森山大道さんをテーマにしたドキュメンタリー映画があると知り、早速観てみました。
Watch The Past is Always New, The Future is Always Nostalgic Photographer Daido Moriyama | Netflix
This documentary follows acclaimed photographer Daido Moriyama's ...
森山大道さんご自身、森山さんの撮る写真、森山さんと一緒に仕事をする皆さんのいずれも素晴らしく、久し振りに観て良かったと思える映画でした。
映画を観ていて特に驚いたのは、森山さんの若々しさです。映画を撮影していた時点でも恐らく80歳を超えておられるのに、Tシャツにジーンズ姿で街を歩き、走り、時には屈んで外の景色をどんどんと切り取っていきます。森山さんほどの方であればどんな機材でも使えるでしょうに、カメラはコピー機だと仰って、一般のカメラ入門者が使うような何年も前のコンパクトデジタルカメラで写真を撮っていらっしゃる。そしてまったく偉ぶらないのです。実際に偉いから偉ぶる必要もないのかも知れませんが、僕のような写真にあまり詳しくない人でも知っている著名な作家さんがこういう感じの方だと知って、良い意味で拍子抜けしてしまいました。80歳を超えても椅子の上でふんぞり返ることもなく、軽装で外に出て写真を撮ることにこだわるその姿に、人としてかくありたいと思いました。
森山大道さんその人に興味を持ったので、近くの大型書店に森山さんの本を探しに出掛けました。有名作家とあって写真集や関連書籍が何冊も陳列されており、それらの中から森山さんが『森山大道 路上スナップのススメ』と題した新書を出されていることを知りました。森山さんのインタビューと写真をまとめた本のようなので、同氏を知るには最適だと考え、会計を済ませて家路につきました。
大作家に対して失礼な物言いかも知れませんが、森山さんの写真は新書というフォーマットによく合う気がしました。以前、篠山紀信さんが写真は消費されるものといった趣旨のことを仰っていた記憶があるのですが、新書という書籍の中でも消費に近いフォーマットの中で、街を「コピー機」で切り取っている森山さんの写真はとても映えるのです。また、本の途中から、同氏がフィルムカメラからコンパクトデジタルカメラに持ち替えた直後の写真、しかも文脈から恐らくGR DIGITAIL IIを思われるカメラで撮った写真を観ることが出来、私にとっては願ったり叶ったりの内容でした。
しかし、写真にもまして興味深かったのが本書の中で森山さんが発する言葉です。基本的には同じことを仰っていて、質を求めるには量が必要であること、コンセプトとか撮り方にとらわれずまずは外に出掛けてとにかく撮ること。こうしたアドバイスは特に写真に限った話ではないですよね。例えば仕事で営業活動を行うときも、十分な見込み顧客のリストがなければ、顧客の質も何も議論のしようがないでしょうし、ましてや特定顧客セグメントにどうアプローチするかといったことを頭で考えていても何も進みません。スナップ写真をテーマにした本ですが、人生訓のように読めてしまいました。
まさに「過去はいつも新しく、未来は常に懐かしい」ということでしょうか。