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仲道郁代 ピアノリサイタル(海老名・クラシカル・コンサート#57)

2024-03-10 07:58:14 | 音楽夜話(クラシック)
仲道郁代 ピアノリサイタル(海老名・クラシカル・コンサート#57)


2024年3月9日(土)海老名文化会館大ホール


ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第 8番 ハ短調 Op13 「悲愴」
       :ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 Op27-1
       :ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op27-2「月光」


ショパン:バラード第3番変イ長調Op47
    :ワルツ第9番変イ長調Op69-1
    :前奏曲第4番ホ短調 Op28-4
    :バラード第4番へ短調Op52
    :ポロネーズ第6番変イ長調Op53「英雄」


ソリスト・アンコール
シューマン:「子供の情景」より第7曲ヘ長調「トロイメライ」


ピアノ:ヤマハCFX 


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1000席強の客席はほとんど埋まっていた。
年齢の高い方が多かった。自分もその一人であるが・・・。
30代1990年代に彼女のピアノを聴きに行くことが
多かった。
現在、定期的にリサイタルを組めるピアニストが
何人くらいいるのだろう。多分、一握りのアーティストなの
ではないかと思う。


その当時、駿河台のフィリア・ホールで、彼女のベートーヴェンの
(ソナタを録音中、発売されたものの)リサイタルを聴きに行った
ことがあった。その時も「月光」は演奏された。
あと2曲聴いた覚えがあるのだけれど、当時、やはりまだまだ弾きこみが
必要なのではないかと思われた。


今日のコンサートでは、ベート―ヴェンの「概念」という言葉を使っていた。
思考の切れ味は大学て教えていることもあるのか、ある意味アカデミックで
かみ砕いて話しているのだけれど、彼女の生真面目なものがそのまま出てきて
しまい、レクチュア風のリサイタルになっている。


これまで、番組を作ったりしていて、それ以外にもレクチュア・コンサートの
ようなことはされていたから、トークも慣れている。
ただ、ピアノに向かうだけのコンサートが多い中、彼女のアプローチは
聞き手に訴えかけるものがよりあったりする。


今日のピアノはヤマハのCFX。ここにも演奏会用のグランド・ピアノは
ヤマハとスタインウェイがあったはずだけれど、横浜のヤマハのサービスから
搬入させたものを使っている。彼女はヤマハからエンドースをうけているのかも
しれない。なかなかここまでやるピアニストも少ないだろう。
ちなみに現在のCFXは2000万円超え、同系列の車で例えると、
ホンダのNSXとかトヨタのセンチュリーあたりの車が買えてしまう。
ある意味特別な楽器なのだろう。


それ以外のピアノ、例えばスタイン・ウェイとか、弾いている写真もあるが、
ケース・バイ・ケースなのかもしれない。このホールからすれば、CFXの
音は大きく、ベートーヴェンのソナタの塊のような和音は、ホールの音が
回ってしまい、音色自体濁って聞こえ、ある意味残念だった。
その意味では、ショパンの小品などの方が、音数が少なく和音でも
持続音をキープしたり、強音で弾かないので、ピアノ自体の美音が聴けた。
高音域の単音の奇麗さは格別なものがあった。


ヤマハピアノの音色の好みは分かれる。割と含みのないドライなある意味
ストレートに届く音色なので、スタインウェイなど世界各国で標準的に
使われてる楽器よりもきつく聞こえたりするので、聞き手の耳にどう響くか
かなり違いがあるのではと思う。彼女もメーカー違いのピアノを弾き比べる
コンサートなども行っており、やはり左脳優位なところのある方なのかなと
思ったりする。


後半のショパンの方が、ある意味手馴れているというか、本当に好きで弾いている
のではと思えたりする。ベートーヴェンはまだお勉強的なところがあって、以前、
彼女のレパートリー構成で、ベートーヴェンを強く推した関係者がいて、それから
取り組むようになったように思う。男性性のベートーヴェン、女性性のショパン。
バランスはよく考えられている。


やはり強音を出しても、ベート―ヴェンの和音とショパンのそれは違う。
音楽の訴えどころが違うのかもしれない。
その意味では2人の作曲家は弾き分けられていたと思う。


1990年当時の「月光」や、1990年収録のバラードを聴いていた身と
しては、演奏の深まりを感じた。結構な重労働だと思うが、まだまだ、
ピアノだけ弾いてるわけにもいかないだろうけど、なんでもできてしまう
才人ではある。べたないい方だけれど、健康に留意して続けてほしいと思う。
曲によってブラヴォーも飛び、聴衆の反応はよかった。往年のファンも
多く来ているのかもしれない。


アンコールは「皆様に良い春が巡ってきますように」とコメントされ、
シューマンのトロイメライ(夢)を弾いてお開きになった。
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おまけのネタ。


最近の「太田胃散」のCMの音源は仲道さんが
弾いているという。


ショパン:前奏曲第7番イ長調Op28-7


太田胃散のCMについて。(仲道郁代編))
https://ad1203iphd.smartrelease.jp/prelude/


昔から、胃腸薬だけにイ長調などと、変な落としどころで
笑をとっていたりしたものの、軽めな演奏で、30秒編でも
全曲使われてないのが残念。
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