身元確認、決め手は「子供」のDNA型 金正男氏殺害
金正男暗殺事件が発生してから1か月が経過した。
この間、判明した事実は「被害者が本当に金正男だった」ということだけだった。
しかも、その判別方法すらメディアはろくに知らず、それならそれでマレーシア政府の発表があるまで
待てばいいのに、やれ日本政府が指紋を提供しただの、中国政府が提供しただの好い加減な憶測をしている。
噂話を流す程度なら、そのへんのまとめ記事サイトでも出来てしまう。
プロの記者が読者に伝えるべきなのは、きちんと裏が取れた確かな情報ではないかと思うのだが。
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日本政府がマレーシアに指紋情報提供 正男氏特定に活用か
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、
金正男(キムジョンナム)氏がマレーシアで殺害された事件で、
日本政府が不法入国しようとした正男氏から採取した指紋情報をマレーシア政府に提供していた。
日本政府関係者が13日、明らかにした。マレーシア政府は、
他国からの指紋情報などをもとに正男氏ログイン前の続きの身元を特定した可能性がある。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12840006.html?rm=150
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この記事が掲載されたのが14日、最初の記事が掲載されたのは15日。
わずか1日の間で、大分異なった見解を書いている。
これに限らず、朝日新聞の記事は「Fact(事実」」と「Opinion(意見)」を混同したものが多い。
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北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、
金正男(キムジョンナム)氏が殺害されて13日で1カ月。
北朝鮮の犯行グループが綿密に計画を練っていたことが、マレーシア当局の捜査で明らかになってきた。
ただ、北朝鮮は遺体の引き渡しを求めつつも、捜査協力を拒む姿勢で、全容解明への道は険しい。
「黒い帽子の男」。現場となったクアラルンプール国際空港などの監視カメラの映像から、
捜査員がこう呼ぶ指名手配犯がいる。北朝鮮人のリ・ジウ容疑者(29)。黒幕の一人だ。
昨年11月ごろ、テレビ出演のスカウトを装い、実行犯のベトナム人、ドアン・ティ・フォン被告(28)を勧誘。
ベトナムや韓国を旅して親密になり、他の容疑者らに紹介したという。
フォン被告は周囲に「彼氏ができた」と語っていた。
監視カメラの映像によると、ジウ容疑者は犯行の10日ほど前からフォン被告の宿に出入りし、
荷物を運んだり、宿代を払ったりしていた。黒い帽子を目深にかぶり、顔を伏せて歩いた。
2人は犯行当日の2月13日朝も一緒に空港の出発ホールに向かった。もう1人の実行犯で、
1月にグループに加わったインドネシア人のシティ・アイシャ被告(25)には、
北朝鮮の秘密警察のオ・ジョンギル容疑者(54)らが付き添った。
http://www.asahi.com/articles/ASK3F5GYMK3FUHBI01L.html
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まず、重要な点として、北朝鮮は当初から共同捜査を切望していた。
北朝鮮の共同捜査提案拒否=金正男氏殺害でマレーシア
北朝鮮が絡む事件は得てして、当の北朝鮮は真相解明に協力する姿勢を見せている一方で、
単独捜査に固執する現地の警察が拒否、その後、
なぜか北朝鮮が捜査に協力しようとしないと非難される傾向がある。
自分たちが「北朝鮮の手など借りない」と手を振り払っておきながら、
都合の良い時だけ「北朝鮮は捜査に協力しない」と苛立つのはいかがなものだろうか?
次に、この記事を書いた遠藤雄司記者は
警察関係者が「現在、以下のように考えている」と話した「見解」を絶対の「事実」とみなしている。
犯行準備の経緯をここまで詳しく書くには、容疑者の自白と、それを裏付ける証拠が必要だ。
仮に、そのような証言や証拠が存在し、記者がすっぱ抜いたならば、大ニュースになっている。
目下、北朝鮮は暗殺に関与しているという「疑い」は持たれているが、
実際に関与していたという「証拠」はまだ見つかっていない。
記事の内容が事実であれば、これは大スクープであり、もっと大々的に報じられてしかるべきだ。
(言ってみれば、尖閣が日本領だと示す決定的な証拠が見つかったようなものだとイメージしてもらいたい)
それなのに一面を飾っていないのは、警察「関係者」からの
コメントにすぎないことを編集部も自覚しているからではないか?
