▲筋交いの向きに関しての質問から
筋交いの入れ方についてのご質問は、
以前から、同業者からメールでたびたび頂きます。
こう入れなくてはならない、
という明確な決まりはありませんので
文章で書くのは、非常に難しく、
そのプランごとに考えなくてはなりません。
そのため、筋交いの効果的な入れ方を考えない
建築士が多いのは事実です。
どうお答えするか、迷ってしまうのですが、
専門家の人に簡単に、
私の筋交(耐力壁)の考え方の基本をご説明いたします。
私の考え方が正しいと断言するのではありません。
すべて書けないので、誤解されて伝わるかもしれません。
簡単にお答えできないですし
理解して頂く、上手な説明ができる自信もありません。
ご了承ください。
回答するのをためらっていましたのは、そういった理由です。
一般の方には、非常にわかりにくい、
というか、わからない話だと思います。(^^)ゞ
来年、ホームページを改定する予定ですので
そのときには、この筋交の基本的な向きや入れ方を、
図とともに説明した内容を加える予定です。
私の説明の前に、過去に頂いたご質問の一部をアップしておきます。
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Aさんより
以前のブログの中で、「スジカイの入れ方間違いの指摘」があったかと思いますが、
その後自分なりにも確認してみたのですが、明確な「正しい入れ方」
というのが判断出来ません。
基本を省みるならば、隅角部では、
1階の筋交上端が内側で2階筋交上端が外側の「くの字」かと思われます。
また、通し柱には「く」の交点が接しないよう・
又は配慮(座屈の懸念)する。ということが考えられます。
更には、柱頭柱脚金物のN値が大きくならない様、
筋交の向きを変えて調整する、ということもしております。
(前提として全体の向きのバランスには配慮する)
仰る様に、今回、筋交の入れ方に関して書かれた
資料・指針等がほとんどないことに気付きました。
また他の実務者も、特段の気遣いなく配置している方が多い印象も受けました。
私も、実務者として設計をしているにも拘らず、
筋交の入れ方に関しての判断基準がわかりません。
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Bさんより
私、木造住宅を勉強しております。
筋交の入れ方についてインターネットで調べていたところ、
清水さんのブログにたどり着き、筋交いの入れ方間違いという記事を
拝見させていただきました。
お恥ずかしいのですが、実務経験がまったく無く、
筋交の入れ方についてどうしていいものか悩んでいました。
記事を読んでいて清水さんの仰る「間違い」と言う点が全くわからず、
筋交の向きについても今は関係なく見る考え方もあるようで、
更に頭を悩ませております。
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Cさんより
私は、大工です。最近新しい工務店の新築住宅を始めました。
筋交いの向きが違うような気がして、監督に言うと、
設計士がそれで良いと言うので問題ないという事でした。
構造検査の時に、検査員に尋ねると設計士さんにいえないし・・・
みたいな感じで困った様子でした。
基本的な入れ方があれば、1階、2階の向きを教えて頂きたいのですが。
よろしくお願いいたします。
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では、説明です。
Aさんの筋交いの入れ方の考え方は、
すべて正しく、基本となります。
その前に、さらに基本的で大切な考え方を
説明します。
筋交(耐力壁)の向きや場所を考えるには、
力の流れを考えなくてはいけません。
地震や台風の横からの力を上から下へと、
筋交(耐力壁)を通して、
できるだけ接合部に負担を掛けないように
基礎まで逃がしていきます。
一般的には、屋根、2階、1階、基礎、地面へと
力を逃がしていきます。
実際のプランとこの考え方により、
筋交い(耐力壁)の場所が決まるのですが、
プランの段階から、このことを考ないと
耐震的に良いプランは、できません。
プランをX方向、Y方向に分け、
2階のX方向の力は、筋交い(耐力壁)を通って
1階のX方向の筋交い(耐力壁)で受けて基礎に流すこと。
2階のY方向の力は、筋交い(耐力壁)を通って
1階のY方向の筋交い(耐力壁)で受け基礎に流すこと。
そのために、上下階の力を受け渡しをする
XY方向の同じ筋交い(耐力壁)は
平面的に1階と2階を重ねたときに、接しているか、
