主張し、アイゼンハワー大統領(当時)の承認を得た経緯があった。


そして、翌年の57年6月21日、在朝鮮国連司令部軍事休戦委員会会合で、
米国は北朝鮮代表団に、国連軍(UNC)が休戦協定第13節(d)に対する義務を履行しない、と通告した。



この結果、58年1月には、W7等の核砲弾発射可能のMGR1(オネスト・ジョン)と、
W9及びW31核砲弾発射可能のM65二八〇ミリ・カノン砲が韓国に配備された。




以来、最近における弾道弾迎撃ミサイル・システムである
THAADミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile)の配備に至るまで、
米国は核兵器やロシア・中国・北朝鮮を対象とした攻撃・迎撃兵器を
大量に持ち込み続けている事実は、繰り返し問題視せざるを得ない。





そうした米国の姿勢に対抗してきた北朝鮮も、
94年を初回とし、最近では2013年まで合計六回にわたり、
休戦協定に拘束されないとする表明を繰り返してきた。



その背景には、1996年10月、国連安全保障理事会が同議長の声明で、
休戦協定が平和協定に転換されるまで休戦協定は
十分に順守すべきとの要請を、米国が事実上拒否してきたからだ。




また米国は、2013年、北朝鮮が「休戦協定は過度期の手段」と主張し、
平和協定への転換プロセスのなかで、停戦と平和の移行措置を講じる
提案を行ってきたにもかかわらず、この対案も無視し続けた。





それどころか昨年の16年6月、韓米連合司令官兼在韓米軍司令官が書名して、
新たな北朝鮮侵攻作成計画「5015作戦計画」の採用に踏み切った。



これは従来の「5027作戦計画」と異なり、
全面戦争開始前に迅速かつ積極的に北上侵攻作戦を進め、北朝鮮の壊滅を意図する作戦計画であり、
韓米安保協議会(SCM)が北朝鮮の戦略転換に対応して作成したものである。


同協議会では、これに併せて戦時作戦統制権(戦作権)の転換を、20年代まで延長するとした。



このように、米国は南北朝鮮間で一旦合意された休戦合意を事実上廃棄し、
自らの作戦統制権を確保して対北朝鮮恫喝政治を強行し、
これを担保するために強大な核戦力を中心とする侵攻部隊を韓国及び日本に展開してきた。



取り分けTHAADミサイル・システムは、
北朝鮮以上に中国とロシアへの威嚇行為を発揮するものであり、
両国の北朝鮮支援を軍事的威嚇によりブロックする意図が透けて見える。



従って、ここから指摘せざるを得ないのは、
第一に米国が北朝鮮・韓国・中国・ロシア間に構想される、
広範囲のアジア地域の安全保障体制構築を阻止しようとしていること、
第二に、それゆえに南北朝鮮の和解と統一への動きを加速するためには、
日本を含めた東北アジア地域からの米国の軍事プレゼンスの排除と、
韓国における戦作権の放棄が主要な課題となろう。


そこでも問題は、言うまでも無く米国のスタンスである。




軍事プレゼンスに執着する理由は何か



米国外交の常套手段は、分断政策である。


かつてユーゴスラビアを解体し、続けてチェコスロバキア・中央アフリカ・
イラク・シリア・スーダンと事実上の分断による内紛の常態化政策を直接間接に行った


それと同質の外交手法が朝鮮半島でも採用されている、とする把握も不可欠であろう。



例えば、1997年成立の「アメリカ新世紀プロジェクト」
(Project for the New American Century,PNAC)のように、
米国第一主義を掲げる米国の権力集団が、米国主導の朝鮮統一を目途とし、
朝鮮半島全域に米国の軍事力プレゼンスを展開し、米国の意向を汲んだ統一朝鮮を、
新たな経済収奪対象地域と算定している。



そこから米国としては、
自主的平和的統一を絶対に許容できない、
とする姿勢を崩しておらず、
ここに朝鮮問題の最大の問題が孕まれている。





そこからも思考すべきは、
在韓米軍の核・通常戦力の存在は、北朝鮮を対象としたものだけでなく、
実は韓国自体への威嚇と制圧を目的としたものであって、
決して韓国の安全保障に寄与するものではないことである。

それは在日米軍が、日本の安全保障を目的としたものでないのと全く同様にである。



従って、韓米同盟も日米同盟も、南北朝鮮の自主的平和統一の阻害要因であり、
日本・中国・ロシアを含めた東アジアの平和と安全に帰結するものではないのである。



そこから段階的であれ同盟関係の緩和、
さらには解消に向けたプログラムの構築が大胆に検討されるべきであろう。



そのプロセスと反比例する恰好で、南北朝鮮の和解と統一という、
希望のシナリオが初めて実行に移されるはずである。




それゆえ現在最も対話を必要としているのは、
北朝鮮と米国との対話と同時に、日本・韓国・朝鮮・中国・ロシアの五ヵ国が、
米国の東アジア政策の変更を促すための対話ではないか。



朝鮮半島の平和の先導者
作為された〝脅威論〟の果てに




恐らく本書に通底するテーマとなる北朝鮮〝脅威論〟の虚妄性についても触れておきたい。


多様な視点から指摘されることになろうし、重複するかも知れないが、
筆者の端的な結論は、それが「作為された脅威」ということだ。



確かに、今や北朝鮮の核兵器は存在し、
その大陸間弾道弾(ICBM)化への技術の進展は、日進月歩の感がある。


それがどの国の通常兵器であれ核兵器であれ、
戦争のための兵器自体が平和と安全を希求する人々にとっては脅威である。


その意味で言えば、北朝鮮の核兵器は通常兵器と同様に、
そのレベルや兵器運用計画如何に関わらず、物理的かつ精神的に脅威である。



ただ、ここで言う脅威とは、外交軍事政策を履行するために、
現実に利用される可能性が高くなったとき、それに比例して上昇する意味での脅威である。


したがって、そこでは軍事技術上のレベルの問題ではない。
レベルを低位に見積れば脅威も低く、高位であれば脅威も高いという意味で、
脅威論を語っているのでもない。




最大の意味は、この〝脅威〟が
米国の朝鮮半島における軍事プレゼンスを正当化するために利用されていること、
そして、日本では安倍首相の言う「東アジアの安全保障環境が変わった」という言辞によって、
集団的自衛権から安保関連法、さらには共謀罪まで次々を法制化されていく
外交軍事政策の口実にされていることが、実は平和を希求する人々にとって、本当の脅威であることだ。



勿論、それでは北朝鮮の物理的意味での脅威は零かと言えば、決してそうではない。
ただ、明確にしておくべきは、北朝鮮の核戦力が今後さらに高度化されたとしても、
それは米国の侵攻作戦を事前に防禦するための、いわゆる防御的抑止力の要とされるものであって
、圧倒的な侵攻軍事力を蓄えた米国が先制確証破壊の軍の論理を優先させて、
文字通り核先制攻撃をも辞さないと言う意味での、いわゆる懲罰的抑止力とは決定的に異なることだ。



北朝鮮には韓国であれ日本であれ、さらには遠く米国本土であれ、
ミサイル攻撃をし、侵攻作戦を継続して担える正面整備もなければ、またその意図も皆無であろう。




非核化への強い意志を示す



このことは、2016年5月6日から9日まで開催された北朝鮮労働党第7回大会にいて、
金正恩労働党委員長が行った

「わが共和国は責任ある核保有国として
 侵略的な敵対勢力が核でわれわれの自主権を侵害しない限り、
 すでに明らかにしたように先に核兵器を使用しないであろうし、
 国際社会にたいして担った核拡散防止の義務を誠実に履行し、
 世界の非核化を実現するために努力するでしょう」との発言からも理解されよう。



また、これを受ける形で北朝鮮政府スポークスマンは、
同年7月6日に「われわれの主張する非核化は朝鮮半島全域の非核化であり、
これには南の核廃棄と南朝鮮周辺の非核化が含まれている」との声明を発している。



言うまでもなく、
ここには日本における米国の「核の傘」撤廃も含まれている。




問われているのは、北朝鮮の核の脅威を煽る日米政府ではなく、
まさに米国の核兵器の存在と「核の傘」を受容することで、
間接的ながら事実上核武装している日本が、核放棄に勇気を奮って踏み出すことであろう。




