複雑な制度保育基準ばらばらに
「教育」「教育・保育」「保育」の三つの認定
来年4月から「子ども・子育て支援新制度」(新制度)が実施されようとしています。
政省令がやっと出され足立区は9月の議会で新制度にかかわる諸基準、12月に保育料についての条例を議決する予定です。
新制度は、現在の幼稚園、保育所の制度の大改編を狙うものです。特に政府は認定こども園と小規模保育を保育の受け皿として強く打ち出し、幼稚園・保育所を認定こども園に変わるように促進しています。来年度からすべての公立の幼稚園・保育所を認定こども園に変えようとしている自治体もあります。
保育短時間(8時間)と標準時間(11時間)へ
新制度になれば介護保険制度のように認定を受けることになり、「教育」「教育・保育」「保育」の三つの認定に区分されます。
今は分けられていない「保育」時間が短時間保育(8時間)と標準時間(11時間)とに分けられます。
さまざまな施設形態ごとに、職員の配置基準、給食の有無、保育料など保育の基準や環境は大きく異なります。
こうした制度は複雑難解で、行政や園の関係者らも「よくわからない」というほどです。
待機児解消は?
政府は新制度で認定こども園や小規模保育を推進し待機児童の受皿を広げるといいます。ところが認定こども園は、待機児が多い3歳未満の子の受け入れを義務付けられておらず、その受皿となる保証はありません。
保育士資格の基準が緩和
小規模保育は保育士資格の基準が緩和され、面積基準は自治体に委ねられるなど、同じ保育認定を受けた子どもが、施設形態の違いによって保育条件に大きな格差が生まれることになります。
どうして今、新制度なの?
新制度は、政府が医療・年金・介護の大改悪とともに『税と社会保障の一体改革』として進めようとしていることです。自民党政権は1980年代から、財政支出の削減や規制緩和、民間委託などを断行し、保育の公的な責任を後退させてきました。
2000年に株式会社の参入、06年に幼・保一体の「認定こども園」制度をスタートさせたのもその流れです。しかし多くの反対で計画通り進みませんでした。その現状「打開」のため2012年の国会で民主党政権のもと、民主、自民、公明の3党によって強行されたのが新制度です。
保育の市場化を要求
新制度では幼稚園、保育所のあり方とともに、お金の流れも変えられます。
認可の私立保育所以外は施設と利用者との直接契約方式が基本となり、これまで規制されていた「税金」の活用が緩和され、株式会社の参入を後押ししようというのです。こうした保育の市場化を要求してきたのは財界です。
新制度は消費税10%を財源にしています。政府は子育て支援のためといますが、制度発足前から予算不足で保育士の処遇改善を削るなど破たんしています。
幼稚園や保育所のこれからは
幼稚園・保育所は制度も役割も異なる施設として発展してきました。将来的な在り方は要求と運動、国民的な議論と合意によってきめられていくものです。新制度が進める幼稚園と保育所の合体や公的責任の後退はとんでもないことです。すべての子どもの豊かな教育・保育を受ける権利の保障は国と自治体が責任をもって行うべきです。
子育て支援の財源は、国民の所得を引き上げ、税金の無駄遣いと大企業・大資産家への優遇税制を正せば消費税に頼らなくても確保できます。