もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

「花よりもなほ」

2006-06-06 22:35:46 | 映画
是枝監督が”物語”を撮るとどうなるんだろう?
それも時代劇。

予告でも音楽の軽妙さが、
今までの是枝作品とは違う雰囲気をありありと伝えてましたが、
オープニングから笑いが。

廃墟寸前?!のようなぼろすぎる長屋。
個性的というくくりからもはみ出るくらいの、
濃い住人の面々。
そして、キム兄の役はおいしすぎる!!
(この表現、あまり好きではないが、まさしく、なので)

宗左衛門は、父の仇を討つために江戸に出てきて、
この長屋に住んでいた。
仇を探し出せずに、月日は流れ、
寺子屋なんかをひらいてしまう。
何故剣術を教えないのか?
それはからきし腕が立たないから。
与太者のそで吉に、こてんぱんにされて、
厠におしこまれてしまう。
こんなんで仇討ちなんてできるのか?

単なるへっぽこ仇討ちストーリーではなく、
エピソードが入れ子になっている。

”武士なるもの散り際は花のようにいさぎよく”
”桜の散り際が潔いのは来年も咲くから”
”そもそも仇討ちはなんのために”
”父親が子に教えるものは?”
”武士はそんなに偉いのか?”
そして、
あるモノがあるモノに変わる。

宗左を演じた岡田君が主役ですが、
花があります、アップが美しいです。
悩む姿がへっぽこで良いです。

生業がなんだか解らない古田新太・貞四郎が、
軽いけれど、賢く場を切り回してゆく遊び人。
ちとカッコイイ。
加瀬亮・そで吉はいわくあり気なんですが、
存在感めちゃあり。
この人、つくりこみタイプに見えないのに、
作品ごとに顔が違って見えるのね。
宗左が淡い恋心を抱く、宮沢りえ・おさえは、
凛とした魅力的な未亡人として、美しく。
あと、叔父の石橋蓮司のひと言がいいんだよなぁ。

浅野君は、シーンが少なくてセリフも少ないのに、
彼が映ると映像の質感が変わるのが、さすが。
ぼそっとした喋りも、岡田君のそれとは全く違う。

長屋の住人など他のキャストも、
豪華でクセ者揃いで、見逃せないシーンばかり。

町人の生命力の強さが光る
”人斬りの出てこない時代劇”
ステキでしたよ。楽しかったですよ。
へっぽこでも、弱虫でもいいじゃん。
あと、物売りとか風物も良かったです。

是枝作品で、眉間にしわがよらなかったのは初めて。
たまにはこういうのも、お願いしたい。
コメント (9)
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