勿論、自主的平和的統一までには紆余曲折があろうが、
少なくとも米国を筆頭として、そのプロセスを阻害してはならない。



朝鮮半島の非核化を実現するために、当面は核の鬩ぎ合いは継続しつつも、
その先に明白に朝鮮半島、さらには東アジア地域の非核化への構想を抱いているのである。




ならば、米国は朝鮮半島および日本周辺地域への核兵器持ち込みの実態を明らかにし、
その撤収へのプロセスを打ち出すことが求められよう。




確かに繰り返されるミサイル発射実験により飛翔距離如何によっては、
既に現実となっているように、日本の排他的経済水域(EEZ)への落下が懸念されている。



航行中の艦船や航空機への被害想定がなされ、安全が担保されるかの問題は残る。


ただ、その可能性は極小であり、それ以上にEEZは、
天然資源及び自然エネルギーに関する主権的権利や環境保護・保全に関する管轄権が及ぶ水域であって、
そうした権利発動の機会を有してはいるものの、そこに如何なる飛翔物が落下したとしても、
それは権利侵害に相当しない。



安全を棄損する可能性がある以外には、国連海洋法上において特段の問題はないのである。




ただ、地方自治体には国民保護法に則り、
万が一北朝鮮のミサイルが日本本土に着弾した場合に備える訓練が各地で企画実践されているようだ。



その事態とは、まさに戦争事態であって、その可能性は既述した通り、
米国の先制攻撃による戦争発動がない限り、絶無である。



ところが、ある種の政治プロパガンダの一環として
地方自治体や住民を巻き込んで、いわゆる脅威の実態化に躍起となっている。



残念ながら、この政治宣伝は〝成果〟を挙げており、
朝鮮のミサイル発射実験を危険視する世論は勢いを増す一方である。



北朝鮮のミサイルは軍事目的だけでなく、
政治目的の観点から繰り返されている政治パフォーマンスでもある。



勿論、北朝鮮は限られた資源を軍需に充当しながら軍事技術の向上に懸命である。
しかし、それは防御的抑止力の向上を意図するものであって、韓国や日本を先制攻撃するものではない。


加えて、北朝鮮としては米国の朝鮮半島における核戦力使用を極力抑え込むための苦肉の策としてある。

その意味で言えば、米国や日本の政府が言う北朝鮮の脅威とは、
北朝鮮に脅威を与え続けている米国の脅威を鏡に映し出したようなものだ。



しかし、かつて米国がリビアやイラクに空襲を敢行し、侵攻作戦に踏み切ったような、
軍事侵攻を控えている重大な理由が、北朝鮮の核武装であることも間違いないことだ。



純軍事的に見て、米国の先制攻撃で機動性と秘匿性を高めている
北朝鮮の核戦力総体を完全に無効化することは極めて困難になっているからである。



朝鮮半島を核戦争の戦場にすることは、
韓国や日本の国民だけでなく、世界の世論が許容しないはずだ。


米国の先制攻撃で甚大な被害を受けるのは韓国と日本、そして中国東北部である。




その意味で〝脅威論〟の作成者としての米国と、
これに全面的に同調する日本は、その作為された〝脅威論〟が、
逆に東アジアの安全保障の脅威となっていることを自覚すべきであろう。




つまり、北朝鮮の物理的軍事的な意味での脅威ではなく、
米国と日本の両政府が繰り返す〝脅威論〟を払拭することだ。


その先にこそ、本当の東アジアの安全保障が確約されるに違いない。




最後に次の発言を引用しおきたい。
すなわち、

「朝鮮民族が北と南にわかれていまなおおたがいに反目し対決しているのは、
 みずから民族の統一的発展をはばみ、外部勢力に漁夫の利をあたえる自殺行為です。

 これ以上民族の分断を持続させてはならず、
 われわれの世代にかならず祖国を統一しなければなりません。」と。



さらに続けて彼は言う。


「北と南が統一の同伴者としてたがいに尊重し、協力していくためには、
 相手方を刺激する敵対行為をとりやめなければなりません。

 
 相手側にたいする敵対行為は不信と対決を助長し、関係の改善をさまたげる主な障害です」と。


彼とは、北朝鮮の最高指導者金正恩労働党委員長である
(チュチェ思想国際研究所編「金正恩著作集」第二巻、白峰社、2017年刊)。



金委員長の発言は、冒頭で引用した
「これが同盟なのか。サードを持って消えろ!」と連呼する韓国同胞の思いと、
表現こそ違え、根底で深く響き合うものである。


朝鮮半島の平和の先導者は、
米国でも、ましてや日本では勿論なく、間違いなく南北朝鮮なのである。


http://chosonsinbo.com/jp/2017/09/lp170919/
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北朝鮮の核廃絶はアジア全体における核廃絶とリンクしなければならない。


当たり前の意見なのだが、なぜか全面的にこれを推す知識人は少ない。
かわりに叫ばれるのは「脅威・脅威・脅威」である。


しかも、その脅威は虚像に満ちたものなので
私は彼らが本当に日本の安全を守るつもりなのか疑わしく思う。


今の日本は村民を熊の巣穴に連れて行きながら
銅鑼を叩いて「危険だ―危険だ―」と絶叫しているようなものだ。




明らかに熊を刺激する行為こそが危険極まりないのだが、
そこを指摘すると「貴様は熊の手先だ」ということになるらしい。


カルトとしか言いようがない。


例の訓練はファニーというか何と言うか・・・
ミサイルが撃たれたら建築物の中に隠れろという文句。


今年の春、
幸福実現党から受け取ったビラに書かれていた。




大川隆法と同レベルのオピニオンを誰も怪しまないというのは
凄まじいというには余りある光景で、ショッキング極まりない。



8月中旬、池上彰大先生はテレビ番組で
「迫りくる北朝鮮の脅威」と称して、例の避難訓練について
 事細かに解説していたが、その訓練自体が異常だということを誰も指摘しなかった。


問題は現在の北朝鮮のミサイルを止める術が日本にはないということなのだが、
この国を守りたいと叫んでいる連中は、具体的な解決案を考えているだろうか?


改憲すれば良い、制裁を強めれば良い。
現実はより複雑で、より柔軟で手間のかかるアプローチが必要なはずなのだが、
どうも「これさえやれば万事解決」という安直な思考をしてはいないだろうか?


英語塾に通えば、ネイティブ並みに外国語が話せる・・・ことなどないように、
安易な解決法は存在しないのである。



それをやれ「中国が悪い」「ロシアが悪い」と責任を転嫁し、
発想を転換することが出来ない。それは大いにマスメディアに責任があるのだが、
せめて愛国を気取りたいならば、最低限、現実味がある手段を論じてほしいものである。



北朝鮮バッシングと併進する朝鮮学校への差別

2017-10-04 21:45:40 | 北朝鮮
朝鮮総連「金正恩委員長を決死の覚悟で擁護」…中央常任委員会が声明
(http://dailynk.jp/archives/96193)

先日の声明を受けて、一部(というより大半)の極右論者が歓喜に震えている、
もとい、怒り心頭に発しているが、そもそも総連が北朝鮮が擁護することは
言うほどおかしいことだろうか?


朝鮮中央通信は同日、以下のような記事を載せている。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【平壌9月23日発朝鮮中央通信】


朝鮮民主法律家協会のスポークスマンは23日に発表した談話で、
在日同胞に対する日本反動層の卑劣かつ幼稚な差別行為を断罪、糾弾した。






去る13日、日本の東京地方裁判所は東京朝鮮中・高級学校高級部生徒に
高等学校支援制度を適用することを求める総聯(朝鮮総聯)と
在日同胞の正当な主張を何の法的論拠もなしに棄却する暴挙を働いた。





談話は、東京地方裁判所の不当な判決は
日本反動層の反共和国・反総聯敵視政策の延長として、
在日同胞の自主権、生存権を無残に踏みにじる
不法無法のファッショ的暴挙であると暴き、次のように指摘した。





朝鮮民主法律家協会は、日本の東京地方裁判所の
不当な判決をわが共和国の尊厳ある海外公民団体である総聯を弾圧、
抹殺するための極悪非道な敵対行為、犯罪行為とらく印を押し、
峻烈(しゅんれつ)に断罪、糾弾する。







朝鮮高級学校生徒に高等学校支援制度を適用するのは
過去、日帝がわが民族に働いた犯罪を誠実に謝罪する立場や、人権を尊重し、
保障することに関する国際法上の見地から見てもこれを排除する何の法的根拠もない。







われわれは、総聯と在日同胞を対象にして
しつこく強行されている日本反動層の卑劣かつ幼稚な差別行為を絶対に傍観しないであろう。




もし、日本の反動層が総聯と在日同胞に対する差別と迫害に執着し続けるなら、
全朝鮮民族の復しゅうの洗礼、正義の審判を免れられないであろう。




日本当局は、総聯と在日同胞の尊厳と権利を無残に踏みにじり、
在日朝鮮生徒の未来に陰を投げた野蛮な行為が
どんな破局的結果をもたらすかということについてはっきりと悟り、
熟考しなければならない。---


