15日 叔母の家がある久慈浜は河口近くにあり家のすぐ前に久慈川が流れている。3月11日の震災でも一番心配だった。が竹藪の崖を背に数メートル高台にあるため川の水はあふれたものの、被害を受けずに済んだ。結婚したての頃、ここにお邪魔して、シジミやハマグリをとったり船に乗せてもらったり、幼い長男を連れて心置きなく遊ばせてもらった思い出深い場所だ。今はいない叔父の優しい遺影に手を合わせ、母に一番似ている叔母と一緒に記念撮影してきた。
30分程ナビに導かれて母の実家につく。もうすっかり幼いころの佇まいではない。夏休みになるといとこ達が集まって、ひがないちにち遊び暮れていたなつかしい家。一昨年、伯父が他界した時、義母の介護疲れと体調不良が重なって葬儀に参列できなかったことがいつも心につかえていた。仏前に手を合わせ、秋田を訪れてくれた日を思い出す。大好きな伯父だった。
レンタカーを返す時間15時に間に合せ、水戸から東京へと向かう。浅草橋のビジネスホテルにチェックイン。清潔で、コンビニ、コインランドリーが併設し長期滞在する人も多いという。素泊まり1人5000円。二泊した。
16日 午前中は下町の小岩に降り立ち、新婚時代を過ごした場所を捜し歩いた。見当を付けたが、目印になる川以外面影はなし。2歳にならない長男をベビーカーに乗せて当てもなく歩いて見つけた善養寺というお寺があった。タクシーに乗り寺の名を告げると、樹齢〇百年の松の素晴らしい枝振りが見えてきて感激した。唯一思い出がそのままの場所だった。
〈善養寺 すべて一本の松の枝です〉
下総中山に1人住まいする父方の叔母と駅で待ち合わせ、法華経寺を参ってお昼を一緒に食べた。物事にこだわらない気性の叔母はまだまだ足腰もしゃんとしていて、元気そのもの、私達よりしっかりしている。「暖かくなったらもう一度秋田にいくわよ」きっと来てくれるだろう。さわやかに別れた。
この夜は「万世」というお店で、めったにない贅沢、牛のしゃぶしゃぶを食べる。今回の旅の目的は終え、心がゆったりする。
17日 浅草まで地下鉄に乗り、荷物をコインロッカーに預けて浅草寺付近をうろうろし、浅草演芸ホールでしばし落語を聞いて16時56分のこまちに充分間に合うはずだった。