「こんなところにも文化の違い?」
僕がイリノイ大学大学院(at Urbana-Champaign)で勉強していた頃のお話。多くの教科の中で最も手強かったものの一つが、Dr. Green(女性の教授で、50代だったかな?)の統語論(Syntax)の授業。この人は女性ですが(別に差別的な気持ちはありませんので、念のため)、ともかく厳しい!あ、そうそう、この先生は常に医者のような白い上着を着ていたのが特徴的でした。それとメガネ。いかにも神経質そうな女史でしたが、その道ではよく知られた学者でした。
勉強は教室だけではだめと、我々学生に小さなノートを持たせ、疑問に思った英文構造があったら常にメモしておくよう指示。もちろん、その疑問を書くだけではだめで、それなりの分析もするようにとのご指示。ノートは定期的に回収され、彼女によってチェックされ、しかも、成績がつけられ返却される始末。いやはや、毎日ネタ探しに大変でした。この教授のクラスでは笑いは一切なし!12、3人の学生は、いつも戦々恐々として授業に臨んでいました。あ、ちょっとでも宿題をしていないのがわかると、厳しいお叱りの言葉が待っていましたね~そういえば(でも、結果的にはいいクラスだったですよ(^^))。
そんな緊張した授業が続いていたある日のこと。いつも通り我々は、いつ質問が飛んでくるかわからない中、必死で難しい英文構造の話を聞き、理解しようと努力し、ノートを忙しく取って、やっとのことで50分の授業時間が終ろうした時、Dr. Greenは、いつも通りあのちょっと厳しく、冷たい口調でこう言いました。
Green: Do you have any questions about this, class? Anyone? Are you sure that you have no questions? Okay, then, see you next week.
「ふ~、終わった。さ、帰ろ!」と、僕は下を向き本をカバンにしまって帰る準備を始めました。他の学生は次から次にそそくさと部屋を出て行き、部屋に数人しかいなくなった、その時です。誰かがDr. Greenの方に歩いて行くのが見えました。誰だろ?下から見た感じでは東洋人?…と思ってよく見ると、それは日本人の女の子でした。え、何?と思って耳をそば立てると、こんな会話が嫌でも(声が大きいので…)耳に入ってきました。
Japanese Student: Excuse me, Dr. Green.
(すみません、グリーン先生)
Green: Yes.
(はい。)
Japanese Student: Can I ask you some questions?
(ちょっと質問していいですか?)
Green: Depending on the questions.
(質問によりますね。)
Japanese Student: About the last problem?
(最後の問題についてなんですけど)
Green: Then, NO.
(じゃあ、ダメです。)
Japanese Student: But, I have some questions…
(でも、質問があるんですが…)
Green: What did I say at the end of the class?
(授業の最後に私は何て言ったの?)
You heard what I said, didn't you?
(私が言ったこと、あなた、聞いてたでしょ。)
Japanese Student: Yes, but…
(はい、でも…)
Green: I asked you, the class, if you guys had any questions.
(私はあなた達みんなに、質問がないか聞きましたよね。)
There were no questions.
(で、質問はなかった。)
Then, no answers. Period.
(だから、答える必要はない。それだけです。)
Japanese Student: I just did not want to bother the other students.
(私はただ、他の学生のじゃまをしたくなかっただけです。)
Green: That's what you think.
(それは、あなたがそう考えているだけでしょ。)
I will not answer any of your questions.
(私はあなたの質問に、これっぽっちも答えるつもりはないですからね。)
You know why?
(なぜかわかる?)
That is not fair to the other students.
(そんなことをしたら他の学生に対してフェアじゃないからよ。)
The answers to your questions might have benefited the other students.
(あなたの質問に対する答えは、他の学生にとっても役に立つものだったのかもしれないのよ。)
Your attitude is so selfish and egoistic.
(あなたの態度はとても身勝手で、自己中心的だわ。)
Unbelievable.
