走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

始まるまで

2015年06月10日 | 仕事
6月初めというのに記録的な猛暑が続いています。アウトリーチで街を回っている時にペットボトルの水を沢山配ります。
昨日は私も暑さにやられて夕方にはドッと疲れてベッドに直行でした。

そんな忙しかった昨日は教会から始まりました。
教会のボランティアが、ほら、あの子知ってる?大丈夫かしら、、、と私に近づいてきた。食事を食べようとしているのだが、ウトウトしている女性。20代ぐらい。見たことのない娘だ。

横に座って話しかけるが反応は少ない。OD(薬物を致死量摂取する) っぽい。揺さぶって起こす。目を開けるが名前や年を聞いても答えない。どんな薬を使ったのかも答えない。私を見ていた他のホームレスがその子はサリーだよ。今朝は一緒にいなかったから何を使ったか知らないなーと。

呼吸を数える18回。年配のホームレス陣には、きっと昨夜眠れなかったんだよ。起こさないで寝させてあげなよ、と懸念された。

しかしODでこのまま呼吸が落ちれば拮抗剤が必要だ。今私はそれを持っていない。救急車を呼ぶ必要がある、、、、

他の患者の診療の合間10ー15分ごとに呼吸を数えた。1時間半が経過した。呼吸は16回より落ちることはない。

教会が閉まるからと起こすと、ムクッと起き上がって外へ歩いて行った。

サリーは日陰でごろりと横になっている。呼吸数も上がってきている。救急車を呼ぶ必要はなさそう。教会の外での仕事を終え、次の場所に移る前にもう一度観察。大丈夫そう。

午後からもう一度見に行く。一人でお休み中。呼吸も安定している。そこへ同じく若い男の子がやってきた。サリーの友達?と聞くと頷く。心配で見にきたの?もう一度頷く。じゃあ今朝一緒にいたんだ。頷く。サリーが今朝何を使ったか知ってる?ODかと思って心配してたのよ、と言うと。ヘロインと言って彼は去っていった。

あーやっぱり。しばらくすると彼はまた戻ってきた。彼もヘロインの影響を受けているのがわかる。

来月から私、拮抗剤の処方を始めるの。この街にも必要でしょう?と言うとようやく声を出した彼。 話ができた。

サリーが起きたら彼女にも伝えてね。ODは怖いからとその場を去った。
来月、新しいプログラムが始まるまで二人とも生きていてくださいよ。

これに関した前回の記事はこちら


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