そもそも無罪を主張している容疑者が「私は犯行の準備をこのように行った」と懇切丁寧に説明するだろうか?
遠藤記者が典型的だが、「関係者」からの憶測(オピニオン)を事実(ファクト)として
物語調に書く人間が異常に多い。
「たぶん、こういうことですよ」という警察側の見解が
「マレーシア当局の捜査で明らかになってきた」と事実に格上げされている。
ちなみに、この記事では
「正男氏が現れると、年長の秘密警察員、リ・ジェナム容疑者(57)がおもむろに歩き始めた。
紫色のシャツは目立ち、合図になったとみられる。
同時にジウ容疑者が渡した容器の液体を実行犯2人が両手になじませたと捜査関係者は語る。
2人は正男氏をはさみ打つように近づき、猛毒「VX」を含む液体を顔面に塗りつけた。」
という文章があるが、秘密警察員だと主張しているのは韓国の情報機関であり、
本来なら「秘密警察員だと韓国の情報機関が主張しているリ・ジェナム」と書くべき個所が、
「秘密警察員、リ・ジェナム容疑者」と断定されている。
また、「猛毒「VX」を含む液体を顔面に塗りつけた」と書かれているが、
VXは、わずか数ミリグラムで死に至る猛毒であり、両手に馴染ませれば間違いなく死ぬ。
米連邦捜査局(FBI)アカデミーで毒性学の講義をするジョン・トレストレイル氏が
「素手で触ったのに皮膚に浸透せず安全だった? そのような毒劇物は私が知る限りない」と
コメントしているように、毒物の専門家たちは警察の見解を否定している。
要するに、朝日の記者は専門家に取材し、裏を取ることすらせず、
警察側の話を絶対不変の真実として得意気に書き綴っているのである。
ジャーナリストである本田勝一氏は、何十年も前から
このような関係者の言葉を垂れ流すだけでろくに取材しようとしない姿勢を辛辣に批判していたが、
ここまでいい加減な記事が実際に書かれるのを見ると、さすが原発事故が起きるまで
原子力発電の素晴らしさと安全性を紙面に掲載していた朝日新聞社だけあるなと感心してしまう。
良い加減、北朝鮮の核ミサイル配備の経緯と、その後の軌跡について書かなければと
思っていたのだが、こういう記事が当たり前のように書かれ、商売が出来てしまう現状、
もう少し、この事件について触れなければいけないような気もする。
幸い、ちょうど良い記事がいくつかあるので、それを別個に紹介していこうと思う。
・追記
例の記事は3つの記事のうちの1つで、共同執筆者として
乗京真知記者、都留悦史記者、ソウル支局の牧野愛博記者が並んでいる。
それぞれの記事を各々が担当したものだと思われるが、
この手の報道が数名の記者とデスクによって創造(という言葉が似あうと思う)
されたものであることは確認しておいたほうが良いかもしれない。
この文章を書く最中に、朝日新聞がウクライナで内戦が勃発した時も、
国軍が地方の都市を空爆し、民間人を攻撃していることに全く反応しない一方で、
東南部の独立政府に否定的な人間の言葉を載せて空爆の正当性を主張していたことを思いだした。
テレビ局を中心とする日本メディアの右傾化(安倍政権の主張を垂れ流すだけの宣伝カーと化している)は
よく指摘されているが、それは海外に派遣されている記者も同様で、日本政府や現地政府に都合の良い方向で
取材を進める傾向があるように強く感じる。
普通、取材というものは権力者がAだと言った内容を本当はBかもしれないと疑い、
裏を取るべきものだが、もはや裏を取るような能力がある記者が存在しないのではないか?
