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「年々にわが悲しみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり」
(岡本かの子 「老妓抄」より)
私の大学は山の中にあった。田舎育ちの私には下宿か大学かのどちらかは田舎がよかった。
いくつか大学の下見に行ったとき、入学した大学に着いたのは日も沈みかけた夕暮れ時、一面のうす桃色の空を見て、「ここだ!」と決心した。
その大学に入り、紅葉の季節になると、燃えるような山を見ていつもこの歌を思い出した。特に秋の歌というわけではなかったと思う。ただ、この歌は私の中では深まり行く秋そのものに感じられる。
ベビーカーでの散歩中、よくぞこれほどに赤く染まったことよ、とその紅の鮮やかさに目をうばわれて、はっと息がもれた。
秋、わびしさ、さびしさ、枯れる、散る、落ちる、肌寒さ・・・
どちらかというと、沈みがちな傾向の言葉が並ぶ。
そこを、かの子は「いよよ華やぐ」と表現した。
素晴らしい命の尊さを感じます。
私の晩年もそうありたいです。
静かに味わいたい記事です。
ありがとうございました。