時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮の朝鮮労働党大会

2016-05-07 00:11:21 | 北朝鮮
朝鮮労働党大会が36年ぶりに開かれた。この大会は9日まで続く模様。
金正恩政権になってから北朝鮮では次々と新しい政策が行われている。今大会もその一環なのだろう。


モスクワ国際関係大学国際調査研究所の上級研究員、アンドレイ・イワノフ氏は
この大会が党内の保守派をけん制し、さらなる改革を行うため開催されたと指摘する。


-----------------------------------------------------------------
北朝鮮は国際的な孤立状態から急速な勢いで抜け出ようとし始めた。
こんな北朝鮮と外交関係を樹立しようという国は西側諸国のなかに出始めた。

とはいえ、当時、ジョージ・ブッシュ政権の米国がこうしたプロセスを激しく阻害したのも事実である。
というのもブッシュ大統領を取り巻く補佐官らは北朝鮮問題は交渉ではなく、
喉元を絞めあげる制裁を用いて解決すべきと考える者らばかりだったからだ。

米国側からの非難は改 革に反対する北朝鮮エリートの保守層の影響力を強めてしまい、
おそらくはこうした者らとの戦いに疲れ、金正日氏は死期を早めてしまったのだろう。
2011年12月にこの世を去った。

ところが、国内の改革反対者の抵抗、米国のあからさまな敵意、
保守が政権に返り咲いた韓国の、どう考えても利口とは言えない政策にもかかわらず、
政権を引き継いだ金正恩氏は改革に新たな弾みをつけた。

こうしたことは、スイスのエリート校で学んだこの人物からは十分期待できたことだった。

かくて北朝鮮のバラエティーショーのステージには、
以前なら『米国帝国主義』のシンボルとして禁じられていたミッキーマウスやミニー、
西側のスケールからしてもあまりにも短すぎるミニスカートをはいた少女歌手が登場しはじめる。

また北朝鮮経済には成金が出現した。この成金らは一見、『役人』の仮面を被っているが、
実際は自前の工場や企業を持つ、れっきとした経営者だ。

一言で言うならば、北朝鮮は変わりつつある。

この国は民主主義の輸出国である米国のずたずたにされた
ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン、リビアのような悲惨な運命を繰り返さないために、
軍備に途方もない経費を費やさざるを得ないものの、それでも新たな経済を築こうとしているのだ。



この路線を揺ぎ無いものとするために金正恩氏は今、大会を必要としている。

若い指導者は西側からの多大な圧力に抗し、保守派の改革反対を克服するために
与党政権党の党員らの支持を取り付けたいと望んでいる。

この試みが吉とでるかどうか。ピョンヤンへ赴き、大会の様子を見てみようと思う。


http://jp.sputniknews.com/opinion/20160428/2042507.html
-----------------------------------------------------------------

当たり前の話だが、朝鮮労働党も組織である以上、内部には派閥が存在する。

アマ・プロ問わず日本の北朝鮮専門家は、総じて北朝鮮が独裁国家だと吹聴するが、
実際には複雑な対立構造があり、この点に注目しないと眼前の現象が理解できないと思う。


一言でいえば、
北朝鮮は日本と同じ国家であり、私たちとさして変わらないという認識が日本人専門家にはない。

日本やアメリカとは絶対的に違う国なのだという先入観がある。
そのため、次のようなレポートを書くことはないし、プロパガンダとみなして無視してしまう。

-------------------------------------------------------------
平壌に変革の兆しがあることは「肉眼でも」明らかだ。

この4年間で平壌に新たな空港ができた。
質的にソウルの「仁川」、東京の「成田」、北京の「北京首都」空港に並ぶものだ。
また、30-40階建ての住宅が立ち並び、そのモダンなデザインで目を楽しませている。
また、学者や文化人を中心とした新たな入植者数千人も喜びの種だ。


同じ期間に平壌を走る車の数が何倍にもなり、その大半が国産モデルだ。
高級ジープなど日本車も目に付く。商店やレストランの数も増えた。

路上で人々はもはや外国人を敬遠せず、今や喜んで、
大会の取材に平壌に集まった外国人ジャーナリストのインタビューに応じている。



たとえば80歳ほどの老人が米国テレビの取材に答え、
北朝鮮人はもはや米国を敵視していないが、一方でワシントンを破壊することができる
核ミサイル兵器の開発を通じて防衛能力を向上させる朝鮮労働党の路線を熱く支持している、と語った。


一方、胸につけたバッジに金正日の肖像画が見えるこざっぱりした上着を着た若い男は、
大会後、北朝鮮はより豊かで強力になるだろうとの確信を語った。

大会後には金正恩氏のバッジもできると考えられている。多くの専門家は、
若いリーダーは大会後に地位を強化し、2人の前任指導者、彼の祖父と父と同格になり、
「金正恩時代」が宣言され、彼の誕生日は祝日と宣言されるだろう、と見ている。


今回のスローガンは「勝利者の大会」。平壌の路上にもこの言葉はよく見られる。
内容についての正確な情報はまだないが、金正恩氏のレポートのほかに、
党憲章の改正、党と政府の人員交代などが期待されている。

しかし、一番気になるのは、大会で経済改革路線が正式決定されるかどうかだ。
改革はかなり以前から行なわれており、
ますます中国やベトナムで成功をおさめた改革を思わせるものになっている。


平壌に到着したロシアの著名な専門家アレクサンドル・ジェビン氏が
スプートニク特派員に語ったところでは、北朝鮮の指導者らは、改革という言葉をあまり好んでいない。
変化に焦点を当てると、ひとつの疑問を生じさせる。

「ではこれまで労働党は国を間違ったコースに導いていたのか?」。
したがって、改革は継続され、加速されるだろうが、おそらく無用な騒ぎは起こさないだろう、
とジェビン氏。

よって、大会で取られるだろう重要な決定が公開されることはおそらくなく、
それがどのように実施されるかを見て、事後的に、
大会でどのような決定が取られたのかを知ることができるのみだという。

http://jp.sputniknews.com/opinion/20160506/2087017.html
---------------------------------------------------------------------

露外務省、北朝鮮銀行との関係制限法令を準備


スプートニク紙はロシアの国営メディアであるはずなのだが、
わりかし強硬な姿勢に移りつつあるロシア政府とは異なる立場を取っている。

北朝鮮への先制攻撃は正当化できない

他方で、スプートニク紙は労働党大会で
大会会場に外国人ジャーナリストが入場できなかったこともしっかり書いている。

外国人ジャーナリスト 朝鮮労働党大会が開かれている建物に入れず

総じていえば、ロシア国営のプロパガンダ機関であるはずのスプートニク紙のほうが
日本よりも公平で中立的な良い記事を多く掲載している。実に皮肉なことだと思う。