Colors of Breath

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エピソード3 『魔界の入り口?』

2009-02-07 20:00:13 | 22.思い出物語

長々とお待たせいたしました。
エピソード3を本日やっとアップできることになりました。
(皆さん、もう忘れていますね。


カテゴリー26.勿忘草(わすれなぐさ)に子供の頃のちょっとした思い出物語を
アップしています。以下のエピソードを予告して、1、2は既に公開済みですが、
その後随分放置しておりました。そして今日やっと3を公開出来る事に。
あまり絵が上手く描けなかったのですが、他愛無い童話のようなものです。
興味のある方は他のエピソードもクリックして、どうぞお楽しみ下さい。
一応ノンフィクションです。

エピソード1 『グリンピースの炊き込みご飯』 公開済み
エピソード2 『底なし沼』(1) (2) (3) 公開済み
エピソード3 『魔界の入り口?』 
番外編 『真夜中のプレゼントには要チュー意!』 (未公開)


 




エピソード3

 『魔界の入り口?』


小さい頃、言い付けられる度に憂鬱になる嫌なお手伝いがありました。

いつも、心の中で「え~?あそこへ行くの?やだなぁ…ぶつぶつ」と小さな反発の
文句を唱えながら、調理用ボールかビニール袋を持ってしぶしぶ外へ出ました。
大抵は夕飯の支度の時ですが、田舎の夕食は大体5時頃、
遅くても6時には食べるので、その前の時間です。
当然夕方と言っても、まだまだ外は明るいです。

さて、そんなに憂鬱なお手伝いって何?とお思いでしょう。
ずばり椎茸採取です。
椎茸を採るのが嫌なの?って、
別に椎茸を採ることそのものは嫌ではありません。
では、いったい何が私をそんなに憂鬱にさせるのか?

採った椎茸を入れる為の袋を持って外へ出ると、
家の北側の日中もあまり日光が当たらない裏側へ回ります。
途端に咽る様な、湿気の篭った独特の臭いが鼻を突きます。
カビ臭いような湿っぽいような、爬虫類の臭いような、独特の臭いです。
一歩家の裏へ回ると、すぐにそんな臭いが体中を覆い、
足下にはびっしりとやたら伸び伸びと苔が生えています。

以前、『苔嫌いだった』ことを書きました。
そう、もう、足下にびっしり苔が生えている時点で恐怖なのだから、
そこへ行くのは毎回肝試しに行くようなものなのです。
特に、椎茸の原木が置かれている場所が嫌でした。

魔物の棲む場所に足を踏み入れる時、前へ一歩踏み込むと
得体の知れない爬虫類や節足動物やそんな気持ちの悪い昆虫達が
ざわざわと這い出し逃げ惑う、そんな映画などがありますが、
気持ちは既にそのような世界に踏み込んだ状態です。

排水用に仕切った石の堰(せき)をチョロチョロと走るイモリや、
普段見ないようなやたら足の長い蜘蛛や小さなゲジゲジや百足、
雨蛙は可愛い物ですが、大きなナメクジが這っているし、
恐ろしい大きさの蟻も現れます。

これらが、なるべくこちらから近付かないようにするにも関わらず、
椎茸を採取している手元から突然現れるから、たまったもんじゃありません。
あなたが子供で、椎茸と一緒にナメクジを掴んだと想像してみて下さい。
椎茸を捥ぎ取ろうとする指の上をゲジゲジが這ったと想像して下さい。

流石に蛇は出たことがありませんが、とにかくあまり怖がりではない私ですら、
ここだけは毎回胆が冷えました。

少し薄暗くなろうものなら、隣家との境の杉の大木が月明かりすら遮り、
猫の額ほどのその場所がどこへ続くとも分からない闇に変わる。
ぽっかりと口を開いた異次元への入り口のように、闇に呑み込まれていきます。

想像力豊かな私の脳内では既に魔界への入り口と化し、
その妄想のせいか、時に恐ろしい夢に睡眠を脅かされる事もありました。
生き埋めにされる夢や、迷路の中に迷い込み脱出できない夢、
度々ではないのが救いと言うか…。

小さい頃の私には何より怖いことだったのに、
今ではそんな私も毛虫や芋虫を育てたりしています。
毎日その成長に一喜一憂し、道端に芋虫の食草などを見かけると、
芋虫がいないかと探したい衝動に駆られる始末です。
他人の畑(人参はキアゲハの食草)を見ると、目が輝いてしまうのでした。

記憶というものは時間の魔法が掛かると不思議なもので、
いい部分だけを焼き付けておこうとするらしい。
あれほど嫌だったものがいつしか興味という好奇心だけになり、
印象を反映させる反射鏡が美しさや面白さを映し出すようになる。
アスファルトやコンクリートに覆われ乾いた匂いしかしなくなった生活環境は、
陽光を遮り瑞々しさを閉じ込めた小さな湿地帯の噎せるような菌類の匂いを、
恋しいとさえ感じさせる。

よくしたもので、あれだけ恐ろしく思えたそんな空間が、
今ではとても大切な思い出になりつつあります。
特に自然に触れる機会が少なくなった今日は、時々懐かしくも、
キラキラと素適な色だけを留めて、色褪せることなく脳裏に焼きついて、
ふとした切欠で微笑ましい感情に変換されて蘇ってきたりするのでした。

こんな思い出が重ねられていく私の人生は案外いいのかも、
と、近頃思うのです。






最後までお付合い頂き ありがとうございます。

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