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

朝鮮学校に対する教育差別は不当以外の何者でもないので、
「仰る通り」としか言いようがない。


駄目押しで次の記事も載せる。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

それぞれの歴史観、誰も奪えない/
市の補助金不交付・千葉初中で緊急集会




「千葉市の補助金不交付に抗議し撤回を求める4.29千葉ハッキョ緊急集会」が
29日、千葉初中にて行われた。


県内の活動家、同胞・学父母、
「千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク(千葉ハッキョの会)」
の会員をはじめとした日本の有志ら約100人が参加した。




千葉市は、同校の主催する
「ウリハッキョと千葉のともだち展」に展示された一部の作品とその解説文に
2015年の「日韓合意」を批判する記述があったことなどを指摘。





これに対して
「補助金事業に必要とされる『地域住民との交流に資するもの』
 と言うことが極めて困難と言わざるを得ず、

 また『市長が適当ではないと認めるものでないこと(要綱第3条第6号)』の要件にも該当せず」
 よって「要綱第3条に定める補助対象事業として促進すべき地域交流事業とするのは
 適当ではないと言わざるを得ない」とし、これを補助金等の交付の決定の内容に違反していると判断。


「千葉市補助金等交付規則第17条第1項第2号に該当する」ということを理由に、
 4月27日、同校の地域交流事業への補助金の交付決定を取消した。


集会ではまず、同校の金有燮校長が報告を行った。



金校長は

「私たちには私たちの歴史観や文化があり、それを誰も奪うことは出来ない。
 子どもたちは自分たちの歴史観や文化を誇る、朝鮮民族の一員として交流をするのであり、
 日本政府と考え方が異なるからと言って地域交流を阻むのは差別以外なにものでもない」


としながら、

「戦時中に性奴隷となり尊厳を踏みにじられた朝鮮の女性たちがいる。
 その歴史的事実を直視することは、今の若者たちに必ず必要なこと。
 私たちは自分たちの歴史教育に誇りを持ち、
 朝鮮人として真の地域交流を堂々とやり続ける」と述べた。



また、

日本が未だに同化政策や
 植民地主義を捨てきれずにいることに問題の本質があり、


 日本が過去に行った植民地政策の結果としての
 朝鮮学校の存在意味を政府や地方自治体が真に理解し、
 これを保障することにこそ朝鮮学校問題の真の解決がある
」と指摘した。



続いて、千葉ハッキョの会呼びかけ人のひとりである廣瀬理夫弁護士が発言した。


廣瀬弁護士は、
「従軍慰安婦問題について、
 国際的には日本政府の見解は認められていない。

 あたかもその見解が正しいかのように宣伝をしてきたのは日本政府。
 行政府はむしろ、その宣伝によって誤解を持っている市民に
 正しい歴史を知ってもらう努力をする責任があると思う」としながら、

「そもそも異文化交流とは互いの違いを認め
 尊重し合いながら共生の道を探すためのもの。
 互いの歴史や文化、経験を知っていくのが交流の目的。
 日本政府の見解と違うことを表現すると
 地域交流にはならないというのは全くの間違いである」と市の決定に異議を唱えた。


http://chosonsinbo.com/jp/2017/05/rp170501/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


国際条約では政治的事由で教育関連の補助金を打ち切ることは
差別行為であるとみなされている。


それは、「何が反日で何が親日か」の基準を定めるのが
得てして権力側であり、政府の裁量次第で本来なら得られるはずの支援が得られないからである。



朝鮮学校にのみ教育支援を行わないという行為は
子どもの権利条約、国際人権規約、日本国憲法等に違反するものと国際的にはみなされており、
過去、幾度も注意・勧告を受けている。



よって、北朝鮮側が語る
「人権を尊重し、保障することに関する
 国際法上の見地から見てもこれを排除する何の法的根拠もない」
というのは、まさしく妥当であるし、また、排除を熱望する人間が得てして
過去の歴史を隠ぺいせんと奔走している点からも彼らの言い分は的を射ている。



自身達の置かれた状況に対して真剣に接してくれる北朝鮮政府に対して
総連や朝鮮学校が感謝の意を表するのは、ごく自然ななりゆきだと私は思うのだが、
どうもこれが極右論者および自称中立派には許せない行為になるらしい。



これは恐らく、論者の多くが2本ある記事のうち、
北朝鮮バッシングに役立ちそうな個所のみを切り取っているからだと思われる。

全体を通してみれば不自然な発言ではないのだ。


情報源たるデイリーNKは、
朝鮮学校への差別に抗議したとの記事も合わせて載せている。



つまり、今回に限ってはNKではなく、
情報リテラシーが出来ていると勘違いしている人物が
「擁護」の部分だけを見てヒステリックを上げたということなのだろう。

(別記事で述べるが北朝鮮は8月下旬の時点で
 日本に対し米朝の緊張緩和に協力してくれないかとコンタクトを取っている。
 勝手に向こうの申し出を断って独自制裁を追加し、
 あまつさえ国内の在日コリアンを迫害し、歴史を直視しない
 日本政府のほうこそ、擁護をするのは難しいというものだ)




そもそも、問題の声明は北朝鮮建国69周年記念にむけて開かれた
各国でのセレモニーの一環として発話されたものでもある。


次の記事を参照してみよう。



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【平壌9月23日発朝鮮中央通信】

朝鮮民主主義人民共和国創建69周年に際して
ブルガリア、ルーマニア、スロベニア、ロシア、
ペルー、タンザニア、ギニアで1日から10日までの間に講演会が行われた。



ブルガリア金日成・金正日主義研究グループの責任者は、
金日成主席は革命の壮途についた初期から人民が全てのものの
主人になった国を建てる遠大な志を抱いて日帝に反対する武装闘争を策定し、
導いて国を解放したし、共和国を創建して自主・自立・自衛の社会主義国家に転変させたと語った。



また、金正日総書記は類例なく厳しい試練の時期、
先軍の旗印をいっそう高く掲げて朝鮮の社会主義をしっかり守り抜いたと強調した。



そして、こんにち、朝鮮は尊敬する金正恩同志の指導の下に
チュチェの核強国として尊厳をとどろかしていると述べた。



ペルー共産党中央委員会の書記長は、朝鮮は一心団結と
強大な軍事力に依拠して国の自主権と朝鮮半島の平和と安全を頼もしく守っており、
これはわれわれに大きな力を与えていると語った。




また、偉大な領袖の指導を受ける朝鮮労働党と人民の偉業は正当であり、
朝鮮は必ず最後の勝利を収めるであろうと強調した。



タンザニア朝鮮民主主義人民共和国友好協会の副書記長は、
共和国の創建と強化発展に積み上げた白頭山の天が賜った偉人たちの業績を激賞した。



そして、現時代の傑出した指導者である
金正恩閣下が居て勝利はいつも朝鮮のものであると強調した。---

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要するに、よその団体に倣って発言した社交辞令にすぎず、
これをただちに「北朝鮮の奴隷と化した」と解釈するのは不適なのだが、
これに関してはデイリーNKは「なぜか」記事として読み手に発信していない。





http://dailynk.jp/archives/96239/2

デイリーNKは「原文は以下の通り」と称して
朝鮮中央通信の記事を載せているのだが、実はこれ、
インターネットでも参照できる日本語版の記事をコピー&ペーストしているだけに過ぎない。


つまり、仮にもジャーナリストの端くれを名乗り、
これにより利益を得ているはずのメディアがよそのサイトの記事を貼り付けて
記事を作っているのである。しかも、これといった解説文はつけられていない。



通常、原文を載せる場合は、翻訳するとしても自社あるいはフリーの翻訳家に
依頼するものであるが、私のような個人が遊びでやっていることと同レベルのことを
天下のデイリーNKがしているというのは、なかなかハイセンスなギャグである。


編集長の高英起は北朝鮮バッシングには異常に情熱を燃やす一方で、
朝鮮学校への差別や裁判の経緯には無頓着である。


NKには先日の大阪での判決に対して記事を一本も書いていない。
どうでもいいのだろう。


表面的には人権侵害を憂いでいるはずなのだが、
実際には国内の人権侵害にすら本気で怒りもしない。


「正義の使者」高英起の高潔さには頭が下がるばかりである。
 恐らく、彼の顔面は五寸釘を指されても血の一滴も流れないのではないだろうか?


