走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

シンポ感想 ハムリック日本語訳

2021年03月19日 | 仕事

質疑応答ではありませんが、日本の講演者の内容で気づいた事などを書いていきますね。

驚いたのは市原さんがハムリックの日本語訳を話していた時。

「日本語訳はAPNの中心的能力はダイレクトケアと訳されていますが、ハムリックのタームは Direct Clinical Practice です」 と言ったくだりです。聞いた瞬間、通りでと腑に落ちました。

これを 直接ケア= 学士卒業の看護師と同じケア

と勘違いしている人が多いのでは?と思いました。もしくは専門看護師がエキスパートナースの延長線上にあると勘違いしている原因かも、と。

以前も書きましたがケアと言うと看護の専売特許のように思う方が多いようですが、英語圏ではケアは医療全体を指します。

もし私が日本語訳をするなら看護実践とするでしょう。つまり高度実践看護師の実践です。

以前も書いたし、朝倉さんも言っていましたが、高度な教育を受けた人が、それを必要としない業務をするのは賃金の無駄払い、そして学歴に対する冒涜だと思います。よって北米では修士修了者に学士修了者でも出来る事をさせません。

しかし日本では修士を修了していて専門看護師と言うタイトルに対する給付は微々たるものだと聞いています。よって英智を無駄遣いしている感覚が経営者にはないかも知れません。
もちろん現行の診療報酬では専門看護師に関する報酬はつかないと言う(診療報酬については数日語れるぐらい思いが沢山ある、、、)現状で経営者は特別給付をつけにくい現状も然り。専門看護師のモチベーションにも影響を与えるとも思います。しかしこれも卵が先か鶏が先か?論になりますよね。やはり貴方は学士修了者とは違う実績を積み上げていく事で認知されて、価値が特別給付にも反映されるかもしれません。

さてケアかプラクティスかの話に戻って。こちらはカナダの看護協会が2019年に出しているCNSとNPについてです。29ページにあるように Direct comprehensive care と書いてあるように複雑なケアとしています。これまたすぐ難しい患者の直接的ケアと勘違いされると思います。よーく説明文を読んでみてください。学士修了看護師が行うケアとは異なる事が分かると思います。

例えば私がまだ緩和のコンサルチームでClinical Resource Nurse (CRN)として働いていた時、自分の働いている保健機構内での患者の移動(病院からホスピスや在宅へのケアの移行もしくはその逆)は既存のパスウエイでなんら 問題なくスタッフをサポートできるけど、患者が自国(中国とか日本とか)で最期を迎えたいと希望される時はCNSを呼んでいました。旅行日程に耐えれる状況かどうかのアセスメントや受け入れ先のアセスメント、飛行機会社への連絡や受け入れ先の緩和チームとの連絡や旅行保険、旅行中の薬の投与方法、リスクなど家族への説明と指導などはCRNのコンピテンシーを超えていましたから。

え?医師は何をしていたか? CNSが全てアレンジしてから受け入れ先の医師と連絡を取るだけですよ。医師はCNSがしているような細かい情報収集や調整をする任務はありませんから。ケアサマリーを書き、電話して終わり。

以下はチャンスがあればパネルディスカッションで言うつもりだった言葉です。
看護の全てのキーワード(安全、アドボカシー、倫理、コラボレーション、教育など)をミクロ看護(患者と一対一の看護)では何をさしていて、マクロ看護(集団を事象と捉えた看護)では何を意味しているか、考える癖をつけましょう。そうする事で自分の使命がみえて来ると思いますよ。


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