走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

いろいろな背景を

2021年11月02日 | 仕事
先週参加したワークショップ。良い例えだな、と思ったので紹介。

3人ファシリテイターがいました。そのうちの1人は以前一緒にプロジェクトをしていた人です。しばらく会っていなかったのですが、随分この分野に足を踏み入れて貢献されているな、と思いました。で、このワークショップで彼女はロールプレイをしなければなりません。とても緊張していて、足が震えているし、手もじっとり汗をかいている、と言います。声が震えていることも、胃の中がひっくり返ってしまいそうなほどキリキリしている、と言います。確かにそのように察することができる彼女の様子。

そして、あなたもきっとこのように緊張することがあるはず、と言います。嫌ですよね、逃げ出したいですよね、と。

そして彼女は言った。これが薬物依存のある人が診察に来る時の気持ちなんですよ、と。
依存者とレッテルを貼られ、そのような目線を受け、どうしようもない人間のように扱われる場所。また同じように扱われるのか?うまく診察を受けることができるのか?緊張するけど、逃げ出したいけど、自分ではどうにでもできないから、医療のドアを叩いている。そのように感じたことがありますか?

とワークショップ参加者の医療者へ語りかける。上手い!

もちろん、この後彼女はロールプレイをしました。緊張ガクガクでもやり遂げました。

今の仕事をして8年目。多くの薬物依存の患者と接して、社会の目、医療者の目、ステレオタイプ化によりなおさら医療から離れていってしまっていた患者を多く診てきました。ヒーリングが目的の場所で傷つけられた人々。暴力的な態度、辞められない本人が悪いと責任論を語れば簡単です。しかし現状は異なります。回復への小さなか希望を持ちやって来る人々を理解する努力を社会や医療者はしてきたでしょうか?

以前にも書いたように、他人の理解を100%することは不可能です。しかし理解しようとする努力は続けるべきです。特に医療者はこれを怠れば患者とのギャップはどんどん広がっていきます。

参加者の経験に乗せての説明。上手いな〜と感心しました。薬物依存者だけではありません。高校のクリニックに来る生徒たちも同じです。健康に対して悩んでいるのに、恥ずかしいと思ったり、頭がおかしいのは自分だけではないか?と思ったり、化学療法や放射線療法も説明を聞いてもさっぱり頭に入ってこなかったり、いろんな患者がいろいろな背景を持っていることを医療者は忘れてはならないのです。

冒頭写真:朝7時15分ごろ。日照時間がどんどん短くなっている北の国です。


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