誰でも一度や二度は見たことがある花。名前と実物が結びつくなくても、よく知られている花「アザミ」だが、棘に触ったことのある人は、意外と少ないかもしれない。 「きれいな花には棘がある」と言えば「バラ」のことだろうが、花にも風情があり、山菜としてもおいしく、薬草にもなる「アザミ」も「トゲ」が特徴。花の種類も多く、250種類もあるといわれていて、私のようなものには種類の同定が難しい。よく見られる色は、赤紫、他に白からピンク、紅色まで。「ノアザミ」のみが、春に咲く。
《名前の由来》・沖縄八重山地方の方言で、「アザ」は「棘」を意味。これに接尾語の「ミ」、または食べられる実の意味で「ミ」が付いた。・きれいな花を見て摘もうとしたら棘があって、驚きあざむかれた。「アザム」が転訛して、「アザミ」に。
《別名》 トゲクサ :葉の「棘」の鋭さと多さから。
≪園芸種≫ 江戸時代の書物にも紹介されているくらい、古くから園芸化が試みられて、花色・花の大きさなど数種の品種があるようです。現在「ドイツアザミ」と総称して売られているものも、、日本の野生種を園芸種にしたもの。新種を売り出す際、新しさを強調する目的で「ドイツ」を称号をつけたのではないかといわれています。
《アザミの種類と、高原のアザミ≫
★ノアザミ(野薊) 春から夏に咲き、総苞が粘る。他の「アザミ」と区別するため「野」がついた。「ノハラアザミ」との違いは、花の時期と、根元の葉が花の時期まで残っていないこと。
★オニアザミ(鬼薊) 夏の花。高さが1メートルほどに育つ。大きくなるもの、棘があるものに「オニ」とつくものが多い。葉先に数個固まって、うつむいて咲く花の総苞に毛がある。
★ノハラアザミ(野原薊) 秋の花。「ノアザミ」によく似ているが、花の時期が異なる。また、枝分かれが少なく、根元の葉が花の時期にもしっかりと残っている。
★フジアザミ(富士薊) 秋の花。富士山麓が主分布であることと、日本で一番大きいアザミであることから「フジザザミ」。「富士牛蒡」「須走り牛蒡」と呼び根を漬物にしていた。これを「山牛蒡」の名前で販売。
★タイアザミ(東北ではナンブアザミ、九州ではツクシアザミと呼ぶ))・ヨシノアザミ(発見者の名前から付いた吉野薊)・モリアザミ(別名牛蒡薊)・海岸に自生するハマアザミなど。
★高原に自生するアザミは、キソアザミ・タテヤマアザミ・センジョウアザミ・ヤツタカネアザミ・ダイニチアザミ・ザオウアザミ・チョウカイアザミ・ガンジュアザミ・ミネアザミ・オニアザミ・ジョウシュウーオニアザミの15種とあります。http://research.kahaku.go.jp/botany/azami/
≪薬草≫ 利尿、解毒、止血、強壮薬,月経不順、子宮筋腫、鼻血、尿血、下血、血圧降下など。 http://www.e-yakusou.com/sou/sou125.htm
《山菜》 どの種類も山菜として食べることができる。
春先に出た新芽は「天ぷら」にするとおいしい。芽や茎は、あえ物・炒め物・煮物に。根を食べようとして掘ってみたら、牛蒡のように深く、途中であきらめた。「やま牛蒡」として漬物で売られているのは、栽培された「モリアザミ」の根。
《アザミの名前の付いた「アザミ」でない「アザミ」》
★キク科キツネアザミ属 キツネアザミ(狐薊) 春の花。 「キツネ」の由来は「胡散臭い・まがい物」の意味。アザミのまがい物。あるいは「アザミ」と思ったら「アザミ」ではなく、化かされた気分から。葉裏に白い毛が密着。秋に芽が出て、ロゼット状の葉で冬を越す。棘はない。 ★キク科ヒレアザミ属 ヒレアザミ(鰭薊) 春の花。茎に波状の鰭がある。茎にも葉にも鋭い棘がある。全体の感じは「アザミ」によく似ているが、冠毛の違いから別の属に分類されている。
《花が似ているもの》 ★キク科タムラソウ属 「タムラソウ」 秋の花。 花だけ見れば「アザミ」に見えるが、棘がない。
2・ 高嶺の百合の それよりも 秘めたる夢を 一筋に くれない燃ゆる その姿 あざみに深き わが思い
3・ いとしき花よ 汝(ナ)はあざみ 心の花よ 汝はあざみ さだめの道は 果てなくも 香れよせめて わが胸に
口をもて 霧吹くよりも こまかなる 雨に薊の 花はぬれけり 長塚節