(大体、彼の編集した記事が極右のコリアン差別の格好のネタになっている点からも
 彼がどれだけ差別に対して憤慨しているかは推して知るべしだろう)




対話と制裁は両立しえない。

2017-08-28 23:32:41 | 北朝鮮
26日、北朝鮮は短距離弾道ミサイルの実験に着手、成功を収めた。

アメリカが北朝鮮のミサイル発射実験の成功を認める


この実験の背景には米韓合同軍事演習の実施が存在するが、
その他にも「経済制裁では問題は解決されない」というメッセージも含まれていたものだった。


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米、北朝鮮の「自制」評価 トランプ氏が対話実現期待




トランプ米大統領は22日、アリゾナ州で開いた集会で、北朝鮮情勢を巡って
「何か前向きなことが起きるかもしれない」と述べた。


北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が足元でミサイル発射を控えていることを念頭に
「彼が我々を尊重し始めたことに敬意を評する」とも述べ、米朝対話の実現に期待を示した。




ティラーソン米国務長官も同日の記者会見で、「北朝鮮は自制を示している」と一定の評価を示した。
21日に始まった米韓合同軍事演習を巡って北朝鮮との緊張が続くなか、
対話に向けて北朝鮮にメッセージを送った。




ティラーソン氏は会見で、今月5日に国連安全保障理事会で追加制裁が採択されて以降
北朝鮮が弾道ミサイル発射などの挑発行為に出ていないことに言及。

「注目したい」と評価する意向を示した。

そのうえで「近い将来の対話への道が見えつつあることを望む」とも語った。



https://www.nikkei.com/article/DGXLASGT23H0H_T20C17A8MM0000/
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「対話」と言えば聞こえは良いが、これはつまるところ、
 北朝鮮が降参の白旗を上げれば、属国化してやるぞということであり、
 自らが主導した経済制裁の効果を宣伝する発言だった。



そもそも、経済「制裁」というものは非常に独善的なもので、
客観的に述べれば、他国の企業や個人の経済活動を妨害する行為であり、
れっきとした人権侵害だ。



大企業が、個人の商店を潰すために店主の醜聞を拡散させたり
店の壁に落書きをしたり、店の悪評をメガホンでがなり立てたり、
元従業員の「証言」をビラにして配ったり、仕入れ先の店に
その店と商売をしないように脅しをかけたりするようなものだ。



そうやって店がつぶれる=店主の家族が路頭に迷うような行為をしておきながら、
「自分たちの言うことを聞くなら嫌がらせをやめてやろう」と嘯く。


これがメディアが言うところの「対話」だ。



冷静に考えて、対話と制裁は成り立たない。




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イエメン首都南部で、サウジアラビアの空爆により、民間人5人が死亡




イエメンの首都サヌアの南部に対するサウジアラビアの空爆で、
少なくとも民間人5人が死亡しました。


アルアーラムチャンネルによりますと、
サウジアラビアの戦闘機は、25日金曜未明、サヌアの南部を攻撃しました。



また別の報道によりますと、イエメン中部のマーリブや北部のジャウフで、
イエメン軍がテロリストの拠点を攻撃し、これにより、
サウジアラビアの傭兵8人が死亡、多数が負傷しました。


サウジアラビアは、2015年3月から、
アメリカと一部の地域のアラブ諸国の支援を受けてイエメンを攻撃しており、
この中で、イエメン人数万人が死傷しました。


http://parstoday.com/ja/news/middle_east-i34366


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アメリカ軍が、アフガニスタン南部で同国の警察部隊を攻撃



アメリカ軍の戦闘機が、アフガン南部で同国の警察部隊を攻撃しました。

タスニーム通信によりますと、アメリカの戦闘機は9日金曜夜、
アフガニスタン・ヘルマンド州で集団礼拝中の同国の警察部隊を攻撃しました。


この攻撃により、警察員少なくとも10人が死亡、他15人が負傷しました。
負傷者のうち一部が重体となっています。


アメリカ軍の戦闘機は、これまで、何度もアフガニスタン各地を攻撃しています。

http://parstoday.com/ja/news/world-i31296



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アフガン・カーブルで多国籍軍の撤退要求が高まる


先週水曜、アフガニスタンの首都カーブル市内の外国公館街で、
給水タンクに取り付けられた1.5トンの爆弾が爆発し、これによりおよそ600人が死傷しました。



その3日後の3日土曜には、
アフガニスタン上院副議長の子弟の埋葬式で新たな爆発があり、多数の死傷者が出ています。


この2つの事件は、アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退を求め、
アメリカに死をというスローガンを叫ぶ人々の激しい抗議運動のきっかけとなりました。




アメリカは、2001年にテロとの戦いを口実に、
国連安保理決議によりアフガニスタンを攻撃し、占領しました。


しかし、実際は、これまでテロとの真剣な戦いは行われていないばかりか、
アフガニスタン軍を初めとする同国の治安部隊の強化に向けた努力も、
意図的に実施されないままとなっています。



一方で、アフガニスタンに集まった支援金も、
結局はアメリカを初めとする西側諸国に吸い込まれてしまいました。


実際に、アフガニスタンの経済インフラの再建に向けた一歩は踏み出されなかったことになります。
アフガニスタンでは失業率が上昇し、労働者は非常に低い収入で生活しているのが現状です。


http://parstoday.com/ja/news/world-i31026


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トランプ大統領は、先日のサウジアラビア訪問の際に、
1100億ドルの兵器売却に関する契約に調印をした。


どう考えてもアメリカのほうが地域社会の脅威になっている。



少なくとも北朝鮮は、この数年、どこの国にも攻撃をせず、
他国の経済インフラを破壊してもいない。


真っ先に制裁を受けるべき国々(米英仏)が野放しにされる一方で、
彼らの敵国は「国際社会の脅威」ということで「制裁」を受ける。



「制裁」とはそれ自体が傲慢かつ敵対の意思を示すものであり、
「対話」とは真逆の性質を持つものだ。




アメリカ、核ミサイルシステムを刷新

(http://parstoday.com/ja/news/world-i34256)



アメリカの核保有は認められ、北朝鮮の核保有は危険視されるというのは
何とも奇妙奇天烈な現象である。


劣化ウラン弾や枯葉剤、そしてリトルボーイを落としたのは
どこの国だったのか「国際社会」は忘却してしまったのだろうか?

(それはありえないことだ)



北朝鮮のかくも激しい「国際社会」への抵抗は
単に核保有を認める・認めないといった低次元なレベルの話ではなく、
小国に対して無理難題を押し付け、経済的破壊、軍事的威嚇を嬉々として行う大国の暴挙を
「国際社会」は看過して良いかという問いを投げかけるものでもある。





「北朝鮮の国連大使は、同国が「挑発行為かつ敵対行為」と考える
 現在朝鮮半島で行われている米韓合同軍事演習について
 議論を行うことを求める書簡を国連安全保障理事会に送った。

 聯合ニュースが、朝鮮中央通信の情報を引用して報じた。
 書簡は25日に送られたとみられている。
 
(https://jp.sputniknews.com/politics/201708274026330/)」



日本が北朝鮮に追加制裁
(http://parstoday.com/ja/news/japan-i34350)

中国が日本の独自制裁に怒りを表明
(http://parstoday.com/ja/news/japan-i34392)


北朝鮮はグアム周辺海域へ向けたミサイル発射実験を宣言してから、
アメリカの軟化という条件付きで発射を自制していた。


その一方で日米は「経済制裁が効いている」と誤解し、
更なる制裁に奔走した。その結果が、今回のミサイル実験だった。


・・・のだが、その辺りの事情を日本のメディアは一切報じていない。


[毎日新聞] 北朝鮮の短距離弾発射 「火遊び」で緊張高めるな
(2017年08月27日)



日本の新聞記者はよほど頭が悪いのか、もしくは生きていくために
ジャーナリストとしての誇りを捨てたのか、調べればすぐにわかることを
あえて知らせず、北朝鮮の悪魔化に躍起になっている。


「日本やアメリカや韓国は穏健な姿勢を見せている。」

 そのような虚像を見せている間は何度でもミサイルは撃たれるだろう。

 撃たれるだけのことをしているのだから。


北朝鮮では脱北者がどう扱われるのか?

2017-07-20 00:20:08 | 北朝鮮
一般的なイメージでは、脱北者は帰国すれば
裏切り者として処刑され、一族共々惨殺されるか、
あるいは強制収容所に送られ餓死寸前まで虐待を受けるか…といったものだと思う。


韓国を中心として世界各地で活動している脱北者の多くは
北朝鮮を自由と人権のない閉鎖的な社会であると評価しているし、
批判をしようものならば些細なことでも殺されるか収容所に送られるのだと喧伝している。


では、実際には北朝鮮は脱北者をどのように扱っているのだろうか?