(信じられないわ。)
そう大声で早口にまくし立てたかと思うと、Dr. Greenはその日本人女子学生を一瞥(べつ)して、ぷいっと早足で教室を出ていきました。え、そう言われた学生はどんな様子だったか、ですって?泣いてました(…)。まあ、僕もあそこまで、あの口調で言われたら、やっぱり泣いちゃうかもしれませんね(それはないです…)。まあ、少なくとも、すっごく落ち込むかも。その子もきっとしばらくは立ち直れなかったでしょうね。
さて、どうしてこんな悲劇(?)が起こったのか?日本人ならわかりますよね。そう、習慣、文化の違いですね。日本人は一般的に人前で、特に多くの人、あるいは、知らない人達の前で話したり、質問するのを嫌がる。なぜか?ただシャイ(恥ずかしがり)なのか、そんなことをしたらでしゃばりと思われるのでしないのか、人前で知識をひけらかすのは良くないと思っているのか、あるいは、ただ言うことに自信がなく、臆病なだけなのか(特に英語の場合はね)。ともかく、それがゆえに、他人がいなくなってから個人的に話すのが当然の行動みたいになってますよね。学校、職場、日本では至る所で見受けられる光景ですね。
ところが!です。アメリカでは、少なくともDr. Greenの目には、その行動が利己的、自己中心的な否定的行動として捉えられたわけです。世界で将来活躍する日本人には、この日本的文化の一面を捨ててもらいたいと心から願います。質問があればすぐにする。意見があればすぐに言う。間違っても構わない。その勇気が大事です!笑う人などいません。むしろ、その勇気を世界の人達(少なくともアメリカの人達)は尊敬します。何を考えているかわからない。話をする時はいつもひそひそ話。それでは世界では活躍できません。
私もある時点から、その勇気を持ちました。恥もいっぱいかきました。言い始めて、周りのみんなが静かになった時に頭が真っ白になってしまい、あ~、あ~と冷や汗をかきながら、必死で言葉を探した経験がたくさんあります。でも、その結果、英語も、日本語も、表現力が伸びました。皆さんが今回のエピソードから何かを学んでもらったら幸いです。少なくとも、Dr. Greenのクラスの日本人学生の二の舞にはなって欲しくないものです。
英語を話す、英語で意見を言うのには、始めの頃は大きな勇気がいります。でも、その勇気がないと、思うように英語で話すことが出来るようには決してなりません。これだけは覚えておいてくださいね。では、今日はこの辺で。Remember! It takes your courage to reach your goal in English study. Bye for now!
(End of Story)

僕がイリノイ大学大学院(at Urbana-Champaign)で勉強していた頃のお話。多くの教科の中で最も手強かったものの一つが、Dr. Green(女性の教授で、50代だったかな?)の統語論(Syntax)の授業。この人は女性ですが(別に差別的な気持ちはありませんので、念のため)、ともかく厳しい!あ、そうそう、この先生は常に医者のような白い上着を着ていたのが特徴的でした。それとメガネ。いかにも神経質そうな女史でしたが、その道ではよく知られた学者でした。
勉強は教室だけではだめと、我々学生に小さなノートを持たせ、疑問に思った英文構造があったら常にメモしておくよう指示。もちろん、その疑問を書くだけではだめで、それなりの分析もするようにとのご指示。ノートは定期的に回収され、彼女によってチェックされ、しかも、成績がつけられ返却される始末。いやはや、毎日ネタ探しに大変でした。この教授のクラスでは笑いは一切なし!12、3人の学生は、いつも戦々恐々として授業に臨んでいました。あ、ちょっとでも宿題をしていないのがわかると、厳しいお叱りの言葉が待っていましたね~そういえば(でも、結果的にはいいクラスだったですよ(^^))。
そんな緊張した授業が続いていたある日のこと。いつも通り我々は、いつ質問が飛んでくるかわからない中、必死で難しい英文構造の話を聞き、理解しようと努力し、ノートを忙しく取って、やっとのことで50分の授業時間が終ろうした時、Dr. Greenは、いつも通りあのちょっと厳しく、冷たい口調でこう言いました。
Green: Do you have any questions about this, class? Anyone? Are you sure that you have no questions? Okay, then, see you next week.
「ふ~、終わった。さ、帰ろ!」と、僕は下を向き本をカバンにしまって帰る準備を始めました。他の学生は次から次にそそくさと部屋を出て行き、部屋に数人しかいなくなった、その時です。誰かがDr. Greenの方に歩いて行くのが見えました。誰だろ?下から見た感じでは東洋人?…と思ってよく見ると、それは日本人の女の子でした。え、何?と思って耳をそば立てると、こんな会話が嫌でも(声が大きいので…)耳に入ってきました。
Japanese Student: Excuse me, Dr. Green.
