(本頁は「鳥海山の花図鑑/初夏3・山頂部」の続きです。)
本項では、概ね七月中旬から八月上旬にかけて咲く花のうち、比較的低所、
鉾立ルートならば鉾立から賽の河原までの間、祓川ルートならば祓川から康新道下部まで、
そして千畳ヶ原付近で見かける花を扱ってみた。
何か間違い等にお気づきの方は遠慮なくご指摘頂きたい。
クロヅル Tripterygium regelii
低山に多いニシキギ科のつる性低木。東北の山ではけっこう高所まで進出する。
よく見かける割に一般的な高山植物図鑑に掲載されていないことが多く、よく名前をたずねられる。
2020/07/30 鉾立付近
クルマユリ Lilium medeoloides
真夏、鉾立から歩き始めると最初に出くわす花のひとつ。御浜や八丁坂の草地でも見かける。
クサボタン Clematis stans
本来低山帯の崩壊地などに多い植物で鉾立付近がリミットと思われる。
クルマユリ 2020/07/30 クサボタン 2020/07/30
マルバキンレイカ Patrinia gibbosa
本来低山帯の崩壊地や岩場に多い。鉾立の少し先、県境付近の岩場で見かけた。
2020/07/30
アカモノ(イワハゼ) Gaultheria adenothrix
実は真夏に紅く熟す。食用可だが個人的には美味いとは思わない。
2020/07/30
ハナニガナ Ixeridium dentatum subsp. albiflorum
登山道沿いに多いが、他の草や笹が密生する場所には進出しないようだ。花色は黄の他に白も有る。
なお鳥海山や月山の高山帯にはもう一種、別のニガナ属が生育している。こちらの花色は乳白色。
2020/07/17
ニガナ属 Ixeridium の一種
比較的高所の雪渓際や千畳ヶ原など湿った場所で見られる。
開花時期は雪解けに左右されるようで、場所によっては秋に咲くものもある。
先のハナニガナに較べると、茎や葉は肉厚な印象、頭花はやや大きめで花色は乳白色。
同じ花は月山の山頂付近でも見かけているが、種名はわからない。
お分かりの方、どうかお教え願いたい。
以下、2021/07/27追加記載。詳しい方より、クモマニガナ Ixeridium dentatum subsp. kimuranum の乳白色タイプではないか
とのご指摘を頂く。
2020/07/17
ヤマブキショウマ Aruncus dioicus var. kamtschaticus
低山帯の林縁や草地に多いが、ときに高所、岩場にも進出する。
トリアシショウマ(ユキノシタ科)によく似ているが、こちらはバラ科。小葉の特徴(艶の有無)などで識別する。
ちなみにトリアシショウマの葉には少し艶がある。
2020/07/30
ハリブキ Oplopanax japonicus
ウコギ科の低木、全体に針状の棘が密生する。花は緑色で地味だが、赤くなった実はよく目立つ。
イワオトギリ Hypericum kamtschaticum var. hondoense
ハリブキ 2020/07/30 イワオトギリ 2018/07/20
オガラバナ Acer ukurunduense
ムクロジ科カエデの一種。祓川ルートの下部では多く見かける。秋の紅葉は美しい。
2013/08/11
カラマツソウ Thalictrum aquilegifolium var. intermedium
祓川ルートの下半分や千畳ヶ原に多い。葉は複葉で葉柄の基部に丸い小さな葉(托葉)がある。
よく似たミヤマカラマツは、それが無いので区別できる。
2020/07/30 千畳ヶ原にて。
カラマツソウの托葉
ミヤマカラマツ Thalictrum filamentosum var. tenurum
名前に「ミヤマ」と付くが、カラマツソウより高所にあるわけではなく、出羽丘陵では低標高の沢筋などでも見かける。
鳥海山では比較的少なく、鉾立付近と康新道で見たのみ。
モミジカラマツ Trautvetteria caroliniensis var. japonica
祓川ルートの下半分や鳥海湖周辺、千畳ヶ原に大規模な群生がある。
花はカラマツソウとそっくりだが、葉は単葉で掌状(モミジのような葉)なので花が無くても区別できる。
雪解けの遅い場所では秋に咲いていることも有る。
ミヤマカラマツ 2015/07/11 康新道にて。 モミジカラマツ2015/07/11
祓川ルートは花の種類が少なく、しかも地味な花ばかりの印象(ハクサンイチゲやニッコウキスゲは皆無)だが、
それには理由があるようだ。
残雪が多すぎて、いろいろな花が生育する余裕が無いのだろう。
真夏以降に行っても、ミズバショウのような春の花が咲き出したりしていて、不思議な気分になってしまう。
雪田性のフロラ、ヒナザクラやイワイチョウ、チングルマ、ハクサンボウフウなどは多いが、
季節に関係なく、雪が融けだした場所から順次咲き出している。
2013/08/11 祓川ルートの雪渓(賽の河原)
ミズバショウ Lysichiton camtschatcense
春に咲くイメージが有るが、祓川ルートは残雪が多く、真夏になって咲き出すものが多い。
祓川ルートの雪渓とミズバショウ。2013/08/11 ミズバショウ 2015/07/11
ハクサンオオバコ Plantago hakusanensis
鳥海山にはオオバコの仲間が二種類生えている。
ひとつは下界にも多いオオバコでこちらは登山道に限定。
もうひとつはハクサンオオバコで雪田や雪渓の縁など湿った場所に特徴的だ。
2008/08/12
ヒロハユキザサ(ミドリユキザサ) Maianthemum yesoense
2015/07/11
オオバキスミレ Viola brevistipulata
低山では春に咲くが、千畳ヶ原では真夏近くになって咲く。
2020/07/17
オオバツツジ Rhododendron nipponicum
日本海側の高山に分布するツツジの一種。地味なので見過ごされやすい。
写真は花が終わる寸前だった。今後、もっと良いものが撮れたら差し替えようと思う。
トキソウ Pogonia japonica
通常、花の色は桃色だが、鳥海山では白しか見ていない。
オオバツツジ 2020/07/30 千畳ヶ原にて。 トキソウ 2020/07/30 千畳ヶ原にて。
「盛夏2・お花畑」に続く。
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