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2014年に脱北し、
韓国のテレビ番組に出演経験がある女性が最近北朝鮮に戻り、
韓国を批判していたことがわかった。CNNが報じた。




この女性、チョン・ヘソンさんは韓国では「イムジヒョン」と名乗っていた。


脱北者らが北朝鮮の政治や文化を語る
テレビ番組「牡丹峰(モランボ)クラブ」への複数の出演経験を持つが、
北朝鮮政府の公式サイトで15日に公開された動画で、同番組が「政治宣伝」で、
「北朝鮮の悪口を言うよう命じられた」と批判した。



チョンさんは「番組がうまくできたら、映画に出て人気者になれると思っていた」と話す。
「心身ともに辛い思い」をした彼女は北朝鮮で両親と暮らしているという。



脱北者を韓国で待つのは、
スパイでないことを調べる検査や、韓国社会への適応プログラム。



資本主義社会への不慣れから絶望感や疎外感を抱く脱北者は多く、
脱北者支援機関のハナ財団が1700人の脱北者を対象に行なった調査によると、
2割以上が自殺を考えたという。

北朝鮮メディアの報道によると、12年以降に北朝鮮へ戻った脱北者は25人。
しかし、うち5人は再び脱北している。



チョンさんは
「お腹いっぱい食べられて、たくさんお金がもうかるという幻想につられて」脱北したが、
韓国は金儲けに執着した国だったとして、ソウルでの生活は「生き地獄」だったと語る。


北朝鮮当局は、戻ってきた脱北者を政治宣伝の道具として優遇。
公務員として雇うケースもあるという。



https://jp.sputniknews.com/asia/201707193898317/
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脱北者を語るさいに欠かせないのが韓国における彼らの非人道的な待遇であり、
これは日本政府の難民に対するそれと良い勝負である。


逆に言えば、この件に触れずに
ただひたすら北朝鮮を非難している脱北者は注意して観察すべきだと思う。


私が知る限りでは北朝鮮は戻ってきた脱北者に対して
鞭ではなく飴を持って接する傾向が強い。


もちろん、ケースバイケースだが、
上の記事にあるように、ほとんどの脱北者は経済的な理由で難民になるので、
強烈な体制批判をしない限りは、歓待し、そのことをもって体制の正当性をアピールする。


実際、金正恩が意外と国民の受けが良いのは寛大な姿勢を
少なくとも表面上は見せているからで、裏切り者は即刻死刑というものとはほど遠い。


そこで疑問に思うのは、一体、北朝鮮の地獄体制を非難するジャーナリストは
実際の状況を確認してから、発言をしているのだろうかといったものである。



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ある17歳のマケドニア人の学生は、
「マケドニアは経済もひどく低迷していて、10代は働くことも許されない。
だから金を稼ぐには独自の方法を見つける必要がある」と、
トランプ支援のサイトを立ち上げるだけで、
数千ドルの広告収入が手にできてしまう、そこに稼ぎを見出すしか生きる術がないことを訴えた。

http://chosonsinbo.com/jp/2017/07/hj170715/
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いくら経済が発展しつつあるとはいえ、
未だに北朝鮮の現状は厳しいと言わざるを得ない。

そのような状況下で地方の寒村に住む人間が
経済的理由で「情報筋」となって外国の「人権団体」に情報提供することがある。

(実際、デイリーNKやアジアプレスのような情報機関は
 提供者に見返りを与えている)


出版や映画等を通じて積極的に活動している脱北者の中には
後に偽証が発覚した人間も少なくないし、同じ脱北者から批判を受けている者もいる。


そこまで踏まえた上で、どこまでが真でどこまでが偽なのか
見定めなければならないのだが、そうした手続きを行っている
ジャーナリストが多く存在しているだろうか。甚だ疑問である。



北朝鮮は中国と不仲なのか?

2017-07-19 23:11:38 | 北朝鮮
トランプ政権がスタートし、あわせて米朝間の緊張が高まった冬から春にかけて、
政府に釣られるように日本のメディアは朝中間の関係悪化を喜々として伝えていた。


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石炭輸入停止で関係ぎくしゃく 北朝鮮、異例の中国批判


中国が北朝鮮からの石炭の輸入を停止したことを受けて、
中朝関係がぎくしゃくしている。

北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、
「対外貿易も完全に遮断するという非人道的な措置もためらいなく講じている」
との論評を出した。


中国の名指しは避け、「『親善的な隣国』だと言っている周辺国」としたものの、
北朝鮮が友好国の中国を批判するのは異例だ。



中国は18日、年内の輸入停止を発表。

商務省は、5度目の核実験を受けた昨年11月の国連安全保障理事会の
制裁決議で定められた上限(年間750万トンか年間約4億ドル)に近づいたためと説明した。

ただ、中国の貿易統計によると、1月の輸入量は144万トン(約1億2千万ドル)余り。

中朝関係者の間では「本当に上限に近づいているのか」などと、
政治的な意図をいぶかる声もある。

http://www.asahi.com/articles/ASK2T44KNK2TUHBI00N.html

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日本を代表するジャーナリスト、池上彰大先生によると、
中国は最近、北朝鮮に対して制裁の意思を見せるようになり、
これまでのように中国に擁護してもらう形で核開発をすることはできないぞと
意気揚々と解説をしていた。


しかし、本当に中国と北朝鮮の関係は悪化しているのだろうか?

次の記事を読んでみよう。


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中国と北朝鮮の貿易額が増加




中国の税関が、同国と北朝鮮との貿易額が増加したことを明らかにしました。

フランス通信によりますと、中国の税関当局の報道官は
13日木曜、北京で記者会見し、


今年前半6ヶ月における北朝鮮との貿易額が
10.5%上昇したことを明らかにしています。




また、
「今年前半6ヶ月で、北朝鮮に対する中国の輸出は29.1%増加し、
北朝鮮からの輸入は13.2%減少した」としました。



アメリカは、対北朝鮮制裁に関する中国の行動に抗議しています。


韓国のムン・ジェイン大統領も最近、
中国の政府関係者に対し、北朝鮮のけん制に向けてさらなる努力を行うよう求めました。


国連安保理は、北朝鮮のミサイル実験を受け、同国に制裁を科しています。



北朝鮮はこれまでにたびたび、アメリカと韓国が軍事演習を継続し、
またアメリカ軍が朝鮮半島に駐留している限り、
北朝鮮も先制攻撃能力や軍事力の強化を続行する、と表明しています。


http://parstoday.com/ja/news/world-i32682

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ご覧の通り、むしろ中朝間の経済活動はより活発になっているのである。


確かに中国は北朝鮮の核開発に対し否定的な見解を見せているが、
それはアメリカのアジアにおける軍事活動への非難とセットになったものだ。
(日本のメディアは得てして後者の部分をカットして報道する)


ロシアも同様の見解で、
アメリカがアジアにおいて軍事的プレゼンスを拡大しようとする動きを
自粛することをもって、朝鮮半島の安定は達成されるとみている。



ところが、このことが日本のメディアによると
大変、厄介で無理解な言動になるようで、例えば朝日新聞は次のように述べる。


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もう一つの難題は、ロシアと中国である。

国連安保理の論議で、
ICBM発射を非難する報道声明はロシアの同意を得られず難航している。

北朝鮮への圧力は、ロシアと中国の協力なしには効果を発揮しない。

ICBMが地球規模の安保環境を危うくする以上、
中国もロシアもこれまで以上の危機感を日米韓と共有できるはずだ。

米国との覇権争いのような狭い対外戦術の中に朝鮮半島問題を位置づけるのではなく、
国際社会の安定という共通の利益に目を向けるべきだ。


http://shasetsu.seesaa.net/article/451647083.html
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この社説、非常に問題の有るものなので、
改めて批判・検討を加えたいが、これによると、
アメリカのアジアにおける軍拡の動きは些事に当たるようで、
中国とロシアのスタンスは非難されるべきものになるそうだ。


冗談ではない。
実際には、アメリカや韓国、日本こそアジアの脅威になっている。


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アジアの情勢変化の中で、
日本と韓国は、アメリカ、ロシア、中国と共に、北朝鮮に敵対的な立場を取っています。


最近、ロシアの政府高官が、
朝鮮半島問題の解決を促すロードマップの作成を明らかにしました。


このロードマップは、2つの原則に基づいています。


一つ目は、北朝鮮の核問題は、この国とアメリカの二国間の問題であり、
両国はその解決を目指して話し合うべきだということです。


二つ目は、このようなアプローチの土台作りとして、
アメリカはまず、地域における軍事演習をやめ、
それに対して北朝鮮もまた、核・ミサイル実験を停止すべきだ
ということです。



こうした中、アメリカは、朝鮮半島問題の解決を望んでおらず、
それを、朝鮮半島や日本における軍事駐留を続け、
中国に対して政治的、軍事的な圧力を行使するための機会として利用しています。