半間(91センチ)程度以内の距離にあるのが
できるだけ望ましいです。
その上で、位置や向きを考えることが重要です。
それ以上、1階と2階が離れてしまうと、
力が伝わりにくく
接合部分を傷める可能性があるからです。
構造ブロックの考え方も必要ですし
床の剛性のことも考えないといけませんが、
話が拡がり過ぎるので、カットします。
ご質問では、みなさん、筋交いの向きに関して
となっています。
これに関しても、
上記の考えの上から下へ力を伝えて
逃がしていくことを考えます。
Aさんの基本的な考えに加えて、まとめます。
平面的に出隅になる柱、多くの通し柱であったり、
四隅の柱がそうですね、
ここには、1階は、
筋交いの上部が、内側に傾くように付けます。
そうすると筋交いの下部が、
その出隅の柱下部に付くことになります。
これが、一般的には、良いのです。
その上に壁があって、筋交いが入るなら、
上下の筋交いが連続するように、「く」の字に入れます。
これを、1階も「/」2階も「/」というように
筋交いを同じ方向に傾けて入れると
わざわざ力が伝わりにくい状態に入れることになり、
圧縮筋交いと引張筋交いを分散させるという考え方からも
私の考えでは、「間違った入れ方」となります。
但し、決まりがないので、一般的には、
「間違い」とは言われません。
私の個人的な見解です。
建物の立面を見ますと、1階の両隅の筋交いは、
「ハ」の字になり、
その上に2階があれば
2階の両隅の筋交いは「V」の字になります。
この理由は、Aさんが述べているように、接合部を
出来るだけ痛めない、負担を掛けないためです。
また、同一階では、筋交いの向きを
「ハの字」「V」の字のように一対になるよう向きを
意識して入れていきます。
また、「ハの字」「V」で一対になるよう入れる祭に、
同一直線状、または近い筋交いから優先して
一対にいれると良いでしょう。
常に逆向きになるように交互に入れていくのが
普通です。
それができない場合、
1階なら1階全体で、向きの合計が
均衡するように入れてください。
揺れたときに、引張りと圧縮のどちらにも
偏らずに、筋交いが効くようにするためです。
全体のバランス(偏心率)や、
引抜力(N値)を考慮して
配置する必要は、当然あります。
私で設計では、
上記のバランス(偏心率)や、引抜力(N値)は
コンピューターでリアルタイムで計算を掛けながら
調整していきます。
・偏心率で0.15以内、
・ホールダウン金物は30K以内(部分的に強くし過ぎない)
・壁余裕率は、雑壁を入れずに1.5倍以上
(性能表示計算にすると1.8倍~2倍相当)
を数値的には、基準にしています。
また、これだけでなく、
・構造ブロックの考え方や
・上下階の力の逃がし方
・床倍率との関係
・どの程度の力をその筋交いは負担するか
・接合部分の保護、
・2階を1階より強い筋交い(耐力壁)にしない
などを考えて、耐力壁や準耐力壁を配置します。
直下率の考え方については、
構造ブロックの上下階の力の流れを考えて
アナログ的に思考しています。
外壁面は、基本的に構造用面材を採用し、
筋交いは原則として内壁に、
1階の多くは「たすき掛け」に配置しています。
外壁に筋交いを使わない理由は、
エアコンや24時間換気などの穴で、
筋交いに穴を開けないように
接合部を保護するように
引き抜き力が強くなりすぎないように
引張と圧縮のバランスが良くなるように
断熱性能を確保するように
などがあります。
一般の方には、難しくてすみません。
同一階だけでなく、上下階の力の流れを考えて
筋交いの向きや場所を決める必要がありますが
それが無視されている場合が、多くありますね。
でも、一般的には、決まりがないので
「間違い」とはならないのです。
Aさんは、向きに関して基本的な考え方は
既に、全ておわかりになられています。
実務経験のないBさんが、わからないというのは、
当然のことでしょう。
疑問に思って気にすることが、素晴らしいです。
Cさんのような大工さんがいてくれるだけで、
本当に嬉しいです。
今回、Cさんの質問を受けて、時間を掛けて、
簡単であっても早く書こうと思いました。
余計なことは気にせずに、
早く工事をしなければならない職人さんがほとんど
ですよね。
わかりにくく、簡単な説明ですが
今回の内容が多少でも、参考になれば幸いです。
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ご意見があれば、お気軽にどうぞ!
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