なにせ、誤報だったとしても(当初は毒針で殺した、布で殺したと言っていたはずなのに、
いつの間にか毒を塗った手で殺したことになっている)周囲は気にしないので謝罪も訂正もしなくても良い。
垂れ流すだけ垂れ流せば、記事になるのだからこれ以上お手軽なものはない。
そういう手抜き記事を書き続けた結果、パンチ力のある記事が書ける人間が減ったか、
あるいはそういう人間がいても記事にしてもらえない風潮があるのではとつい邪推してしまった。
金正男暗殺事件が発生してから1か月が経過した。
この間、判明した事実は「被害者が本当に金正男だった」ということだけだった。
しかも、その判別方法すらメディアはろくに知らず、それならそれでマレーシア政府の発表があるまで
待てばいいのに、やれ日本政府が指紋を提供しただの、中国政府が提供しただの好い加減な憶測をしている。
噂話を流す程度なら、そのへんのまとめ記事サイトでも出来てしまう。
プロの記者が読者に伝えるべきなのは、きちんと裏が取れた確かな情報ではないかと思うのだが。
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日本政府がマレーシアに指紋情報提供 正男氏特定に活用か
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、
金正男(キムジョンナム)氏がマレーシアで殺害された事件で、
日本政府が不法入国しようとした正男氏から採取した指紋情報をマレーシア政府に提供していた。
日本政府関係者が13日、明らかにした。マレーシア政府は、
他国からの指紋情報などをもとに正男氏ログイン前の続きの身元を特定した可能性がある。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12840006.html?rm=150
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この記事が掲載されたのが14日、最初の記事が掲載されたのは15日。
わずか1日の間で、大分異なった見解を書いている。
これに限らず、朝日新聞の記事は「Fact(事実」」と「Opinion(意見)」を混同したものが多い。
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北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、
金正男(キムジョンナム)氏が殺害されて13日で1カ月。
北朝鮮の犯行グループが綿密に計画を練っていたことが、マレーシア当局の捜査で明らかになってきた。
ただ、北朝鮮は遺体の引き渡しを求めつつも、捜査協力を拒む姿勢で、全容解明への道は険しい。
「黒い帽子の男」。現場となったクアラルンプール国際空港などの監視カメラの映像から、
捜査員がこう呼ぶ指名手配犯がいる。北朝鮮人のリ・ジウ容疑者(29)。黒幕の一人だ。
昨年11月ごろ、テレビ出演のスカウトを装い、実行犯のベトナム人、ドアン・ティ・フォン被告(28)を勧誘。
ベトナムや韓国を旅して親密になり、他の容疑者らに紹介したという。
フォン被告は周囲に「彼氏ができた」と語っていた。
監視カメラの映像によると、ジウ容疑者は犯行の10日ほど前からフォン被告の宿に出入りし、
荷物を運んだり、宿代を払ったりしていた。黒い帽子を目深にかぶり、顔を伏せて歩いた。
2人は犯行当日の2月13日朝も一緒に空港の出発ホールに向かった。もう1人の実行犯で、
1月にグループに加わったインドネシア人のシティ・アイシャ被告(25)には、
北朝鮮の秘密警察のオ・ジョンギル容疑者(54)らが付き添った。
http://www.asahi.com/articles/ASK3F5GYMK3FUHBI01L.html
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まず、重要な点として、北朝鮮は当初から共同捜査を切望していた。
北朝鮮の共同捜査提案拒否=金正男氏殺害でマレーシア
北朝鮮が絡む事件は得てして、当の北朝鮮は真相解明に協力する姿勢を見せている一方で、
単独捜査に固執する現地の警察が拒否、その後、
なぜか北朝鮮が捜査に協力しようとしないと非難される傾向がある。
自分たちが「北朝鮮の手など借りない」と手を振り払っておきながら、
都合の良い時だけ「北朝鮮は捜査に協力しない」と苛立つのはいかがなものだろうか?
次に、この記事を書いた遠藤雄司記者は
警察関係者が「現在、以下のように考えている」と話した「見解」を絶対の「事実」とみなしている。
犯行準備の経緯をここまで詳しく書くには、容疑者の自白と、それを裏付ける証拠が必要だ。
仮に、そのような証言や証拠が存在し、記者がすっぱ抜いたならば、大ニュースになっている。
目下、北朝鮮は暗殺に関与しているという「疑い」は持たれているが、
実際に関与していたという「証拠」はまだ見つかっていない。
記事の内容が事実であれば、これは大スクープであり、もっと大々的に報じられてしかるべきだ。
(言ってみれば、尖閣が日本領だと示す決定的な証拠が見つかったようなものだとイメージしてもらいたい)
それなのに一面を飾っていないのは、警察「関係者」からの
コメントにすぎないことを編集部も自覚しているからではないか?