そのため、ロシアが提案したロードマップは、
アメリカやその同盟国に歓迎されませんでした。




とはいえ、
日本と韓国は、朝鮮半島で戦争が起こった場合の結果を強く懸念しています。


なぜなら、北朝鮮は、脅迫を感じた場合、
日本と韓国の基地にいるアメリカ軍やそれらの国の施設を攻撃することになり、
その被害は予想を超えるものとなると考えられるからです。


こうしたことから、アメリカのアジア政策に同調せざるを得ない日本と韓国の政府は、
ロシアと中国による、朝鮮半島問題の解決への積極的な役割を求めているのです。



中国の大学のロシア・中央アジア研究所の所長は次のように語っています。


「地域における戦争の勃発を防ぐことができるのは、中国とロシアだけである。
 中国政府は、朝鮮半島の情勢変化に対して強い懸念を抱いており、
 そのような戦争が地域のすべての国にどれほど悲劇的な結果をもたらすかを知っている。

 とはいえ、双方の政治的な不信感は状況をさらに悪化させており、
 深刻な軍事衝突が起きる可能性もあるが、まだそれを阻止することはできる」



ロシアは、中国に比べて、朝鮮半島危機による影響が少ないものの、
この危機を中国に更に近づくために利用しようとしています。


その一方で、日本と韓国の懸念を利用し、この危機を機会に変えようとしています。


ウクライナやクリミアの問題を巡って
アメリカやヨーロッパの制裁を受けているロシアは、中国と同調し、
制裁による圧力を緩和するために、中国との技術、経済協力を利用しようとしています。


ロシアは、日本とも北方領土問題による対立を抱えており、
ロシアが、北朝鮮問題を巡って、日本と韓国の懸念を緩和した
見返りを求める可能性も決してないわけではありません。


こうしたことから、日本政府はこの問題の解決へのロシアの支援を求めていますが、
慎重に行動しており、その要請を中国のみに向けてきました。


イギリスのシンクタンク、王立国際問題研究所・国際関係機関の政治顧問である
ジェームズ・シェール氏は次のように語っています。



「朝鮮半島情勢は、1953年以来、最悪の状態にある。
だが、地域の軍事衝突を予想する前に、真の脅威を生み出したり、
それを減らしたりするさまざまな出来事が存在することを忘れてはならない。
それら一連の出来事には、双方の挑発的な行動、脅迫的な発言、肯定的な努力がある」



いずれにせよ、アメリカは朝鮮半島において、
あらゆるレベルで、常に緊張を作り出してきました。



なぜなら、アメリカの一部の関係者によれば、
地域に戦争の影を落とすだけでも、アメリカにとっては戦争と同じ効果があるからです。


いずれにせよ、日本政府は、
国連安保理の常任理事国であるロシアが、中国と真剣な協力を行えば、
北朝鮮問題に対するアメリカの政策に効果的な影響を及ぼすことができると考えています。


ただしそれには、各国が、地域の安全と利益を、決断の基準に据えることが必要なのです。

http://parstoday.com/ja/news/japan-i32584
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朝鮮半島の問題の解決は
アメリカの北朝鮮に対する敵視政策の放棄なしには達成されない。

非常にシンプルな解なのだが、
政府に忖度してか、あいも変わらず敵視政策を続行するよう叫ぶマスメディア。


中朝間の不仲説はまさに、安倍政権が全力で米朝との衝突を煽っていた時期に
頻繁に発信されたものだった。情報のチェックをするのではなく、
権力側に都合の良いデマゴーグを再生産するのであれば、
メディアの社会的存在意義はどこにあるのだろうか。



朝鮮学校の教科書は危険なのか?

2017-06-19 22:12:48 | 北朝鮮
数年前に翻訳された北朝鮮の歴史教科書を読んだことがある。


その際に感じたのが「随分と反米的だな」というもので、
これは戦後に事実上、植民地化された日本の現代史に関する
現行の社会科教科書の余りにも小綺麗な記述とは雲泥の差である。



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「韓日会談」はたがいの対立と、
朝鮮人民、日本、アジア人民の強い反対闘争によって何度も中断したが、
「三角軍事同盟」の実現を追求するアメリカが積極的に介入したため
1965年6月22日に「韓日条約」と「韓日協定」の締結によって終わった。

「韓日協定」は過去に日帝が朝鮮民族に対しておかした罪に対する謝罪と、
それ相応の補償もなしに、南朝鮮当局者と締結した屈辱的で売国的な協定だった。


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上の記述は1965年の日韓基本条約に関しての教科書の記述だが、
これなどはまさにその通りで、この時に経済支援を目当てに
過去の植民地支配を免罪しようとしたために、
日韓は、未だに慰安婦問題の解決すらろくにされない状況のままでいる。


また、この時期、国内外で反対運動が起きたのも事実。
(詳しくは吉岡吉典『日韓基本条約が置き去りにしたもの』を参照)


我が国を代表するジャーナリスト、池上彰大先生などは
「慰安婦問題は日韓基本条約で解決済みなんです!
 それをほじくり返す韓国がおかしいんです!」と日本政府の言い分を
 そっくりそのまま伝えている。


まぁ、それはともかく、上の教科書の記述からも
朝鮮半島の現代史は大国であるアメリカの息がかかっていた
という史観から物語られていることがわかるのではないだろうか。



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朝鮮戦争を契機に「高度成長」に踏みこんだ日本は、
アメリカの東アジア戦略に積極的に加担することで、
自分たちの海外進出の野望を実現しようとした。


朴正煕はアメリカの「援助」が減ったため、
日本資本を引き入れて「経済発展」をなしとげ、貧困にあえぐ人民の反抗と、
共和国の経済成長に力を得ていっそう高まる統一運動を抑え、
軍事「政権」を維持し続けることができた。

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韓国の教科書には、
ここまで露骨に過去の軍事独裁政権を批判した記述がない。


実際、この時期は
朴正煕に反対する人物は得てして獄中にいたわけだし、
在日コリアンの中にも北朝鮮のスパイと認定され、監禁・拷問を受けた人間もいた。


KCIAによる金大中の拉致事件などは、その典型的な例だろう。





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軍事独裁「政権」の樹立

南朝鮮で激化していた民主化運動や祖国統一運動を阻み、
自分たちのアジア政策にいっそう効果的に服務する強力な統治体制を打ち立てるために、
アメリカは南朝鮮軍部の親米反共勢力をあおり、5.16「軍事クーデター」を起こした。

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朴正煕は「布告」を連発して、あらゆる政党、社会団体を解散させ、
「民族日報社」を襲撃して、チョ・ヨンス社長をはじめ
社員を逮捕するなど言論出版機関を強制的に解散させた。

6月10日には金鍾泌らが「中央情報部(KClA)」を設置して、
「軍政」の中枢的暴圧装置を作った。

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朝鮮学校の歴史教科書は、朝鮮半島の歴史教科書であるわけだが、
その内容は、上のように一貫して、アメリカと追従勢力によって
民衆が軍事政権の憂き目にあったという点が強調されている



フィリピン、チリ、ペルーなど
およそアメリカは冷戦時、いわゆる独裁国家を支援してきたし、
それは今でも続いている(その筆頭に挙げるべき国はサウジアラビアだろう)


現代史の記述が疎かになっている日韓の教科書と比較して、
ここまでアメリカの帝国主義政策に直に触れ、
批判的に記述できるのかと感心した覚えがある。


・・・のだが、どうも、これが
無償教育除外支持派によると、「反日」的になるらしい。



日本のことなど脇に置かれているような気がするのだが、
これまで記述した内容は「大変反日的でけしからん」ことになるそうだ。





これは朝鮮学校で実施されたテストの答案「だと言われているもの」だが、
真ん中の韓国併合に関しては4つの選択肢が設けられ、

当時の朝鮮民族が併合に賛成していたか否か、
韓国が植民地にされたか否かが問われている。


当然、ここでの答えは併合に「反対」、韓国は「植民地」にされたになるが、
これが「反日」だと認定されるようだ。



確かに日本のアジアを植民地化せんと奔走した歴史を
思い起こされることは、極右にとってはこの上なく「反日的」だろう。


しかし、それは一般の日本人にとって「反日的」だとは思えない。


アメリカの公民権運動に触れることは、「反米的」なのだろうか。
ナチスのホロコーストに言及する人間はドイツ人に差別感情を抱いているのだろうか?



http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/006/876/28/N000/000/000/syakai5-020-021_20080918052948.jpg

http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/006/876/28/N000/000/000/syakai5-018-019.jpg