(すみません、グリーン先生)
Green: Yes.
(はい。)
Japanese Student: Can I ask you some questions?
(ちょっと質問していいですか?)
Green: Depending on the questions.
(質問によりますね。)
Japanese Student: About the last problem?
(最後の問題についてなんですけど)
Green: Then, NO.
(じゃあ、ダメです。)
Japanese Student: But, I have some questions…
(でも、質問があるんですが…)
Green: What did I say at the end of the class?
(授業の最後に私は何て言ったの?)
You heard what I said, didn't you?
(私が言ったこと、あなた、聞いてたでしょ。)
Japanese Student: Yes, but…
(はい、でも…)
Green: I asked you, the class, if you guys had any questions.
(私はあなた達みんなに、質問がないか聞きましたよね。)
There were no questions.
(で、質問はなかった。)
Then, no answers. Period.
(だから、答える必要はない。それだけです。)
Japanese Student: I just did not want to bother the other students.
(私はただ、他の学生のじゃまをしたくなかっただけです。)
Green: That's what you think.
(それは、あなたがそう考えているだけでしょ。)
I will not answer any of your questions.
(私はあなたの質問に、これっぽっちも答えるつもりはないですからね。)
You know why?
(なぜかわかる?)
That is not fair to the other students.
(そんなことをしたら他の学生に対してフェアじゃないからよ。)
The answers to your questions might have benefited the other students.
(あなたの質問に対する答えは、他の学生にとっても役に立つものだったのかもしれないのよ。)
Your attitude is so selfish and egoistic.
(あなたの態度はとても身勝手で、自己中心的だわ。)
Unbelievable.
(信じられないわ。)
そう大声で早口にまくし立てたかと思うと、Dr. Greenはその日本人女子学生を一瞥(べつ)して、ぷいっと早足で教室を出ていきました。え、そう言われた学生はどんな様子だったか、ですって?泣いてました(…)。まあ、僕もあそこまで、あの口調で言われたら、やっぱり泣いちゃうかもしれませんね(それはないです…)。まあ、少なくとも、すっごく落ち込むかも。その子もきっとしばらくは立ち直れなかったでしょうね。
さて、どうしてこんな悲劇(?)が起こったのか?日本人ならわかりますよね。そう、習慣、文化の違いですね。日本人は一般的に人前で、特に多くの人、あるいは、知らない人達の前で話したり、質問するのを嫌がる。なぜか?ただシャイ(恥ずかしがり)なのか、そんなことをしたらでしゃばりと思われるのでしないのか、人前で知識をひけらかすのは良くないと思っているのか、あるいは、ただ言うことに自信がなく、臆病なだけなのか(特に英語の場合はね)。ともかく、それがゆえに、他人がいなくなってから個人的に話すのが当然の行動みたいになってますよね。学校、職場、日本では至る所で見受けられる光景ですね。
ところが!です。アメリカでは、少なくともDr. Greenの目には、その行動が利己的、自己中心的な否定的行動として捉えられたわけです。世界で将来活躍する日本人には、この日本的文化の一面を捨ててもらいたいと心から願います。質問があればすぐにする。意見があればすぐに言う。間違っても構わない。その勇気が大事です!笑う人などいません。むしろ、その勇気を世界の人達(少なくともアメリカの人達)は尊敬します。何を考えているかわからない。話をする時はいつもひそひそ話。それでは世界では活躍できません。
私もある時点から、その勇気を持ちました。恥もいっぱいかきました。言い始めて、周りのみんなが静かになった時に頭が真っ白になってしまい、あ~、あ~と冷や汗をかきながら、必死で言葉を探した経験がたくさんあります。でも、その結果、英語も、日本語も、表現力が伸びました。皆さんが今回のエピソードから何かを学んでもらったら幸いです。少なくとも、Dr. Greenのクラスの日本人学生の二の舞にはなって欲しくないものです。
英語を話す、英語で意見を言うのには、始めの頃は大きな勇気がいります。でも、その勇気がないと、思うように英語で話すことが出来るようには決してなりません。これだけは覚えておいてくださいね。では、今日はこの辺で。Remember! It takes your courage to reach your goal in English study. Bye for now!
(End of Story)