そもそも無罪を主張している容疑者が「私は犯行の準備をこのように行った」と懇切丁寧に説明するだろうか?
遠藤記者が典型的だが、「関係者」からの憶測(オピニオン)を事実(ファクト)として
物語調に書く人間が異常に多い。
「たぶん、こういうことですよ」という警察側の見解が
「マレーシア当局の捜査で明らかになってきた」と事実に格上げされている。
ちなみに、この記事では
「正男氏が現れると、年長の秘密警察員、リ・ジェナム容疑者(57)がおもむろに歩き始めた。
紫色のシャツは目立ち、合図になったとみられる。
同時にジウ容疑者が渡した容器の液体を実行犯2人が両手になじませたと捜査関係者は語る。
2人は正男氏をはさみ打つように近づき、猛毒「VX」を含む液体を顔面に塗りつけた。」
という文章があるが、秘密警察員だと主張しているのは韓国の情報機関であり、
本来なら「秘密警察員だと韓国の情報機関が主張しているリ・ジェナム」と書くべき個所が、
「秘密警察員、リ・ジェナム容疑者」と断定されている。
また、「猛毒「VX」を含む液体を顔面に塗りつけた」と書かれているが、
VXは、わずか数ミリグラムで死に至る猛毒であり、両手に馴染ませれば間違いなく死ぬ。
米連邦捜査局(FBI)アカデミーで毒性学の講義をするジョン・トレストレイル氏が
「素手で触ったのに皮膚に浸透せず安全だった? そのような毒劇物は私が知る限りない」と
コメントしているように、毒物の専門家たちは警察の見解を否定している。
要するに、朝日の記者は専門家に取材し、裏を取ることすらせず、
警察側の話を絶対不変の真実として得意気に書き綴っているのである。
ジャーナリストである本田勝一氏は、何十年も前から
このような関係者の言葉を垂れ流すだけでろくに取材しようとしない姿勢を辛辣に批判していたが、
ここまでいい加減な記事が実際に書かれるのを見ると、さすが原発事故が起きるまで
原子力発電の素晴らしさと安全性を紙面に掲載していた朝日新聞社だけあるなと感心してしまう。
良い加減、北朝鮮の核ミサイル配備の経緯と、その後の軌跡について書かなければと
思っていたのだが、こういう記事が当たり前のように書かれ、商売が出来てしまう現状、
もう少し、この事件について触れなければいけないような気もする。
幸い、ちょうど良い記事がいくつかあるので、それを別個に紹介していこうと思う。
・追記
例の記事は3つの記事のうちの1つで、共同執筆者として
乗京真知記者、都留悦史記者、ソウル支局の牧野愛博記者が並んでいる。
それぞれの記事を各々が担当したものだと思われるが、
この手の報道が数名の記者とデスクによって創造(という言葉が似あうと思う)
されたものであることは確認しておいたほうが良いかもしれない。
この文章を書く最中に、朝日新聞がウクライナで内戦が勃発した時も、
国軍が地方の都市を空爆し、民間人を攻撃していることに全く反応しない一方で、
東南部の独立政府に否定的な人間の言葉を載せて空爆の正当性を主張していたことを思いだした。
テレビ局を中心とする日本メディアの右傾化(安倍政権の主張を垂れ流すだけの宣伝カーと化している)は
よく指摘されているが、それは海外に派遣されている記者も同様で、日本政府や現地政府に都合の良い方向で
取材を進める傾向があるように強く感じる。
普通、取材というものは権力者がAだと言った内容を本当はBかもしれないと疑い、
裏を取るべきものだが、もはや裏を取るような能力がある記者が存在しないのではないか?
なにせ、誤報だったとしても(当初は毒針で殺した、布で殺したと言っていたはずなのに、
いつの間にか毒を塗った手で殺したことになっている)周囲は気にしないので謝罪も訂正もしなくても良い。
垂れ流すだけ垂れ流せば、記事になるのだからこれ以上お手軽なものはない。
そういう手抜き記事を書き続けた結果、パンチ力のある記事が書ける人間が減ったか、
あるいはそういう人間がいても記事にしてもらえない風潮があるのではとつい邪推してしまった。