上に列挙された画像は、同じく朝鮮学校の社会科教科書を翻訳したものであるが、
これを見ても、どのへんが反日的なのか、北朝鮮礼賛なのかピンと来ない。


少なくとも「日本人死ね!」とは書かれていないし
「北朝鮮は天国のような国だ!」とも書かれていない。


北朝鮮は各国と外交関係を結んでいるのは事実であるし、
強盛大国を目指して政府が奔走しているのも事実である。


単にほとんどの日本人が知らないだけの話なのだが、
「北朝鮮は鎖国政策を取っているに違いない」と信じてる人間からすれば、
ここに書かれている内容は「嘘」になるらしい。訳が分からない。



朝鮮学校の教科書が日本のそれと毛色が違うのは確かだし、
それはアメリカに対して真っ向から非難することが出来ない日本の弱みに
反映されたものでもあるが、少なくとも日本人に差別感情を植え付けようとするものではない。


主なターゲットはアメリカであり、次点で韓国の軍事政権時の為政者である。






漫画「ドラえもん」で例えるなら、
出木杉くんがジャイアンの横暴を非難したところ、
なぜか、スネ夫が「俺を差別するなぁああ!」とキレたようなもので、

まるっきり意味不明というか、何を考えているのかさっぱりわからない。


そもそも、日常的に暴力の被害にあっているのは
スネ夫も同じではないかと思うのだが、このスネ夫、
「ジャイアンは俺を守ってくれる(キリッ)」と黄昏ているわけで、
現実が見えていない。


アメリカに対する攻撃的姿勢を「日本に対する差別感情を扇動するもの」とみなし、
大騒ぎするのはクレイジーとしか言いようがないのだが、
ミサイル騒動しかり、核実験しかり、北朝鮮に関する日本の反応は、
おおよそ、上のようなものである。一言で言えば、意味が分からない。


北朝鮮の主張を拾ってみる限りでは、
彼らは「日本がアメリカを支持すればするほど、
同盟国、敵国とみなさざるを得なくなる」と考えているのだが、
どうも、その辺がよくわかっていないらしい。



日本における朝鮮学校の批判は、
得てして総連に個人的な感情を抱いている活動家に
コメントをさせ、いかに朝鮮学校が腐っているかと喧伝する類のものが多いが、
これなどはネオナチに現代ドイツ史についてレクチャーさせるようなもので、
意見としては尊重するが、学術的には価値がほとんどない。


のだが、なぜか、これらプロパガンダと真っ当な社会学者の意見とを
両論併記して、さも前者に傾聴の価値ありとする印象を与えてしまっていて、
そこは、非常に悪質かつ問題のあるものだなと思わざるを得ない。


共謀罪成立を喜ぶ愛国者って一体・・・

2017-06-17 18:47:43 | 日本政治
共謀罪強行成立記念!
安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」
(http://lite-ra.com/2017/06/post-3245.html)


共謀罪の何がいけないかについては
リテラを初め、他サイトが言及しているので、
ここでは別の大変重要かつ見落とされている点について触れる。


警視庁公安、右翼団体「草莽崛起の会」
構成員20人の運転免許証を取り消す
(https://matome.naver.jp/odai/2148854745323188101)


賛成派・反対派ともに
政府の意向に反対する人物や団体が不当に逮捕される恐れがある
という認識の下で動いているように感じるのだが、


右翼団体も被害にあう可能性がある

という点についての認識が甘い気がする。


現在の公安は右翼団体も監視の対象にしており、
森友学園や在特会の事件を見ても知れるように、
与党は利用できる間は彼らを持ち上げるが、
自分の身に危険が及ぶと知るや否や、簡単に切り捨てる。


特に橋下徹の在特会批判は
虎が狼に対して「獣を食って殺すとは不届き千万!」と一括したような話で、
「俺は差別主義者ではありませんよ」とアピールするために桜井誠を
スケープゴートにしたような事件だった(不思議とネット右翼はスルーしているが)


つまり、将来的に政府が右翼を捨て駒にして
政権の維持に努めようとすることは十分考えられるし、
現に、森友学園・加計学園問題では、そのように動いている。


私は右翼の街宣活動やビラ配り、デモ行進については
否定的に考えてはいるが、だからといって、彼らを不当に逮捕することが
合法となるものに賛成する気にもならない。


ところが、当の愛国ごっこに興じる人々が
やれめでたやとはしゃいでいるのは、何と言うか、
の器具が揃ったことを喜ぶ豚や牛を見ているようで何とも言えない気持ちになる。



共謀罪の問題は、誰が危険か否かの境界を公権力が恣意的に線引きする点にある。


支持をするのは
「自分は大丈夫」という根拠のない自信を持っているからなのか
「チョーセン人が捕まる様をこの目で見たい」という願望を持っているからなのかは知らない。

だが、つまるところ、それは「他人はどうなってもかまわない」という性根が
前提として存在するわけで、どこまで行っても、それは「視野が狭い」のだろうなと感じられる。




脱北者の証言に関する省察

2017-05-23 23:24:51 | 北朝鮮
米・ディプロマット紙の記事より。要所の個所だけ日本語で補足文を載せる。
長いので、とりあえず前編だけ紹介。




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In between sobs,
Park Yeonmi gave her account of life in North Korea.


Public executions, arbitrary arrests,
torture and suffocating censorship were
just some of the harsh realities faced by people in “the darkest place in the world,”



the 21-year-old defector told an international audience at the Young World Summit in Dublin,
Ireland earlier this month.



While North Korean defectors have spoken publicly about life under the regime before,


the attractive university student has arguably captured
the attention of international media like no other in recent memory.


Her emotional speech in Dublin received coverage in outlets such as the BBC,
Al Jazeera and the Daily Mail.

(ここまではパク・ヨンミという脱北者のスピーチがあり、
 メディアも大々的に取り上げたということが書かれている。)



But alongside outpourings of sympathy and praise,
Park has also attracted a quieter but no less persistent stream of criticism
from skeptics who reject her characterization of North Korea.


(賞賛を得た一方で、彼女の北朝鮮の描写には批判もなされたということ)



Felix Abt is one such critic.

(その批判の一例が以下の文で紹介されている)


A Swiss-born businessman who lived and worked in North Korea for seven years until 2009,
he has frequently questioned media portrayals of the human rights situation in the country.

(この人物は2009年まで7年間北朝鮮で生活し、勤務していたビジネスマン。
 北朝鮮の人権状況についてのメディアの説明に異議を唱えている)



“I suppose many of the stories that defectors present are true,
even though they cannot be verified.
I only challenge claims that are obviously exaggerated or plain false,”

(亡命者の物語の多くは検証不可であっても、事実だとは思うが、
 明らかな誇張や間違いには物を申したい)


Abt told The Diplomat by email.


In Park’s case,

Abt has honed in on a recent newspaper interview
that quoted her drawing a comparison between a canal in Dublin and rivers in her homeland:

“Every morning at riversides like this you can see dead bodies floating.
If you go out in the morning, they are there.”*

(北朝鮮の運河や河川には死体が浮かんでいるという証言)


Abt responded to the article with a photo on his Twitter account
that appears to show children happily at play in a North Korean river.

(北朝鮮の河川で遊んでいる子供の写真を見せながら)


I widely traveled the country and didn’t come across dead bodies, said Abt.

(「国中を旅しましたが、死体なぞ見たことがありませんよ」と反論)



“Sure, there may have been floating bodies in rivers
in the terrible crisis years of the 90s when 600,000 people
starved to death according to an estimate by the U.N. official w
ho was then supervising foreign aid during the famine in the country.

(確かに、90年代の危機の時代なら川に死体が浮かんでいたのかもしれませんよ?)

But since then, things have clearly changed for the better
(no more mass starvation, recovery of the economy etc.)
which many activists do not recognize.”

(けれども、それから事態は明確に良い方向へ変わりました。
 大量の餓死もありませんし、経済も回復した)


Asked if he could be sure he hadn’t been shielded from abuses by the authorities,
Abt said he had traveled unaccompanied to even remote provinces of the country.

(当局の監視によって虐待を隠されていたのではないかと質問すると、
 旅行中は遠方の県ですら1人だったと回答。)


“Also, my visits were of a more technical nature
and were therefore not orchestrated like in the case of foreign visitors
and resident diplomats,” he said.

(私の訪問は外国の観光客や外交官のように当局によって案内されたものではない)


“So I did see poverty-stricken areas,
infrastructure in shambles, broken bridges over rivers and
I would certainly have seen dead bodies if there were any.”

(それゆえに、極貧地帯も私は見たことがあります。
 仮に死体が流れているなら確実に見ているでしょう)


Abt has challenged other defectors’ claims in the past,
such as comments by former doctor Ri Kwang-chol in 2006

(ここからは別の亡命者の証言についても批判している)


that there are no physically disabled people in North Korea
due to a policy of infanticide for handicapped newborns.

