切りたくても切れない

ホスピスボランティアとホスピス看護をしている時、多くのホスピス研修を受けた。死と向かい合うので人間の本質について考えさせられるものが多かった。

今でも覚えているもの。私のホスピス講義に参加した方はご存知でしょう。

自分に関するものを指示通り10枚の紙に１つずつ書いていきます。人物だったり物だったり、思い出だったり。これを通して死に逝く方の疑似体験をすることが目的です。

これでちょっとひねってあるのが、10枚のうち一枚は一番嫌いな人の名前を書かなければなりません。10枚書き終えた後に病気のシュミレーションが始まります。病気が進行して一枚ずつカードを捨てていかなければならなりません。永遠にさようならです。驚くことに、一番最初に捨てるカードは一番嫌いな人でない人が多いのです。

この時に教わったのは、嫌いな人。嫌いになった理由があっても、その体験があなたの人間性を構築した一部だという事。つまり自分らしさの一部なのです。

私はこの体験にショックを覚えました。嫌いな人と選ぶぐらいだからそれなりの理由がある。それなのにその嫌な思い出が自分の一部であると言われたからだ。そして私自身、そのカードは一番に捨てていなかった。

人間は人と関わって生きている。関係は良い関係ばかりでなく、悪い関係でも確実に個に影響を与えているという事だ。それを総括して人生と呼ぶと。

悪い経験、関係、、、それをバネにして飛躍するのか、落ちていくのか、忘れる事に集中するのか、否定し続けるのか、相手を恨むのか、反応はそれぞれだと思う。テレビや映画では死ぬ寸前に過去の過ちを謝罪するなんてシーンが多いですが、実際多くの方の旅立ちに関わってきて、そんな映画のようなシーンばかりではない事もみてきました。ねじれに捻れて苦しむ方もいらっしゃいました。

そういう貴重な体験を通して自分が思ったのは、悪い経験でも噛み砕いて消化する事が大切なのでは？と思うようになりました。その経験が自分に与えた影響(どう変わったのか)を考察し自分の一部として認める事です。自分の一部というのは良い面ばかりではないと思います。それはそれで良いのです。悪い面だろうとも、習慣でも、性格でも、自分の一部になったと言う事実を認める。 それが消化するという事だと。

と、昨日のブログを書きながら、この事を思い出しました。嫌いな人が自分の一部。親に虐待されたり、愛という名の呪縛に苦しんでいる人にはかなり辛い事を書きました。負の力を負のままで体内に留まらせるより、消化できれば、、、。大丈夫です。時間はかかってもできますよ。応援しています。