(北朝鮮では障害を持って生まれた新生児は殺されているので
 身体障碍者がいないのだという証言があるが)


On the contrary, Abt noted,
Pyongyang sent athletes to this month’s Asian Paralympics in South Korea’s Incheon.
It was North Korea’s first participation in the competition.

(実際には北朝鮮はパラリンピックに選手を送っている)


Other defectors, however,
have told media such as Free North Korea Radio of
widespread infanticide against disabled infants.

(にも関わらず「広範な障害を持つ幼児の殺害があるのだ」と
  自由北朝鮮ラジオなどで証言している脱北者がいる)



Abt has detractors of his own, some of whom, such as Joshua Stanton,
the operator of the blog One Free Korea, have called him an apologist.

(Abt氏を中傷する者は多い。例えば一つの自由朝鮮というブログは
 彼のことを北朝鮮の擁護者と呼んだ)



“I can understand their reaction:
 if you read and hear only horrifying reports about a country for decades,
 you expect nothing but shocking accounts of cruelty and subjection to come out of it,”
said Abt.

(何十年も北朝鮮を怖がらせる報告にしか触れていないなら、
 そういうリアクションを起こすのも無理はない。)


In one interview,
Abt had lamented that Westerners often misunderstand
how people in Confucian societies such as North Korea show
respect to their leaders and expect to be cared for in return.

(あるインタビューでは、Abt氏は
 西側の人間がしばしば、北朝鮮のような儒教社会に住む人間が
 どれだけ彼らの指導者を尊敬し、大事に思っているかを誤解していると指摘)



“If no meaningful economic and social reforms are carried out
 the people may withdraw the ‘mandate of heaven’ (outlined by Confucius),”

(全く意味のない経済・社会改革が実行されていたのであれば、
 天命(ここでは革命という意味)が起きていたでしょう)


http://thediplomat.com/2014/10/north-korea-defectors-and-their-skeptics/

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アジアプレスやデイリーNKのようなNEDから支援を受けている情報機関は
内部の密告者を通じて北朝鮮の情報を仕入れていると豪語する。


だが、実際には、当の脱北者から「それはありえない」と反論されることもあり、
また、その証言も礼金と引き換えにされているという致命的な問題がある。

【翻訳記事】アジアプレスの
「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」報道の嘘・捏造・歪曲を撃つ! その1


「特に特ダネ記事に没頭する余り、
 今や北朝鮮から入って来る情報は北朝鮮通信員の取材中心ではなく、
 企画取材をする傾向まで表れている。だが北朝鮮で活動する通信員達は
 民主主義社会でのマスコミの価値と役割に対する理解が全くなく、
 経済的代価によって情報を提供する。

 情報を提供する北朝鮮通信員には一種のインセンティブ
(北朝鮮の所得の現実を考慮すれば、これは莫大な経済的報酬だ)が提供される。

 代わりに北朝鮮通信員達は、北朝鮮当局の統制下で自身の命を担保に活動せねばならない。

 こうして企画取材に没頭する余り、対北関連ニュースの歪曲はよりひどくなる傾向がある。
 主に保守陣営の言論媒体達は自分の口に合うように北朝鮮ニュースを報道するのだが、
 北朝鮮情報を十分に把握する事の出来ない大多数の市民達はそれをストレートに信じるしかない。」

(同記事より抜粋)



情報提供者が利益を目当てに誤情報を流すことはあり得るし、
現にそうやって不正確な情報が流れている現実がある。


ここで私が問いたいのは「脱北者の言葉を信じるな」ではなくて、
脱北者の証言を信じるためにも、聴く側はきちんと実証をすべきだ」ということである。



どうも、左右問わず、日本には脱北者ファンクラブなるものが存在するらしく、
亡命した人間の言葉はすべからく真実であり、疑うこと、すなわち悪と信じるカルトな風潮がある。


一言で脱北者と言っても、全員が全員、同じ証言をするわけではない。
事実、過去に脱北者の問いかけによって明らかになった誤報も存在する。


ところが、なぜなのか全く理解できないが、彼らのイメージでは
亡命者は全て同じ証言をするに違いないという謎の根拠なき確信があり、その点を指摘すると
「それは脱北者を侮辱する行為だぞ」とか「貴様は北朝鮮の工作員なのだ」といった
おいおい・・・と言いたくなる彼ら流に言えば「発狂」をされてしまう。



その割りには、裏が取れた慰安婦の証言を「偽証の疑いがある」とみなしたり、
戦争体験者の反戦論について「現実を知らない」と否定したりと何やら必死である。


慰安婦や反戦論者はいくらでも侮辱しても差し支えないということなのだろうか?


慰安婦の証言と脱北者の証言の決定的な違いは
前者が歴史家によって実証されているのに対して、後者は実証無しに信仰されているという点にある。



金正男の報道と同じで、「情報筋」がこう話した、だから事実なのだという
論理的とは言い難い、どちらかと言えば妄信に近い形で誤報が垂れ流しになっている。



その誤報を後々、訂正すれば問題はないのだが、
私の知る限り、メディアが誤報を訂正したことはないし、
個人に至ってはなおさら、間違いを指摘されても主張を取り下げようとはしない。



つまり「それは間違いだ」と明らかにされたにも関わらず、
その間違いを訂正しない現実が存在している。



これはストレートに表現すれば、
「意図的に嘘をついている」ということだ。




理屈の上では嘘だと判明したにも関わらず「知ったことか」とデマを流し続ける。
悪質極まりないが、彼らの中では、自分たちは検証をしているということになっているらしい。


正しいのか間違いなのかよくわからない情報を大量生産することは、
結果的には、脱北者全体の証言の信ぴょう性を下げてしまうことに繋がるのだが、
誤報が判明した後も訂正をしない・出版を停止しないあたり、気にならないようである。




カルト

特定の対象を熱狂的に崇拝したり礼賛したりすること。また、その集団。異端的宗教。


(https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88-178058)


根拠がないのにある主張が正しいと確信する。それは宗教に似ている。
「神がなぜ存在するのか、それは神が存在すると私が思うからだ」というあの心理に似ている。


神の存在を信じ続ける行為そのものが重要であって、
信じる内容が正しいかどうかは問題にならない。


もしくは疑うという行為そのものが最大のタブーとなっているので、
信じる以外の選択肢を選ぼうとはしない。


こういう現象を俗に「反知性主義」と呼ぶが、
私は「反知性」という表現は少々、不適だと考えている。

というのも、彼らの中では、
嘘だと論理的に証明されてもなお、正しいと信じ続ける行為は「知性的」であって、
「世間の間違った知識を正しい知識によって修正してやる」という目的がそこにある。


なぜ「正しいのか」ということを実証する必要はここにはない。
(向こうが間違っているという結論が先に存在するので)



つまり、知性そのものについて疑っているわけではなく、
自分こそ知性なのだという自信がここにあり、それゆえに折れない所がある。

あえて言えば、一般の知性は科学的知性(この表現も古臭いとは思うが)であるのに対して、
あちらはカルト的知性(なぜ正しいか?それは正しいからだ)とでもなるのだろうか?


少々、話が脱線してしまった。
今回の記事で取り上げた文章はまだ後半が残っている。
こちらについては後日、また紹介したいと思う。

米韓が合同軍事演習を敢行する理由。

2017-05-10 21:51:31 | 北朝鮮
過去の記事だが、未だに有効性があると思うので再度、URLを載せる。

米韓合同軍事演習とは何か1


「米国や韓国との連携も強めていく。人権問題として、北朝鮮追及の国際化をはかる。
 北朝鮮は今、国連の追及で防戦に必死じゃないですか。

 米韓軍事演習も圧力になっています。

 軍事演習をすると、北朝鮮もそれに合わせて、軍隊を動かさなければいけない。
 演習は3月と8月ですから、田植えの準備と刈り入れのときです。この圧力はキツイ。

 国際的な圧力を高めれば、外貨が枯渇し、内紛の火種になっていく。
 こうやって、相手の政治的権威を揺さぶるんです。そうしないと相手は脅威を感じない。
 餓死者が何万人出たところで、眉毛ひとつ動かさないような国ですからね。
 しかし、トップの権威が揺らぐと、あの国は意外にもろいんです。」


餓死者が何万出ても眉毛一つ動かさないと語る一方で、
確実に北朝鮮の食糧事情に打撃を与えるような軍事演習を良策として推奨する凄まじい矛盾。


北朝鮮の食糧事情は格段に改善されていることは何度も指摘しているのでここでは割愛する。


確実に北朝鮮の経済発展を阻害(それは北朝鮮国民の生活水準上昇の妨げになる)
する行為を喜々として称えながら、いかにも自分が末端の国民を憂いでいるかのような論調。

偽善以外の何物でもない。